一般的な企業が勤め先の場合、従業員の多くは1日の大半をそのオフィスで過ごすことになります。企業の経営を円滑に行うためには、従業員ひとりひとりの生産性が良好でなくてはなりません。生産性向上は社員の能力によるものもありますが、社員を取り囲むオフィス環境も大きく影響してきます。社員の働き方はオフィス環境によってどのように変わるのでしょうか?オフィス環境と働き方について紹介します。
“オフィスの移転やリノベーションの理由には、従業員の増加によるスペースの拡大、オフィス賃貸料の見直しによる移転、本社やグループ企業との合併など、様々あげられます。しかし、ほとんどの企業が、移転やリノベーションによるオフィス環境の変更に「社員のモチベーション向上」を望んでいます。オフィス環境を整えることは経営戦略のひとつとしてとらえられ、社員が働き易くするためにサポートすることで、職務へのモチベーションがアップし、生産性へとつながります。しかし、現状では、社員は働き方に対し多くの問題を抱えています。
(1) 長時間労働:時間ばかり費やし、それに見合った成果が得られていない
(2) 価値のない時間:人数だけ集めた、あるいは惰性的で無駄な会議
(3) オフィスの不透明さ:何の仕事をしているのかわからない場合がある
これらの「効率の悪い働い方」を改善する1つとして、オフィス環境と働き方を整える、つまりオフィス改革を行う企業が増えています。具体的にはどのような方法で改革を進めるのでしょうか。ただ単にオフィス家具やOA機器を新しいものに変えるだけでは働き方の向上にはつながりません。働き方に良い影響を及ぼすオフィス環境の作り方について、具体的な取り組みや事例を交えて紹介します。”
“オフィス環境によって社員の働き方に変化をもたらしたいと考える企業は多く、移転やリニューアルの際のレイアウト設定は企業経営にも影響する重大なプロジェクトとなります。企業の形態は違えど、社員に提供したいのは「働き易いオフィス」です。しかし、その働き易さは業種やワークスタイルによってニーズは様々。つまり、オフィス環境の変革には、どの様なオフィスにしたいか、その企業の求めるオフィス環境のテーマを設定することです。
■エンジニアを中心としたIT系、機械系企業
専門分野に特化した設備投資や、セキュリティ対策、安全対策を重視したオフィスレイアウトがテーマとなります。
■広告代理店、デザイン、などクリエイティブ系企業
比較的、自由なオフィスレイアウトのオフィスが多く、発想を促す工夫、遊び心あるオフィスデザインもクリエイティブ系企業の特徴です。お洒落で機能的なオフィス環境がテーマとなります。
■銀行、証券、保険など金融系企業
堅いイメージがつきまとう金融系企業ですが、外資系の銀行オフィスは機能的でスタイリッシュなオフィスレイアウトである場合も多く、社員の満足度とモチベーションUPに繫がります。信頼と堅実を感じられる、整然としたオフィス環境がテーマとなります。”
“ICTとはInformation and Communication Technologyの略。情報通信技術とよばれ、IT化が進んだ現在の企業経営にかかすことのできないオフィス環境のひとつです。社員の働き方に効果を及ぼすICTツールにはどのようなものがあるでしょうか。ICTツールの選定には目的にあった機材を導入することが、ICTツールを上手に活用する鍵となります。
■コラボレーションの促進
自分の所属する部署だけではなく、様々な部署との連携がビジネスには不可欠です。ミーティングが頻繁に行われる会議室でこそ、ICTツールを活用したいものです。
・プロジェクター ・電子ボード ・Wi-Fi設備 など
■コストと時間の削減
ICTツールの導入による一番の効果は、ペーパーレス化によるコストと時間の削減ではないでしょうか。各社員がノートパソコンを所有することが当たり前になった現在、ミーティングで必要な資料は、各自のPC画面で閲覧すれば印刷の必要がなく、コピー用紙の購入費だけでなく、印刷費と印刷に費やす人件費と時間も削減できます。
・ノートパソコン ・タブレット端末など
