毎日仕事を集中して行っているオフィスの従業員にとってはわずかな時間でも休憩を取ることは大切です。近年、企業側としても従業員により充実したリフレッシュタイムを送ってもらおうと、リフレッシュスペースに工夫をこらしている事例が多く見受けられ、満足度も向上しています。今回はそうした事例を紹介するとともに、従業員の仕事へのモチベーションアップにつながっている部分を検証していきます。
そもそもリフレッシュスペースはなぜ必要なのかを改めて考えていきましょう。
人間、24時間ずっと起き続けて活動するということは基本的に不可能です。適度な睡眠時間が必要となるわけですが、それと同様に起きている間でも四六時中オフィスで働いているわけにはいきません。疲労がたまり、徐々に生産性が低下していくからです。100%回復するわけではありませんが、適度なリフレッシュタイムを取ることによって心身ともにリセットされ、また次の仕事へと向かう気力が湧いてくるというわけです。
リフレッシュスペースの存在は、他部署との共有スペースの場合、普段仕事では話さないような従業員ともコミュニケーションを取れる可能性を与えてくれます。自分の部署だけでは分からなかった仕事上の問題点が、他部署の従業員との会話を通じて見えてくるかもしれないのです。
そしてもう一つ考えられる意義は、リフレッシュできるが故に、仕事をしている時には思いもつかなかったアイデアがふいに自分の中に「おりてくる」かもしれない、ということです。仕事で硬くなった頭がリフレッシュで柔らかくなることによって柔軟な思考力が回復し、その結果問題の解決策や面白いやり方が浮かんでくるかもしれないのです。
以上のように、リフレッシュスペースの存在は従業員に様々な恩恵をもたらします。そこが工夫を凝らした場所であればあるほどその恩恵もより大きなものとなるかもしれません。
まず、従業員同士がコミュニケーションの機会を持てるようなリフレッシュスペースを考えていきます。
フェイストゥフェイスを可能にする代表的なものとして、従業員向けのカフェスペースがあります。スペース内があたかも街中のオシャレなカフェを想起させるかのようなレイアウトになっており、オフィスの他の区域と一線を画していて、従業員の気分転換に一役買っています。コーヒーや紅茶などを飲みながらリラックスした雰囲気で、プライベートはもちろん、仕事上の話をするのにも役立っています。さらに、一部企業ではビールなどのアルコールを提供している所もあり、好評となっています。
一方で、このような本格的なカフェスペースをとる余裕がない企業でも、手軽にカフェ気分を味わえる方法はあります。いわゆる「オフィスコーヒー」の導入であり、身近な例では自動販売機の設置という手段が考えられます。しかし近年では飲料メーカーが本格的なコーヒーを飲めるようなサーバーを企業に提供しており、休憩中でありながらあたかも専門店にいるかのようなコーヒーを嗜むこともできて、リラックスしながらコミュニケーションを活性化させるのに効果的な役割を果たしています。
社会人として何年も働いていると、ふと幼少時代に戻って思う存分遊んでみたい、という衝動に駆られることもあるでしょう。企業の中には、そうした子ども心を従業員に思い出させるようなリフレッシュスペースをオフィス内につくり出しているところもあります。
広いスペースに多人数でプレイできるようなビリヤード台や卓球台、ゲームセンターにあるような筐体型のゲーム、そしてレゴブロックなどの昔一度は夢中になって遊んだものばかりが並べられている例もあります。外資系の企業やIT企業など、独創性に富んだ企業は実際にこうした遊具を設置しており、遊びを体験することを通じてリラックスができ、新たな発想力の創出を促しています。
チームで一つの仕事を成し遂げようとする場合、この「遊び」は仕事にも通じる大事な役割を果たします。卓球のダブルスなどのお互いの協力が必要なゲームは、プレイの中で意思疎通を図ることができ、それにより仕事上で必要なコンビネーション力を養うことができます。
一人で遊ぶような遊具でも、楽しい遊び方を発見することで発想力や独創力を養うことができ、それをそのまま仕事へとつなげることも可能となるでしょう。まさに休憩中の「遊び」から新たな生産力を生み出していると言えます。
現代の日本企業において、オフィス内にリフレッシュスペースを導入している企業とその特徴を紹介していきます。
ゲームやIT人材事業を手掛けるギークス株式会社は自社内に「21cafe」と呼ばれるカフェスペースを設置しています。シックなレンガ造りと、1つ1つデザインの異なるオシャレなイスといったレイアウトの中で、オープンスペースとして従業員が自由に利用することができます。また、夕方以降はエンジニアやクリエイター限定で無料開放されており、リラックスした雰囲気の中勉強会などが開催されています。
通信販売や飲食業を展開している株式会社エモテントは、各フロア毎に全く違ったコンセプトのレイアウトとなっており、来客者の目を楽しませています。リフレッシュスペースは会社のある福岡市を一望できるような全面ガラス張りの作りで開放感を味わえ、さらに靴もぬげるので休憩に最適な空間ができあがっています。
会計ソフトのクラウドサービスを事業の柱としている株式会社freeeは、広い空間の中央に白いひな壇が置かれています。自由に座って気ままに従業員同士でコミュニケーションが取れる他、机やイス、卓球台なども設置されており、さらに従業員向けに飲食も無料で提供されています。遊び、会議、休憩が一度にできるスペースになっており、従業員にも好評です。
以上見てきたように、従業員の満足度を高めるためのリフレッシュスペースの設置は、日本の企業において積極的に導入が図られています。リフレッシュして次の仕事への活力を養うただけでなく、新しいアイデアを生み出したり、他の従業員とのコミュニケーションの場となるなど、単なる休憩の場、という定義を超えてすらいるのです。