「社長や上司の演説のせいで会議が長くなる……」「論戦好きな社員がたくさんいるために、混乱するわりには結論が出せない」そんな悩みを抱えている人はいませんか?円滑な会議の実現は、どの会社でも悩みの種ですよね。一朝一夕に実現するのはむずかしいかもしれませんが、工夫次第で会議を円滑に進行させることは十分可能です。来月の会議の進行役を割り当てられたあなたに向けて、「会議の円滑化」を実現するためのポイントをご紹介します。
質問のうまい人とへたな人の違いは何でしょうか?それは「問答を想定できているかどうか」です。
質問のうまい人は、自分の悩みや疑問について十分に自問自答したうえで、それでも答えがでない場合にのみ誰かの助けを求めます。そのため、相談する前に、問題解決に必要な問いかけを複数用意し、それぞれの質問に予想される相手の答えもシミュレーションしたうえで相手に相談します。そうすることで、「想定外のアドバイスを受けて困惑した」という事態をできるだけ少なくでき、相談の時間が無駄に長くなることを防止できます。質問のうまい人が相談相手に求めるのは、まったく新しい知恵ではなく、「自分の意見でOK」ということの保証あるいは駄目押しの確認なのです。
それに対して、質問の下手な人は、その場の思いつきで悩みを相談してしまいます。当然、問答など準備できていないので、相手の答えが想定外だと、そのアドバイスにもさらなる疑問を投げかけたりして、会話を無断に混乱させてしまいます。質問をされたほうにとっては迷惑な話ですよね。
まったく同じことが、オフィスで日々行われる会議にも妥当します。会議とは、まったく無の状態から答えを模索する営みではありません。ある程度答えの目途がついていたり、採用可能性の高い選択肢が絞り込まれている段階で、第三者の意見をうかがい、最終判断の補助とする。これが本来あるべき会議の姿です。なぜなら、ビジネスにおける会議は、参加者の貴重な労働時間を強制的に奪う時間であり、最短・最速で結論に至ることこそが最優先されるべきだからです。
同じ会議でも、これが家族会議なら話は別です。「子供の進学先をどうするか?」という重大な問題を親子で考える場では、納得の行くまで時間をかけて話し合えばいいでしょうし、時には徹夜で語らうことも必要かもしれませんね。しかし、ビジネスにおける会議は、うんうんうなって思案をめぐらせたり、お互いに感情を高ぶらせて涙するようなしめっぽい場ではありません。最短・最速で目指す答えに到達するために他者の知恵を借りる……その一点に集中するきわめてドライな場です。会議を円滑に進行することは、単なるマナーどころか、「ビジネスマンとしての道義的な義務」だとさえいえるでしょう。
ここからは、円滑な会議の進行に必要なポイントをあげていきます。
まず、会議の開始前のポイントです。会議には議題が不可欠です。したがって、議題の巧拙はそのまま会議の巧拙に直結します。会議の開催が突然決まり、「1時間後に会議室へ集合!」というケースならばともかく、毎月行われる定例会議であれば、会議で検討すべきテーマ、いわゆるアジェンダを周到に準備しておくことが大切です。
アジェンダが明確であれば、参加者の意識も議題の解決に向けて集中できます。反対に、「今月気づいた我が社の問題点総チェック!!」のような、およそアジェンダとは呼べない議題を設定してしまうと、参加者の意識もぼやけてしまい、無駄話が増え、めぼしい収穫もないままにだらだらと時間だけが過ぎていきます。
また円滑な会議のためには、会議の冒頭における進行役の態度が特に重要です。なぜなら、冒頭で進行役がだらけた態度をみせれば、「ああ、その程度の会議なんだな」と参加者に軽んじられてしまうからです。眉間にしわをよせたり、怒鳴り声をあげる必要はありません。真剣な面持ちで、当日の議題や進行内容、所要時間などを淡々と説明することで、進行役の本気度をさりげなくアピールしましょう。
会議がスタートしたら、何よりも進行役の采配が重要となります。円滑な会議にできるか否かは、進行役がアジェンダを十分に理解し、想定される問答を把握しているかどうかで決まるからです。
通常、会議は前置き部分があります。当日の議題にそって、議論するポイントをアジェンダにそって説明する時間です。しかし、アジェンダの説明は配布資料を読み上げる例がほとんどですので、あまり時間は要しません。会議のなかで占める時間の大半は、参加者同士の意見交換なのです。進行役の采配が重要になるのはそのためです。
進行役が議事を円滑に進めるには、ファシリテーターになりきるのが効果的です。ファシリテーターとは「促進者」という意味。この言葉は多義的ですが、ビジネスの会議におけるファシリテーターとは、「議事進行に適切に介入し、会議が時間通りに進行し、かつめざすべき課題の解決に到達できるよう、参加者の議論を調整する役割」を指します。
会議の進行役の人選には会社の個性が強くあらわれます。ワンマン経営者の力が強い会社では、会議の進行も経営者本人やその腹心に管理されるケースが多いでしょう。反対に、平社員でも社長に対して自由に意見を言えるようなオープンな職場では、あえて特定の進行役を作ることなく、新人からベテランまでが自由闊達な議論を繰り広げることもあるでしょう。そのどちらも、本来あるべき会議の姿とはかけ離れています。ファシリテーターは、ビジネスにおける会議をあるべき姿に戻すためにきわめて有用な存在なのです。
ファシリテーターのもともとの役割ははっきりしています。参加者が気兼ねなく活発に意見交換できる環境をつくることです。「促進者」というのがファシリテーターの語義ですが、ここでいう「促進」とは会議が時間通りに終わるように議事をさっさと進めるという意味ではありません。参加者の発言を促したり、有効な問題提起をしながら、議論を充実させるべく働きかける……これがファシリテーターに求められる「促進」の意味なのです。
ただ、議論を好む性格の人が多く集まると、往々にして会議は長引きます。議論好きの人のなかには、目的地に到達することよりも誰かと議論をすることそのものに快感をおぼえる、という人が少なからず存在するからです。そこで、ビジネスの会議では、ファシリテーターの役割も修正が必要となります。単に議論を充実させるだけでなく、いかに早く結論に到達できるかにも十分な配慮が求められます。
そのための工夫としては、たとえば、
・参加者の発言をホワイトボードやPC、プロジェクターなどを活用し、議論の推移をわかりやすくビジュアル化する。
・参加者の議論が白熱して収拾がつかない場合は、ファシリテーターが中立の視点で意見を提出し、その意見を新たなたたき台として議論を再開させる。
といった点があげられます。
「円滑な会議は会社に利益をもたらすか?」という問いに対しては必ずしもイエスとは言えません。円滑な会議をいくら重ねようが、会社の業績をアップさせることはないからです。
反対に、「円滑でない会議は会社に損害をもたらすか?」という問いに対しては、確実にイエスと言えます。無駄に長い時間をかけても良い答えが出せなければ、「時間」という貴重な財産をどぶに捨てるようなものだからです。
会議の進行役をつとめることになった皆さんは、ぜひ今回ご紹介したような「アジェンダ」や「ファシリテーター」などを存分に活用して、会議の円滑化に貢献してくださいね!