女性の社会進出が更に加速する昨今では、如何に女性社員が快適に感じるオフィス環境を整えるかが鍵を握っています。オフィス環境に対して女性社員がどのようなことを重要視し、どのようなことに不満を持っているかを調べてみました。その結果、経営者の取り組みが必ずしも女性社員に受け入れられているとは言い難い状況にあることがわかりました。ここでは女性目線のオフィス環境の実態と女性社員の希望がどのようなものかを見ていきましょう。
実際に働いている女性社員の満足度調査では、オフィス環境に不満を持つ女性が四割ほどを占めています。
「はたらく未来研究所」が首都圏の従業員数が50~500人の中小企業の経営者300人と女性社員300人を対象にして、オフィス環境・オフィス空間・オフィス活性を柱とするリサーチをインターネットで実施しました。その調査では、「働きやすいオフィス」の在り方において、経営者と女性社員の意識にギャップがある一方で、オフィスに関して社内での情報交換や意見を活発にすることの重要性が浮き彫りになるといった結果となりました。
「女性にとって働きやすいオフィス環境作りに努力しているか」といった質問に対して、経営者は「努力している」と回答しているのに対し、女性社員は「経営者は努力してない」と回答しています。これは、経営者が女性社員の働きやすさを把握しておらず、女性社員の希望が経営者に届いていないことを表しています。
経営者は生産性や業績向上を重視したオフィス環境づくりに力を入れているのに対して、女性社員は個人の働きやすさや居心地の良さを求めているところにギャップがあります。このギャップを埋めるためには、社内での情報交換やヒアリングなどのコミュニケーションが必要です。女性社員のモチベーションを向上させ、ポテンシャルを上げることができれば、業績向上にも貢献することになります。こういった経営者と社員の意識のギャップを埋めることは、オフィス環境以外のトピックスにも当てはめることができ、社内の風通しの良さに通じるところでもあります。では、女性社員は具体的にどのようなことをオフィス環境に求めているのかを見ていきましょう。
では、具体的に女性社員はオフィス環境に対してどんなことを求めているのでしょうか。
まず、女性社員が最重要視しているのは、アメニティルームを中心としたリフレッシュルーム、生活支援スペースの充実です。化粧室(トイレ)、休憩室、社員食堂などがこれに当てはまります。休憩室は独立していて、綺麗で新しい化粧室が良いという回答があり、女性社員の多い企業の中には、トイレの個室での着替えがしやすいような工夫を施す、洗面台にバッグを置くスペースを用意する、洗面台とは別にパウダールームを設置するという取り組みをしている企業もあります。
経営者側の回答では、カフェのようなミーティングにも利用できる社員食堂や、休憩室を見通し良くすることでリフレッシュできるのがよいなどの回答をしています。アメニティルームのリノベーションが無理だとしても、化粧室を清潔にしておくことが女性にとっては重要です。
また、女性社員は個人のワークスペースの広さを確保しつつ、パーテーションなどで区切るなど、レイアウトを見直すことで業務に集中しやすくなります。経営者は生産性を上げるために、社員同士のコミュニケーションの取りやすさを優先して、一般のワークスペース全体の広さを重視するあまりに、個人のスペースの充実までは行き届いていないという結果になりました。女性社員には「個人のスペースを大切にする」という感覚があります。デスク自体が独立していなくても、パーテーションで区切られているだけで落ち着いて業務に集中できると回答する女性社員もいます。このように、女性には「個人」を大切にする傾向があります。
女性社員がオフィス環境に求めるものとして重要視しているのは、空間の快適さです。見た目がおしゃれで清潔感のあるオフィスは人気が高くなります。建物が新しい方が人気は高いですが、移転が難しい場合には多少古い建物であってもリノベーションなどで部分的にオフィスをおしゃれに変えることは可能です。内装工事が伴うリノベーションが難しい場合でも、掃除を外部業者に依頼するなどして清潔に保たれていれば、女性社員からの好感度は上がります。
また、オフィス内の空気の質も重要です。空調の温度設定では、冷えを嫌う女性は大変多く、寒すぎるのはマイナスポイントとなります。しかし男性社員には暑すぎるといった問題を解決することもオフィス環境には求められています。ただ、人によって体感温度に個人差がありますので、空調の近くに女性社員が多い、席替えが難しいといった場合には、空調の風向や吹き出し口の角度を変えることで解消することもあります。
それ以外にも、女性は匂いにも大変敏感であり、一般的には男性よりも女性の方が喫煙者が少ないこともあって、タバコを吸わない女性にとってはタバコの匂いは非常に不快なものです。オフィスを禁煙にするか、喫煙室を設けて分煙にするなどの配慮が必要になります。企業によっては、オフィスの空間に香りを取り入れる会社もあります。経営者も社員の体調管理の観点から「空気の質がよいこと」を重要視しています。
そして、「個人」を大切にする女性にとってはオフィスの立地も重要なポイントになります。駅から近く通勤がしやすいことや、オフィスの近くに飲食店や商業施設が多いことなどは、女性社員だけでなく多くの社員からも支持されるポイントです。ただし、オフィスの立地はすぐに変えることができない場合もありますので、空調設備や分煙など、できるところから変えてみてはいかがでしょうか。
新しくおしゃれなオフィスは誰からも好印象をもたれるものですが、女性社員にとって一番重要なのは「個人」という意識です。オフィス環境のために移転するのは難しいですが、リノベーションやレイアウトの見直しなどでサポートできることなどをご紹介しました。参考にしてみてください。