企業が新たな事業展開を考えるとき、オフィスの移転は選択肢の1つとなります。まさに「未来への投資」となるわけですが、その際気にしなければならないのはコストの問題です。さらなる利益を得るためにオフィスを移転させたとしても、その時にかかった費用のせいで事業を軌道に乗せるのに時間がかかってしまっては本末転倒です。移転後の快調なスタートダッシュを決めるためにも、今回はどういった部分の費用が削減できるのかをシミュレーションしていきます。
オフィスの移転を決定した時に、どれくらい費用がかかるのかは最初に考慮すべき事項です。あらかじめ見積もりを出すことで、ある程度かかるコストも計算することができます。
それでは個別に見ていきましょう。まずは、今いるオフィスを退去する時にかかる費用である、「原状回復費」がメインとなります。退去するにあたって、壁を傷つけていたり各種OA什器を置きっぱなしの状態で旧オフィスを移動するわけにはいきません。ある程度修復、整理整頓し、借りた当初の状態に戻す義務があります。そして、次に入居する企業に速やかに受け渡しをする必要があるのです。
これに関しては、入居時にオーナーと交わした契約書の中に、どれだけ原状回復をすれば良いのかが明記されている場合も多いのでしっかりとチェックをし、費用を算出してみましょう。基本的には「オフィスの坪数x2~4万円」くらいが相場となっていますが、どの部分にどれだけの費用がかかるのかなどを工事業者と綿密に打ち合わせをし、さらに原状回復のコンサルタントなどにも相談することによって、当初出された見積もりよりも減額を図れる可能性があります。とにかく、打ち合わせを重ねるようにしましょう。
首尾よく原状回復費のメドがたったら、次は実際の引っ越しにかかる費用を見積もる必要があります。特に重要となるのは、引っ越し業者の選定です。彼ら抜きには順調な引っ越しもかないませんが、業者も実に多く存在しています。複数の業者から見積もりを取ることによって、コスト管理をするのがベストな行動と言えるでしょう。ただし、あまりにも安い見積もりとなる業者に関しては、サービスの部分で他の業者よりも劣っている可能性があります。保険に未加入、作業人員が少ないなど、引っ越し時に思わぬトラブルのもとになるかもしれません。費用対効果も慎重に考えるようにしましょう。
また、全て業者任せにせずに、オフィスにいる従業員で引っ越し作業を賄える部分もあります。引っ越し業者に任せる部分は少なければ少ないほど、当然ながらかかる費用も削ることができます。例えば、オフィス什器の移動は業者にまかせると、2トントラック1台につき約8万円かかると言われています。比較的軽い什器やデスク上の備品など、新オフィスへ比較的簡単に持ち運べるものは極力従業員の力を利用することによって、少しでも費用のかからない、賢い引っ越しが行えるようになります。
新しいオフィスで仕事をする体制を整えるためには、当然ながら色々な準備が必要となり、それなりにコストもかかります。個別に見ていきましょう。
まずは、内装工事費です。仕事をしやすいように壁や床の基本的な部分を作り、そこに塗装をしたり壁紙を貼ったりします。最終的な仕上げに至るまで1坪当たり10~30万円くらいを見積もった方が良いでしょう。あまり使用しないエリアは最低限の内装だけですますことで、費用を削ることもできます。
次に、オフィス什器に代表される、仕事に直接的に必要となるものの購入費です。これまで使用してきたものをそのまま新オフィスでも使うことが理想ですが、移転を機に新しいものに切り替える企業も多いです。その時には、費用対効果で選ぶようにしましょう。
インフラ関係の整備費用も見積もりを出すことが重要です。電気や電話といった基本的なものはもちろんですが、近年はインターネットの発達により、LAN環境にも気を配らなければならなくなりました。専門業者も数多くあるので、新オフィスに合った規模のLAN環境を整備してくれるところを探し出し、費用に関して打ち合わせを重ねるようにしましょう。
その他、オフィス移転の際にカットできる費用はないか、もう少し検証していきましょう。
まず、意外にコストがかかるものの代表格として、パーテーションがあげられます。部署ごとにエリアを区切ったり、外界を遮断して集中的に仕事をしたい時に便利なパーテーションですが、取り付け工事に費用がかかり、相場価格もわかりづらいものとなっています。したがって、あまり値段を考慮せずに購入した時、「えっ、こんなに高いの?」と後悔するケースも少なくありません。必要以上の数の購入は控えるようにし、コストを抑えるようにしましょう。
次に、新オフィスに移った際の「保証金」です。賃料の12か月分が相場と言われていますが、これはオーナー側との交渉により値切れる余地があります。限界まで交渉し、妥協点を見出しましょう。
そして、やや違った角度からのコストカットの方法としてあげられるのが、フリーアドレス制の導入です。これは従業員に固定のデスクを用意せず、自由に空いているデスクを使用してもらう、という手法です。移転を機にフリーアドレス制を導入することで、追加でデスクを購入する必要がないので、効果的な費用のカットとなります。
以上見てきたように、オフィスの移転に際して費用を削るには、移転の段階ごとに様々な方法があります。そして何よりも重要なのは、移転が決定したら綿密なシミュレーションをし、削れる費用を徹底的に洗い出すことです。そうすることで、今まで見えてこなかった「ムダ」な部分がはっきりするかもしれません。ムダを削り、新オフィスにて軽やかな再スタートを切りましょう。