現代では環境問題が声高に叫ばれています。国を挙げて取り組むプロジェクトなども行われ、企業単位では積極的なエコ活動が社会的な評価を上げるための一手段とさえなっています。さて、そんなエコ活動の一環として「紙資源の節約」というものが挙げられます。なるべく無駄な紙ごみを出さない、いわゆるペーパーレス化への取り組みはどのタイミングで始まるのか、今回はオフィス移転という1つのきっかけにスポットライトを当てます。
企業は様々な理由でオフィス移転という決断を下します。利益追求の新たな展開を模索するため、経営戦略を見直すためなど、様々な理由が存在しますが、移転前までかかっていたコストの見直しを図る、ということにも意義を見出すことができます。すなわち、今まで無駄に経費のかかっていた部分を、移転を機に削れないかを見直すというわけです。
その象徴ともいえるのが、何年にもわたって業務を行う中で発生し、たまりにたまった書類や資料といった「紙資源」の扱いでしょう。普段の業務の中では、無限に増え続けていく書類などの量について実感することは少ないかもしれません。定期的に業者に廃棄を依頼しているとはいえ、既に決められている特定の置き場所に無意識的に積み重ねていくからです。
それを初めて実感するのは、オフィス移転時と言っても過言ではありません。移転に伴い、従業員のデスクの位置などのレイアウトを意識することはあっても、たまった書類を保管しておく場所はなかなか意識しづらいものです。それを想定する段階で、想像していたより多くたまってしまっていた、ということに気が付くのです。
ここではじめて、「紙の書類を今までためすぎてしまっていたから、オフィス内のペーパーレス化を導入し、コストを削減しよう!」という目的につながるのです。
さて、一口にペーパーレス化を実現するとは言っても、これまでの業務的慣習からスムーズに移行することはなかなか難しい問題と言えます。これまでの業務の流れを改めて思い返し、1段階ずつ確実にペーパーレス化への道を歩むようにしましょう。今回は具体的にその手順を1つの指針として紹介していきます。
まずは、ペーパーレス化への方策を部署単位で入念に話し合うことが必要です。個人個人で動いたとしてもかえってムダな紙資源を増やしてしまう可能性があるので、話しあいを通じて部署としての方針を明確にする必要があります。その上で、これまで取引先や社内でのやり取りの中で発生した書類を種類ごとに全てピックアップしてみましょう。会議の議事録や取引先の名刺、パンフレット、業務に関連のある雑誌や新聞の記事、備品購入時などに使用した稟議書、請求書など、これらを全てチェックした上で、リスト化します。
ペーパーレス化にあたって行うべきこの前段階的作業が、実は一番苦労の多い作業です。大量の書類を1つ1つ細かくチェックし、分類するという作業には膨大な時間がかかるからです。しかしながら、この段階をきっちりとクリアすることが、後々の作業をスムーズに行うことにつながります。
さて、書類の分類・チェックが一通り終わったら、次に電子化してメリットがあるものと、そのまま紙書類で継続した方が良いものに分類しましょう。電子化=ペーパーレス化を推進するとはいっても、全てのものがそうできるとは限りません。ちょっとしたメモをする時や、折りためるなど、紙の書類であるからこそ考えられるメリットも色々とあるからです。
最後に、実際にデジタル化できるものを選び、「ペーパーレス化が可能な書類リスト」を作りましょう。デジタル化には、例えばスキャナーを利用する、というメジャーな方法がありますが、書類によってはスキャニングしづらいものもあります。そういったものはそのまま紙媒体として継続するなどの判断が必要な場合も出てくるので、リスト化するのは実際にペーパーレス化を実行する最終段階となるのです。
こうした下準備をした上で、ペーパーレス化を着実に行っていきましょう。重要なのは、最初から完全にペーパーレスを実現できるわけではないということです。できる範囲内から着実に行わないとかえって混乱を招くので(書類の紛失という事態にもつながりかねないので)注意しましょう。
首尾よくペーパーレス化ができた場合のメリットはどこにあるのかを次に考えていきましょう。
まずは単純に紙資源の増加を防ぐことができるので、紙代や印刷代といったコスト削減が挙げられます。そして、たまった紙資源(書類)が無くなることでそれを保管するスペースを確保する必要がなくなり、省スペース化に貢献します。特にオフィス移転時にペーパーレス化を発案、実行することで、より効率的なレイアウトを考えやすくなります。
また、ペーパーレス化は情報の電子化と表裏一体です。電子化により、今までの紙の書類だと探すのに時間がかかっていたものも、検索という機能で瞬時にデータを取り出すことが可能になり、さらなる仕事の効率化に貢献します。そして、社内で重要な会議を行う時に書類や資料は必須となりますが、参加人数が多ければ多いほど、これまでの紙の書類では大量印刷が必要となり、時間がかかるうえに紙資源の大量消費という事態が起こっていました。これを電子化することによって(会議用資料を大勢の目に届くように工夫しなければなりませんが)大量の書類を持ち運ぶ必要がなくなり、さらに情報漏えいという観点からみても(書類を)外部の目にさらしてしまう可能性が低くなります。
以上のように、ペーパーレス化は単純なコスト削減の他にも様々なメリットがあるのです。
いかがでしたか。エコ化が推奨されている現代、書類のペーパーレス化は企業にとっても喫緊の課題となっています。しかしながら、あせって実行に移しても書類の紛失などの重大な事態を招きかねません。きちんと計画を立てて、できる範囲で実践し、コスト削減を目指していきましょう。それが企業の社会的評価の上昇にもつながるのです。