社会人になって仕事をするようになったら、きちんと考えたいのが保険のことです。いざというときに役に立つ保険は、すぐに用意できるものではありません。保険と一口にいっても個人年金保険や終身保険など、いろいろな保険がありそれぞれに特徴があります。社会人として正しく知っておきたい保険のことを勉強しておきましょう。
これまで親がかけてくれた保険には医療保険や学資保険などがあると思います。学生を卒業して就職をすると、今度は自分で保険を選んで毎月の掛け金を払っていかなくてはなりません。保険はいざというときに備えるためのリスクヘッジ。就職するということは考えられるリスクに自分で備えることも意味するのです。
保険にはいろいろな種類があり、新社会人には必要のない保険もあります。きちんと保険について調べて、必要な保険に入ることが大事です。
まず、保険といって最初に思い浮かぶのが生命保険です。生命保険には死亡保険、医療保険、がん保険、学資保険などがあります。そして、死亡保険には定期保険、終身保険、養老保険などがあります。
社会人一年生に必要なのは、独身者向けの保険です。上記の中では、死亡保険にすぐに入るのは新社会人にはまだ必要ないといえるでしょう。死亡保険は扶養家族などがいる場合に、保険者が死亡することで遺族の生活が困難になることをふせぐための保険だからです。ただし死亡保険にも2種類あり、定期死亡保険という遺族の生活のための高額の保障ではなく、終身死亡保険といって葬儀代を保障する低額の保障ならば加入することも考えられます。同様に、子どもがいる場合の学資保険もまだ必要ありません。
生命保険ではなく、個人年金保険というものがあります。年金という名の通り、毎月保険料を積み立てていくと、将来年金として一定額を受け取れるという保険です。受け取り方は、毎月受け取る方式と「一時金」といって一括で受け取る方式があります。年金保険には終身年金・確定年金・有期年金があります。住友生命「たのしみワンダフル」や明治安田生命「年金かけはし」などがあります。
終身年金は、亡くなるまでの間ずっと受け取れる年金です。亡くなる年齢が早いと元本割れ(支払った金額よりも少ない額しか受け取れない)ケースも出てきます。保険料も高めに設定されています。
確定年金は、一定期間は本人の死亡にかかわらず年金が受け取れます。5年、10年、15年の期間を予め設定し、この期間は一定額が支給され、万一本人が死亡したら遺族に支払われるので、終身年金のような元本割れの心配がありません。
有期年金も確定年金と同じように一定期間年金が受け取れますが、本人が死亡するまでです。終身年金と同じように元本割れの危険性がありますが、保険料は安めです。
一般に支給開始から23〜25年以上長生きすると元本以上に受け取れて、保険のメリットを最大限に受けられるようです。いったんかけ始めたら、保険料払込完了までは途中解約しないのが基本です。返戻金(途中解約時に支払われる金額)は一般に払い込み済み保険料よりも少ないことが多いからです。どの保険でも長い間かけることになるので、しっかり内容を吟味してスタートすることが大切です。
新社会人が生命保険で死亡保険に入る必要性はありませんが、医療保険には加入メリットがあります。医療保険は病気やケガで入院したり手術したりしたときに役に立つ保険です。入院や手術のリスクは一生ありますから、若いときから加入しておくと安心です。特に20代のうちに加入しておくことをおすすめします。
社会人になってすぐに加入したほうがよいのは、医療保険は若い年齢で入ると保険料が非常に安くすむからです。入院や手術のリスクはトータルでみれば年齢が高いほうがありますので、リスクの低いうちは掛け金が安いのです。20代であれば月々の掛け金が数千円のプランも多く、毎月の負担が少なくて済みます。また、保険加入に際しては健康に関する告知義務も生じますが、若い方が慢性疾患や既往症などがないので加入審査もスムーズです。
ただし、注意点があります。掛け金が安いメリットを一生涯受けるためには終身保険に加入しなければなりません。月々の掛け金が安い、いわゆる掛け捨ての保険の中には、保障の上限を85歳までに限定しているものがあります。終身保険なら、65歳までに保険料を払い込んでしまえば一生保障が続いたり、65歳以上になると格「安の保険料になるプランもあります。代表的な終身保険としては、アクサダイレクト生命「アクサダイレクトの終身保険」 やオリックス生命ライズ」、東京海上日動あんしん生命「長割り終身」などがあります。
新入社員の場合は、団体保険(団体生命保険)という保険もあります。これは企業の社員が一定人数まとまって保険に加入するので、その分保険料に割引がきいて掛け金が安くなる保険です。割引率が高い保険では半額近くも保険料が安くなる商品もあり、新社会人でも毎月の金銭負担が少なく加入できるのがメリットです。各生命保険会社に「団体保険」「グループ保険」という商品があり、掛け金の負担者と保障内容によって細かく種類が分かれています。
一方で、団体保険にはデメリットもあります。まず、団体としての加入が前提なので、会社を退職した後は保険の保障が継続されないという点です。定年退職してから新たに保険に入るのは、既往症など健康状態に問題があることが多いですし、掛け金も年齢に応じて高額になるので現実には難しいでしょう。退職後に何の保障もない無保険状態はとても心配です。また、まとまった人数が加入することで割引がきいているのですから、いったん加入したら自己都合で脱退しにくいという点もあるのが現状です。
団体保険に入ること自体は掛け金も安いので最低限の保障としてはおすすめできます。ただし、退職後のことを考えて他の保険にも入っておいたほうがいいかもしれません。月々の掛け金などを調べて、終身保険などを団体保険にプラスすることを検討するとよいでしょう。
新社会人になったら、自分のリスクは自分で管理しましょう。ただし、まだ若いので必要最小限の保険に加入すれば十分です。保険に加入すれば毎月の支払いがスタートしますから、お給料の少ない20代でも無理なく支払える掛け金であることも重要です。