「突然だけど、きみがオフィス移転の担当者になったから、明日からよろしくね」
ビジネスシーンにおいて、こんな話が上司命令として出された時、あなたならどうしますか?「突然」は極端にしても、オフィス移転の全てを任されたとき、どのような手順を踏めば良いのか戸惑う場合も多いでしょう。今回は2回に分けて、スムーズに移転を完了させるためのノウハウを紹介し、「戸惑い」を少しでも無くす方策を挙げていきます。Vol.1では、下準備の段階で必要な要素を考えていきましょう。
オフィス移転にまつわる一連の作業の担当者になったときに、最初に行うべき作業は「要件定義の制作」です。
これはすなわち、今働いているオフィスの状況をリサーチしたうえで、それを新オフィスに当てはめるという作業になります。
要件定義はまず最初に「数字」にまつわるデータをはじきだしましょう。例えば今いるオフィス内で働いている従業員の人数(外回りの多い営業マンの座席も含む)。会議室は全国に拠点を持つ企業の場合、全社会議によって多くの従業員が入室するケースがあるので、それを含めた収容人数。現状あるリフレッシュルームに収容できる最大人数。さらに、将来的に新規採用で獲得する新入社員の数まで想定して、総合的に新オフィスで必要と思われる「人数」を算出します。
そうしてはじき出された数字は、エクセルなどでデータ化し管理しておきましょう。その時に「このオフィスにはこの人数の従業員が働いているから、新オフィスではこれくらいの広さが必要である」や、「営業マンが多いのでこの部分は、新オフィスにおいてフリーアドレスのデスクでも良い」など、理由づけのメモも残しておけば、新オフィスを探すときにスムーズに交渉を進めるツールにもなります。
オフィス移転を考える際、数字という目に見える要素だけで要件定義を制作することはできません。人数に合わせて、単純に広くて開放感のあるオフィスを探し出すだけでは推し量れない部分もあるのです。それは、従業員のモチベーションにつながる部分であったり、コミュニケーションがとりやすくなる部分であったり、癒しの場を提供するような部分であったりと、それらの目に見えない要素も、要件定義を制作するうえで考えなければならないのです。
「オフィスを移転する」という手段が目的であってはならず、プラスアルファのものを付け加えてこそ担当者の面目躍如といったところです。
より良いオフィスを見つけるためには、従業員にヒアリングをすることが大事な作業となるでしょう。「今のオフィスで不満な部分」をアンケート形式などで聞き取り、新オフィスではそれらが100%とまではいかなくとも、かなりの割合で解消されるような場所の選定が重要となります。仕事のしやすさ、コミュニケーションの取りやすさ、そして1日仕事を続けるためにしっかりと休憩をとれるようなリフレッシュルームの存在といった、より多くの従業員の不満を解消できるような「目に見えない要素」のケアを目指して新オフィス物件の選定をしましょう。
新オフィスに移転するうえで、毎日快適に仕事ができるようにするためには、オフィス内の「デザイン」も大事な要素となってきます。直接仕事には関係ないとはいえ、デザイン性に富んだオフィスであれば心理的に、そして精神的にプラスの効果をもたらすことでしょう。
オフィスデザインを総合的に考えるためには、それぞれのパーツに分けて検討する必要があります。例えば、来訪者の目に留まる機会の多い受付部分は、企業をアピールする絶好の場所です。企業のロゴをスポットライトで照らしたり、明るめの配色を施すなどすれば好印象を持たれます。従業員たちが働くオフィスにはオブジェや観葉植物を置いてみたりしてアートな雰囲気を醸し出すなど、色々と工夫をする余地はあります。
理想的なオフィスデザインを追及するときに参考となるのが、日本はもちろん、海外にも星の数ほどある企業の事例です。インターネットツールを利用すれば数時間程度でかなりの数の「サンプル」が溜まっていくことでしょう。そうした情報(画像など)を一括化し、資料のような形で残しておけばどういったデザインが適切なのか、口では説明しにくいことでも視覚的に分かりやすくなります。
十分な下準備が整ったら、いよいよ具体的に新オフィス移行へ向けて動き出します。広さやそれに伴う収容人数など、さきほど挙げた要素の他にも単純に移転にかかる初期費用やランニングコストの算出も必要な手順となってきます。
まずはインターネットで最適と思われるビル物件を探し、次にオフィスデザインの専門サイトを調べて、出されたアイデアに合致するデザイン会社を選定します。デザインを一任できる会社を選べばそこにかかる手間も省け、より効率的にオフィス移転を行うことができます。
選び方は最初から一社に決めてスムーズに事を進めても良いでしょうし、複数のデザイン会社を比較検討する手段も有効です。実際にデザイン会社に連絡、相談をしてみて、出されたアイデアと自社で発案されたアイデアを比べてみて、最も最適な会社を選出します。いずれの手段を取るにしても、実際に着工となったときはこまめな打ち合わせが必要となってくるのは言うまでもありません。
デザインを一任できる会社が見つかったら、あとは具体的に移転に関わる諸々のコストを算出していきましょう。担当者として任された場合、使える予算にもある程度限りがあるかもしれません。その範囲内でうまく収めることができれば、上司からの評価も上がることでしょう。
いかがでしたか。まずは最初のステップとして行動すべき指針を紹介してきました。この段階でつまずくとその後の手続きなども思うように進まなくなるので、基礎的ともいえるこのステップは確実に踏むようにしましょう。今回紹介したような手順が図案化されているサイトもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
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