現代の経済シーンにおいて女性従業員の存在は、企業が業績をアップさせるうえで大きいものとなりつつあります。社長や重役、取締役など、企業内の重要な役職に女性が就任する、というケースも多くなりました。そんな彼女たち(特に内勤業務が中心の人)にとって、オフィス内のデザインが仕事に大きな影響を及ぼす、というのもあながち否定できないのではないでしょうか。今回は、社内でますます多くなりつつある女性従業員が快適に仕事をできるようなオフィスデザインのポイントを考えていきます。
戦後から昭和の高度経済成長期においては、男性が企業の営利活動において重要な役割を果たしていました。もちろん女性従業員も存在していましたが、特にオフィス内は殺風景なデザインが多く、まさに「仕事をするための箱」でしかなかったのです。しかし1980年代後半のバブル期から平成に歴史を移すにつれて、徐々に女性の社会進出が顕著になっていきました。先進国の中ではまだまだ低い割合であるものの、今や彼女たちの存在は無視できないものとなりつつあるのです。
その結果、多くの時間を過ごすであろうオフィス内の環境を見直す必要性が出てきました。先ほど挙げたような「仕事をするための箱」は、よりデリケートな神経の持ち主である女性にとってはストレスを溜める場でしかありません。部屋中に煙草の煙が蔓延し、やたらと大きな声が飛び交う。さらに、トイレを始めとした衛生面が行き届いていないオフィス内を想像してみてください。仕事に集中できない環境と言えるのではないでしょうか。
女性目線から快適に仕事をすることのできるオフィスデザインを構築することは、以上のような余計なストレスを溜めるどころかリラックスできる環境を提供してくれ、女性のみならず従業員全体のさらなる生産性の向上にもつながるのです。
それでは、女性が働きやすいデザインのオフィスにはどのようなものがあるのか考えていきましょう。
まず注意すべきポイントは、必要以上にデザイン性に富む必要性はない、ということです。現代のオフィスデザインはIT系企業を中心に、近未来的な雰囲気を醸し出しているもの、絵画やオブジェなど、アートで飾られているもの、オフィス全体をモノトーン色でまとめているものなど、オシャレでデザイン性の高いものが多くなってきています。しかしここで重要なポイントは、女性は必ずしもそうしたデザインを好んでいる、とは限らないということです。あまりに奇抜なデザインであれば、女性のみならず男性従業員でも仕事がしづらい、と思う場面も多くなる可能性があります。
女性目線という立場に立てば、オフィスデザインは過剰にオシャレなものである必要性はなく、あくまで自然体なものが好まれます。ここで重要なキーワードとなってくるのが「癒し」です。仕事は身体に疲労感を覚える作業の連続ですが、ふとした瞬間に癒しを感じ、次の仕事への活力になる、そんなデザインが求められます。具体的には木目調のデスク、観葉植物などの緑が多く置かれている、自然を感じられるオフィス環境、休憩時(昼食時)などにゆっくり食事のできる空間などが挙げられます。
次に、もう少し具体的に女性向けとなっているようなオフィスデザインというものを考えていきましょう。
女性にとって、化粧室は大切な存在です。用を足すことはもちろんですが、1日の大半をオフィス内で過ごす女性従業員にとって、化粧室におけるメイク直しは大事なルーティン作業の1つです。この部分のデザインを工夫することは、快適な仕事への重要なサポートにもなります。例えば、化粧用具一式を収めている化粧ポーチやサニタリー用品。これらを一手に保管できるロッカーをトイレ内に設置するだけでも使い心地が良くなり、女性従業員から喜ばれるのではないでしょうか。
次に考慮すべきオフィスデザインは、資料棚や書類棚の配置です。これらの棚は、資料や書類が多くなってくるとついつい高い位置に積みあがってしまいがちですが、日本女性の平均身長は低い傾向にあります。わざわざ踏み台などに乗って資料などを取るのは手間がかかりますし、踏み外してしまうと万が一の事故にもつながりかねません。なるべく低い位置に、横並びの形で棚を置くようにすれば作業効率も高まります。また、プリンターのトナー交換や紙の補充も考慮すべき事項です。これらの作業は多少なりとも重労働になるので、プリンターの側にトナーや交換用の用紙を置いておけば、作業も楽になるでしょう。
その他にも、考慮すべき女性向けのオフィスデザインというものがあります。
夏の暑い時期や冬の寒い時期、オフィス内においては空調機が重要な存在となりますが、女性は環境の変化に敏感です。特に冷え症である場合、冷房は大敵ですが、オフィス内の空調はどうしてもムラが出てきがちです。なるべく均等に空調が行きわたるようにしましょう。特に、天井に埋め込むタイプの空調機は基本的に動かしづらいので、席の位置といったレイアウトには気を配り、真上(もしくは直接風があたるような場所)に席が来ることのないようにしましょう。
また、女性は男性に比べるとコミュニケーションを取ることによって仕事を円滑に進めるのが上手な場合が多いです。それを通して自分の組織内での立場を明確にし、より効率的に仕事をすることもできるでしょう。オフィス内でも、そうした機会を持ちやすいようなスペースを確保することが重要です。しかしながら「おしゃべりのしすぎ」は逆に生産性の停滞をもたらします。「つかず離れず」ではありませんが、コミュニケーションスペースの確保はしつつも、個人で仕事をするデスクは一人で集中しやすい環境となるようなレイアウトを生み出すことが重要となります。
いかがでしたか。企業が営利活動をする上で今や無視できない存在となった女性従業員。そんな彼女たちが快適に仕事をする前提でオフィスデザインを構築することは現代において必須事項ともなっています。女性目線からの意見を積極的に取り入れて、誰もが仕事でパフォーマンスを発揮しやすい環境を整えましょう。