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知っておくべきオフィスレイアウトに関係する法律【労働安全衛生法】

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知っておくべきオフィスレイアウトに関係する法律【労働安全衛生法】

知っておくべきオフィスレイアウトに関係する法律【労働安全衛生法】

オフィスは好き勝手に設計して良いわけではありません。経営者には「快適な職場環境をつくる法的義務」があるからです。またオフィスレイアウトの良し悪しは社員の勤労意欲にも少なからず影響を与えます。
では従業員にとって安全で快適なオフィスレイアウトとは何でしょうか?労働安全衛生法を受けて定められた「快適職場指針」をふまえつつ、良好な職場環境の実践について考えていきます。

労働安全衛生法が定める「快適な職場環境」とはなにか

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

労働安全衛生法は「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と定めています(第1条抜粋)。
適切なオフィスレイアウトは、業務の効率性だけを追求するだけでは足りません。オフィスで働くのは人間である社員です。社員の安全と健康を守るために、経営者は労働安全衛生法の定めを守る義務があります。
労働安全衛生法の具体化は、大規模なオフィスビルを対象とする「ビル衛生管理法」と、中小規模のオフィスを対象とする「事務所衛生基準規則」にわかれます。どちらも重要な法規ですが、守備範囲がとても広いためポイントがぼやけてしまう嫌いがあります。
そこで経営者のみなさんにチェックするようおすすめしたいのが、労働安全衛生法の実効性を高める目的で制定された「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」、通称「快適職場指針」です。
快適職場指針は以下のポイントを定めています。
1. 作業環境
空気の汚れ・温度・湿度・明るさ・騒音・部屋の広さ等につき、社員が不快感を抱かないように維持管理する。
2.作業方法
デスクワーク時の不自然な姿勢・過度の重労働・強い緊張を強いられる作業の持続など、社員の心身に大きな負担を与える作業方法を避ける。
3.疲労回復支援施設
休憩室・シャワールーム・相談室など、社員の疲労やストレスを解消するための施設を設ける。
4.職場生活支援施設
トイレ・更衣室・給湯室・食堂など、社員が業務以外の日常生活を支障なく行える環境を整備する。
以上のポイントをオフィスレイアウトなどに反映させることで「快適な職場環境」の実現を促す。これが労働安全衛生法の定める「快適職場指針」の目的です。

ポイント1〜作業環境の管理

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

ここからは、快適職場指針の各ポイントを一つずつ具体的にみていきます。まず「作業環境」についてです。
ビジネスマンが効率的に仕事をこなすには、職場の作業環境が整っていることが不可欠です。たとえば、30度を超える猛暑日に、エアコンの効かないオフィスで仕事を強いられれば、社員の判断力は著しく低下します。仕事の処理は遅くなり、ミスが増え、最終的には会社の損害にもつながりかねません。
そこで快適職場指針では、オフィスの空気の汚れや、温度・湿度、明るさなどについて、適切に維持管理することを経営者に求めています。
また、オフィスレイアウトのデザインもこの作業環境に含めることができます。たとえばオフィスの床面積に比べてデスクの数が不釣り合いなほど多い場合、オフィスの空気や気温の管理が難しくなります。適度にデスク間の距離を保ち、すし詰めのオフィスを避けるように設計すれば、作業環境はより快適になるわけです。
実は昭和47年に制定された「事務所衛生基準規則」第2条でも、「労働者1人あたり10立方メートル」の気積(空気の総量)を確保するよう定めています。外資系企業の日本進出が当たり前になった現代では、かなり広い床面積を確保したオフィスも珍しくないでしょうから、この「10立方メートル」はおおむね実現できているようです。
ただ、この「気積」は、労働者1人あたりの「空気の量」を定めた指針です。床面積が広くても、「天井が不自然に低い」「フロア中を背の高い什器が埋め尽くしている」といったオフィスでは、気積が縮小して「息苦しい職場」になってしまいますから注意してください。

