会社の組織変更や人事異動などがあった時に、その都度レイアウトを変更する為にかかる手間と時間、コストは大変大きなものになります。この問題を解決してくれるのが、近年取り入れられ始めている「ユニバーサルプラン」と呼ばれるレイアウト方法です。オフィス移転の予定がある場合、このレイアウト方法を検討する価値があります。ユニバーサルプランとはどのようなレイアウトで、どんなことに気を付けるべきかをご紹介します。
それでは、ユニバーサルプランとはどのようなものかをご説明します。
従来のオフィスレイアウトでは、課やチームごとの島にデスクをまとめるレイアウトが一般的でした。しかし、課やチームは全てが同じ人数ということはないため、島の大きさはその課やチームの人数に左右されてきました。デスクや椅子などの家具や什器を人員が増えるたびに買い足すことも多いため、デスクの種類や大きさも島や役職によって異なっており、そのためにデッドスペースが生まれたり、人事異動や組織変更の度にオフィスのレイアウトを変更せざるを得なくなっている会社も多いのではないでしょうか。
その上、デスクを動かしてレイアウトを変更することになれば、デスクの移動だけでも半日から一日を費やし、電源や電話回線工事が必要になることもあります。規模によっては業者へ依頼する必要も発生します。業者に依頼する場合には相応のコストがかかりますし、休日に工事を施工することになるため、立ち会う社員は休日出勤となります。また、デスクの移動を社員が行う場合には、半日から一日の業務を休まなければならず、社員のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があり、安全面での問題も出てきます。
そこで取り入れたいのがユニバーサルプランです。ユニバーサルプランは、あらかじめオフィスレイアウトを均一にして組織変更や異動の都度、レイアウト変更をする手間を省くというものです。常に社内のレイアウトが一定になっているので、組織変更や異動があってもデスクを移動させる必要がなくなり、社内での席の移動を簡易にできるようになります。オフィス移転でレイアウトを大きく変えるのなら、ユニバーサルプランを検討する良いタイミングであるといえます。
ユニバーサルプランを導入することで得られるメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
・移転先のオフィスの広さに合わせてあらかじめ最大収容人数を設定しておくことで、将来的な人員増加にも対応できる。
・デスクや椅子といった家具類の規格を統一するので、オフィス内のデッドスペースを極力減らし、最大限のスペースを活かすことが可能。
・オフィスレイアウトを変更する必要がなくなるため、電話や電源などの設備工事費の削減ができる。
・組織変更や異動の際にも、「物」と「人」が同時に動くのではなく、「人」だけが動くことになるので作業がすばやく完了する。
・先にオフィスレイアウトを確定させるので、オフィスの什器類を最小限にでき、備品管理を簡素化できる。
・オフィスデザインが明確になっているため、オフィスの環境がすっきりとまとまっており、業務しやすい環境になる。
上記に挙げた事がメリットとして考えられます。
近年では、ユニバーサルプランと似たレイアウト方法で「フリーアドレス式レイアウト」を採用する会社もありますが、「フリーアドレス式レイアウト」は社員一人一人のデスクを固定しないことで、どこでも業務ができるというレイアウトです。しかし、フリーアドレス式レイアウトは個人の席という概念がないため、馴染みにくいというデメリットがあります。ユニバーサルプランは「島型レイアウト」の良い部分と「フリーアドレス式レイアウト」の良い部分を併せ持っているといえます。
組織変更や異動を簡素化や、デッドスペースをなくして無駄なくスペースを活用できるユニバーサルプランをご紹介してきました。しかしながら、このレイアウト方法にはデメリットもあります。
・役職者の席を島の先頭に作ることができないため、どこに席をおくかが問題になる。
・課やチーム内に目が行き届かない可能性があるため、役職者のいない島に席が配置されたメンバーに対しては、他のメンバーからの気配りなどの協力が必要になることもある。
・全てのデスクの規格を統一することで、課やチームごとの区切りがつきづらくなるため、誰がどの課やチームに所属しているのか判別しづらくなる。
・課やチームごとの島型のデスク編成ではなくなるので、メンバー内の仲間意識や連帯感などが生まれにくくなる可能性がある。
・視覚障害のある社員がいる場合、全てのデスクを統一化しているために、自分がどこにいるのかを区別しづらくなる可能性がある。
これらのデメリットを解消するためには、オフィスレイアウトの際に簡単なミーティングスペースを出来るだけデスクから近い場所に確保し、即時打ち合わせができるよう配慮する必要があります。また、オンラインでのやり取りを密にすることで解消できる場合もあります。そして、視覚障害のある社員がいる場合には、電話の音を島ごとに変えるなどすることで自分の現在地を知るきっかけになります。
オフィス移転に合わせてユニバーサルプランを導入する際には、ミーティングスペースやリラックスルームなどの配置や、電話の配置の仕方なども工夫すると良いでしょう。
新しいオフィスレイアウトとして取り入れ始められているユニバーサルプランについてご説明しました。大変効果的な面もある一方で注意すべき点もありますので、そのメリットとデメリット双方を捉え、社風や経営理念、経営方針にあっているかなども考慮しながら検討して取り入れる必要があります。如何に社員が働きやすく、それぞれのパフォーマンスを上げられる環境を作れるかも大切です。