見た目がデザイン性に富んでおり、かつ機能的でもあるオフィスデザインの考案は、そこで働く従業員が快適に作業を行う上で重要なポイントとなります。オフィスデザインではレイアウト、壁、天井といった部分が中心となりますが、目線を下に落としてみましょう。足をつけている「床」という所も、オフィスデザインにおいてこだわりたいポイントです。普段はあまり意識をしない部分であり、まさに「灯台下暗し」ですが、今回はこのオフィスの床においてデザイン、機能面でこだわれるポイントを探っていきます。
たかが床と侮ることなかれ、普段は意識しないような部分でも、実はオフィス内の全体的な雰囲気を出す決め手ともなりうるのです。歴史的にオフィスの床と言えば、グレーのタイルが一般的なものでした。これは照明の明かりとのバランスといった観点や、細かい紙ゴミなどが地面に落ちた時でも目立ちにくいという理由から多くの企業が(グレーのタイルの床を)採用していたのです。
しかし時代とともに、床にもデザイン性、機能性にこだわろうとする企業が増えてきました。IT関係などの企業を中心に「オシャレ」なものを採用する傾向が出てきたのです。
さて、それではどのような床がオフィスの内装を際立たせるのか、まずは色合いという観点から見ていきましょう。執務室においては依然としてグレー系が採用される傾向がありますが、色の明るさや(後ほど挙げる)素材の違いといった工夫の仕方で随分と見た目も変わりますし、組み合わせによって違ったイメージを演出もできます。
また、フロアによって色合いを変えるという工夫も考えられます。例えばリフレッシュスペースであれば自然色でもあるグリーンや、その他ナチュラルカラーを使えばまさに「癒しの効果」がありますし、クリエイティブな企業であれば、来客者が多く通るエントランスの床に黄色やオレンジ色などを使うことでデザイン性に富んだ企業であるという個性を演出できます。
床によってオフィスの雰囲気を演出するのは「色」のほかに、床の「素材」でも可能となります。色が決まれば自然と素材も決まる、という関係性がありますが、この素材には主に3つの種類があります。
まずは「カーペットタイプ」です。1枚の布でできたものや、40~50センチ四方のタイル型といったものが挙げられます。特にタイル型は部分的に取り外しができるのが特徴であり、色合いの変更が可能等のデザインのしやすさがあります。その一方で耐久性が弱く摩耗が激しいので、定期的な張替えが必要となってきます。
次に挙げられるのが「ビニールタイプ」です。1枚のロール型や、組み合わせて使用できるタイル型があります。このタイプの特徴は何といってもデザイン性が高く、またカッターなどで簡単に裁断することができるので、組み合わせ次第では洗練されたオフィスの雰囲気を作り出すことが可能な点です。一方で剥がれやすく捲れやすいという欠点があるのでマメにメンテナンスをする必要があり、重い家具を置いてしまうと凹んでしまうのには注意が必要です。
最後の素材は「天然素材タイプ」です。大理石や木材といったものが代表的であり、本物ならではの重厚感があるのでオフィスデザインの洗練化に一役買っています。ただし高価なものであり、手入れが非常に大変という特徴があります。そして大理石は特に滑りやすいので水回りのエリアには設置しないほうが得策です。
床材は以上のような素材が代表的なものです。オフィス内のレイアウトに応じて、適切な床材を設置しましょう。
オフィス内の床のデザインを変えると、機能面においても様々な問題を解消できる可能性があります。どのようなものがあるのか、以下に見ていきましょう。
素材によりけりですが、人が歩く際に発生する「コツコツ」といった靴の音を抑えられる可能性が考えられます。多くの人が歩くエリアであるエントランスならともかく、執務室などは静かな状態で仕事に集中できる環境を整えたいところなので、靴の音を吸収する床材を使用すべきでしょう。
また、オフィス内において動線をはっきりさせるために、床を分かりやすく色分けするという手法も考えられます。動線とは従業員が普段の業務の中で、報告や連絡のために移動、またFAX機などを使用するときに移動するための通路の事を指し、この通路が色分けされていれば歩きやすくなって、必要以上の従業員で溢れかえって(通路が)渋滞になる、といった事態を避けやすくなります。
さらに、回線関係をすっきりさせる、という方法もとることができます。IT化によって、インターネット無くしては仕事もままならなくなっている現代、LANケーブルなどの各種コード類を使用する機会も多くなってきています。しかしながら、これがあまりに多くなりすぎると(基本的にコード類は床を這わせるしかないので)オフィス内の景観を損ねる可能性もあります。こうしたコード類の問題は、床のデザインを工夫することによって解決できる場合があります。すなわち「床の二重化」です。本来ある床と新たに作った床の間に隙間を作り、そこにコードを収める、という方法です。オフィス内の景観がスッキリするほか、従業員が誤ってコードを足に引っ掛け、断線するというリスクも回避できるのです。導入に費用が掛かり、若干天井高が低くなる、取り外し可能なタイルカーペット状の床でのみ可能といくつかのデメリットもあるものの、今ではIT関係の企業のみならず、多くの企業で二重床の採用が進んでいます。
いかがでしたか。今回は、普段は気づきにくいオフィス内の床という部分も、工夫次第で洗練された雰囲気を醸し出すことができるということを検証してきました。単純に見た目のデザイン面のみならず、騒音が立ちにくい、動線が分かりやすくなる、コード類をすっきりさせられるなど、様々な機能面でのメリットがある床材の変更は、普段の業務においても間接的な効果が現れてくることでしょう。