ポイント2〜作業方法の改善

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

次に「作業方法の改善」をチェックしましょう。
(不良姿勢作業の改善)
たとえばパソコンをつかって設計図面の作成やwebサイトのコーディングをする業務を想像してください。自分の目線よりもパソコンの位置が異様に高い・低い状態では、まともな仕事はできませんよね。このような「不良姿勢作業」はただちに改善することが求められます。
(重筋作業の改善)
常に重い荷物を人力で持ち運ぶ作業を強いられる職場は怪我のリスクが高まります。コンベアやクレーンなどの補助器具を導入することが必要です。
(高温・多湿作業の改善)
加工食品メーカーの開発部にありがちですが、調理した食材を四六時中扱うようなオフィスでは、室内がたちまち高温・多湿になります。全自動化したブランチングルームで処理をする、加熱処理するスペースと周囲の空間を垂れ幕などで遮断するなどの対策が必要です。
(緊張作業の改善)
精密機械の小さな部品の組み立てをベルトコンベアの流れ作業で休みなく続ける職場を想像しましょう。適切な人員配置や休憩を怠れば、作業スタッフの視力の悪化や、集中力の低下によるミスが頻発します。このような場合、ベルトコンベアではなく机上での作業に変更することで、作業に伴う疲労感を大幅に軽減し、健康被害や作業ミスを減らすことが可能です。

ポイント3〜疲労回復支援施設等の充実

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

疲労回復支援施設と職場生活支援施設の充実も、業務に直接関わらないとはいえ重要なポイントです。企業に勤める社員にとって、オフィスにいる時間は人生の相当部分を占めるからです。
快適職場指針では、オフィスの規模にかかわらず、社員の疲労やストレスを回復させるための施設を設置するよう求めています。たとえば、無料のドリンクや軽食をいただける休憩室などが典型です。汗をかく作業の多い職場ならシャワールーム、メンタルに負荷のかかりやすい職場なら常勤カウンセラーを配置した相談室など、社員の疲労を回復させる施設のバリエーションはさまざまです。
また、洗面所・更衣室・食堂など、人間として生活を送るのに当然必要な職場生活支援施設についても適切に整備することが推奨されています。
疲労回復支援施設や職場生活支援施設は、保養所や社員寮といった福利厚生施設の整備とは異なるニーズで制度化されたものです。したがって「うちは軽井沢に社員専用の別荘があるから、オフィスに特別な施設なんて不要だろう」と考えるのは間違いです。福利厚生施設は「法定外=経営者のサービス」として設ける場合も多いですが、疲労回復施設や職場生活支援施設は、国がその必要性を認めて設置を求める法定施設なのです。

職場快適指針のスムーズな実践のために

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

快適職場指針をスムーズに実践するには次の3つを考慮しましょう。
1.専従の担当者をつくる
新しくルールを定めたり環境を変えたりするのは、とてもエネルギーを要しますよね。「快適職場指針」を実践すべく、思い切ってオフィスのレイアウトや業務のオペレーションを変更したりしたまでは良いものの、その後も長く持続することがおろそかになる場合もあります。
だからこそ、快適な職場を実現するには第三者によるチェックが必要です。一例が「快適職場指針の実効性をチェックする担当者の選定」です。個々の社員や経営者が「快適な職場にするぞ!」と意気込んでいても、日々の業務に忙殺され、結局うやむやになりがちです。指針の実効性をチェックする担当者をあらかじめ選定しておけば、「快適な職場が実現できているか」を定期的にチェックできます。
2.社員の意見を反映させる
職場環境の改善は社員のために行うものです。経営者や管理者の一存であれこれ考えるだけでは社員のニーズを満たせないおそれがあります。
そこで、公平な立場で社員の声を拾い上げる第三者機関を設けるのがベターです。
この点、労働安全衛生法は、常時雇用する社員が50名を超える企業に対し、社員の労災防止を目的とする安全衛生委員会を設置するよう義務付けています。この制度を快適職場指針の実践にも流用することができます。
もっとも社員50名未満の企業の場合、わざわざ安全衛生委員会を設置している例は稀でしょう。この場合、社員の声を拾い上げる役割は総務部の社員が担うことになります。
3.個人差への配慮
社員はそれぞれ別の人間です。安全や健康、快適さに対する考え方や、それぞれの身体的・精神的コンディションも異なります。たとえば暑さに対する我慢強さ一つとっても、入社したての若年者と定年間近の高齢者とではまるで違います。個人差を無視して快適職場指針を一律に一定の数値でコントロールしようとすると、社員間に「不公平感や不足感」が生じ、職場内に不要な軋轢が生まれることもあります。
より実効性の高い快適職場指針とするため、経営者はぜひ「職場環境の快・不快の感じ方には個人差がある」という視点を忘れないようにしましょう。
以上のとおり、「快適職場指針」は業務用のフロアだけでなく、休憩室や食堂のような業務外のスペースにも関係します。経営者や管理職のみなさんは、今一度、労働安全衛生法の定める目的を振り返り、社員のための快適な職場環境を実現させましょう。

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