現在の企業では、社員一人にパソコンが一台というのは当たり前となり、パソコンがないと仕事にならないという企業が殆どではないでしょうか。そのために社内独自のネットワークを整備しているところも多く、オフィスを移転するとそれに伴ったLAN工事が必要になります。その際に注意したいことをご紹介していきます。
オフィスを移転する際には、必ず何かしらの目的があって移転するはずです。その目的に沿って将来を見込んだLAN工事をする必要があります。ここをおろそかにしてしまうと、人員増加や組織変更などでレイアウト変更のたびにLAN工事が必要になってしまい、無駄な手間とコストがかかることになります。それを回避するためにも、事前の準備が大変重要になってきます。
まずは移転後のオフィスのLAN配線をどのようにするかを、社内でよく話し合っておくことが非常に大切です。LAN工事には様々な方法があり、床や天井、間仕切りの中にLAN配線を通すという方法が一般的ですが、基幹LANを床下に埋め込むという方法もあります。基幹LANとは通信の中心線といえる大規模LANのことで、レイアウト変更があった時に配線の整備をし直す手間が省けるため、長期的に見るとコスト削減にもなります。
また、配線の整理の仕方についてもしっかりと決めておきたいところです。見た目の問題だけではなく、断線などのトラブルを避けるためにも配線整理をしておきたいものです。配線整理の方法では、フリーアクセスフロアがあります。どのような方法かと言うと、フリーアクセスフロアの下にケーブルを収納するという方法です。ケーブルが乱雑になったり、損傷などから守ることができます。
移転を機にデスクを新しく購入するのであれば、ケーブルが収納できる配線ダクトや、ケーブルフック、配線ホールなどが備わっているデスクを用意すると、フリーアクセスフロアから取り出されたケーブルがオフィス内にスムーズに配線できるようになります。そうすることによって移転時のみならず移転後のレイアウト変更もスムーズに行えるようになります。
次に、LAN工事の流れについてご説明します。
最初にしておきたいのが現状の把握です。既存の契約状況をできる限り洗い出しておきましょう。例えば、光回線、インターネットサービスプロバイダー、電話、プリンタなどの社内インフラや、データセンターなどを契約している場合は住所変更なども後々必要になってきます。それがオフィスにどれだけあるのかを、移転前の準備としてしっかりと把握しておくことが非常に重要です。
また、移転後のオフィスに何を求めているのかについての要件を、経営者を含めて社内でよく検討しておきましょう。移転後に使用するインターネット回線をどうするのか、現状の回線プランと利用状況を確認して選定するのが望ましいです。光回線の移転手続き時に、工事の事前確認がありますが、移転後のビルの管理会社にも確認しておくとスムーズに行えます。
見落としがちになるのが、座席の配置を移転前に作成しておくことです。LAN、電話、電話機の設定、電気の配線など、座席の配置に依存するものがたくさんあります。LAN工事が先になってしまうと、移転後にLANケーブルや電話線などが足りないといったトラブルが発生しますので、座席の配置は移転前に必ず決めておきましょう。これに伴って配線図を作成します。将来的に事業拡大などによる人員の増加や組織変更などが予想される場合は特に、それも念頭に置いて設計することで、移転後に再度レイアウト変更をするような事態を回避できます。
移転後の見通しがついてきたら、スケジュールをしっかりと決めておきます。Todoリストを作成して、もれがないように確認しながら進めていきたいところです。工事業者によっては現地調査を行うところもありますので、調査内容に沿って見積もりを作成してもらいます。そこから発注して工事日程の調整をします。大体はオフィス移転前に内装工事を行いますが、そのタイミングを調整して工事を行えるのがベストです。内装工事業者とも打ち合わせておくとスムーズに工事を実施できます。
VLAN(Virtual LAN)とは、ブロードキャストドメインを分割する仮想技術のことを指し、ブロードキャストドメインとは、簡単に言うと、ネットワークが届く範囲のことをいいます。
VLANは分かりやすく説明すると、1つのスイッチを物理的に、複数のスイッチがあるように見せる技術です。それを利用してネットワークの届く範囲を分割します。
通常のネットワークでは、全てのデータは通信がつながっている全ての場所に配信されることになります。これを部署ごとに分割することによって、必要な部署に必要なデータのみを限定したネットワークを使って送信することができるため、無駄なデータ処理が減り、通信の負荷が軽減されます。
また、VLANはセキュリティ面の強化に非常に効果的です。企業がネットワークを一つしか使用していないということを悪意を持ったユーザーに知られると、その企業全体のネットワークを乗っ取られ、重要な機密事項などを入手されてしまうという危険がありますが、ネットワークが分割されていればその可能性は低くなります。
その他、どこかのパソコンがウィルスに感染した場合にも、ネットワークが分割されていれば感染拡大を防ぐことにもつながります。このVLANはアクセス権の制限なども可能ですので、企業の事業拡大に伴ってネットワークも拡大したいといった際にも対応できます。
まだオフィスにVLANを導入していない場合は、移転の機会に導入を検討してみるのもよいでしょう。
LAN工事や配線は、電話工事と一緒に専門の業者に依頼をするとスムーズですが、その前に社内で必要事項をしっかりと検討して、事前準備をしておくことが大変重要です。今やネットワークは業務を進めていく上で欠かせないツールです。移転後の新しいオフィスでスムーズに業務が始められるように進めていきましょう。