■ナレッジの共有
企業の規模が大きくなるほど、自分の勤める会社が実際に何をしているのか把握するのが難しくなります。しかし、自分の担当する業務以外の会社の取り組みを知ることは、社外への発信が積極的に出来るようになり、企業経営の面からみても効果があります。ナレッジの共有はイントラネットでの情報発信の他、リフレッシュエリアにタッチパネルモニターを設置するなど、情報を閲覧したくなるICTツールの導入も効果的です。
・タッチパネル型ディスプレイなど”
“オフィス環境を大きく変え、社員の働き方の向上に大きく影響を及ぼしたことで、ネットニュースを賑やかせたのは、国内有数のシステムインテグレーター、日本ビジネスシステムズ(JBS)です。同社は2014年8月に、都内に点在していた複数のグループ会社を虎ノ門ヒルズに移転させ、社員約1500人が一つのオフィスに集結するオフィス環境を作り上げました。同社が取り組んだオフィス環境改革とはどのようなものでしょうか。
(1) 社内コミュニケーションの円滑化
1500人を超える大所帯にもかかわらず、JBSの新オフィスは間仕切りとなる壁がほとんどなく、社内を一望できるレイアウトになっています。オープンスペースを随所にもうけ、自由な空間はフレキシブルな利用が可能です。また、キャビネットを「立ち話にちょうどいい高さ」に統一し、立ったままミーティングができる動線を確保したレイアウトは、社員の情報共有と業務効率の促進を後押ししています。
(2) ICTの積極的な活用
JBSが取り入れたのはユニファイドコミュニケーション(UC)。UCとは電話や電子メールなどの様々な通信・伝達手段を統合し、系統的な使用感で利用することのできるシステムや技術、サービスなどを指します。Web会議の活用は出張費のコスト削減に貢献し、交通費だけでも年間900万円を削れると発表しています。
(3) カフェテリア戦略
社員食堂ブームとは一線を画したJBSのカフェテリアはスタイリッシュなインテリアと外食レストランのような食事が楽しめる、社員にとっては満足度の高いオフィス環境のひとつ。このJBS自慢のカフェテリアの狙いはコミュニケーションの活性化はもちろんですが、同社ではクライアント企業に常駐という形で勤務するエンジニアたちも多く、彼らの本社に戻ったときの”居場所”としての役割を果たしています。JBSの牧田社長は、「エンジニアにとって、ここをホームだと思ってもらえる環境にしたかった。」語っています。
参考サイト:http://diamond.jp/articles/-/65981”
“環境が人に与える影響の大きさは計り知れず、人は環境によって生かされていると言っても過言ではありません。会社勤めの社会人にとって、毎日の大半を過ごすオフィス環境は、働き方だけではなく、人格や考え方にも影響をおよぼします。また、オフィス環境には外的に作用するもの(オフィスレイアウト、備品の配布など)と内的に作用するもの(職場の人間関係、適切な人事評価など)があります。良いオフィス環境に必要な要素とはどのようなものでしょうか。
■外的オフィス環境:オフィスレイアウト
・仕事に集中できる(適切な広さ、静かな環境、効率的な動線の確保など)
・リフレッシュできる(リフレッシュエリアの設置、カフェテリアや飲料自販機など福利厚生の充実)
■内的オフィス環境:コミュニケーション
・精神的に安心できる(適切なコミュニケーションがとれている、リフレッシュできる空間がある)
・効率よく作業が進められる(適切なビジネスツールの活用、社内ルールの簡略化)
・仕事にやりがいを感じる(適切で公正な人事評価、チャレンジできる社風)
オフィス環境によって、社員の働き方がどう変わるかは、社員の望む環境であるか否かが大きく左右します。社員の働きが企業の業績向上につながるかは、いかにオフィス環境を整えるかにかかっています。”
社員の働き方が向上するオフィス環境は、企業経営にとって最も考慮を要する重要なファクターです。日々、加速と変化がとりまくビジネス運営、マネジメントに関わる人にとっては常にアンテナを張ることが必要ではないでしょうか。