花粉症の人にとって、春は憂鬱な季節。くしゃみ、鼻水、涙でぐしゃぐしゃになりながら仕事をしないといけません。そこで提案したいのが「オフィス空間の花粉対策」です。
人の出入りの多いオフィスの場合、花粉も大量に持ち込まれます。いかにオフィスへ花粉を持ち込まないか。また、花粉症を発症している社員が仕事に集中できるよう会社には何ができるのか。オフィスの花粉症対策を網羅的に紹介します。
花粉症のつらい症状は花粉に対するアレルギー反応によって起きます。ということは、オフィスのなかに花粉を持ちこまなければ、(少なくともオフィスにいる間は)花粉症の症状に苦しむこともないわけです。
オフィスに花粉が侵入する原因としては、まず「人の出入り」が挙げられます。営業で外回りに出かけた社員がオフィスに戻ったときのことを想像してみましょう。服・髪の毛・バッグには大量の花粉がついています。この花粉を落とすことなくオフィスに持ち込んでしまうと、オフィスのなかにどんどん花粉が蓄積していきます。花粉症を発症している人にとっては、到底仕事にならない状態になることでしょう。
そこで、オフィスの花粉対策としておすすめするのが「水際作戦」です。具体的には以下の方法をとります。
1:静電気除去スプレーや花粉除去スプレーを使う
営業などで外回りをする際は、出かける前に静電気防止スプレーなどを服やバッグにふきかける習慣をつけましょう。オフィスの出入り口にスプレーを置いて自由に使えるようにしておくとよいでしょう。
2:マスクをオフィスに常備しておく
最近のマスクは機能が向上しており、高性能マスクでは95%以上の花粉をブロックできるタイプもあります。外回りの社員が重い花粉症持ちなら、ぜひ会社の経費で高性能マスクを支給してあげましょう。
3:花粉を払い落としてからオフィスに入る
オフィスのドアを開ける前に、服や髪の毛についた花粉を払い落とすことが重要です。花粉を取るためのコロコロやブラシなども活用しましょう。
4:「エアシャワー」「エアカーテン」の検討も
「社員の相当数が重症の花粉症患者で、ちょっとした花粉でもすぐに反応して仕事にならない」。そんなときは、ビルの入り口にエアカーテンを設置してはいかがでしょうか。荷物や郵便の配達が多いオフィスだと、頻繁にドアの開け閉めがあるため花粉も侵入しやすくなります。
エアカーテンで空気の壁をつくれば、花粉の侵入を大幅に減らすことが可能です。もし予算の都合がつくなら、オフィスの出入り口付近にエアシャワーを設置し、全身の花粉を根こそぎ落としてから入室すれば効果が出ます。
「水際作戦」を決行しても、オフィスへの花粉の侵入をゼロにするのはむずかしいかもしれません。そこで、オフィスのなかで実践できる花粉対策を紹介します。
1:デスク周りの掃除
花粉は人の集まる場所にたまります。デスクまわりを中心に定期的な掃除を心がけましょう。オフィスで1週間に一度、一斉清掃の時間を設けるのもおすすめです。
2:窓の周辺の掃除
窓の開け閉めにともないオフィスに侵入した花粉は、窓の下や床にたまります。特に網戸や桟には、ほこりとからみあった状態で大量の花粉がたまっています。ブラシや掃除機を使い、徹底的に掃除してください。カーテンを使っている場合は、1ヶ月に1~2回のペースで洗濯すると付着した花粉をきれいに洗い落とすことができます。
3:エアコンの掃除
冬から春先はエアコンをフル稼働しているので、フィルターなどに花粉がたまりやすくなります。特に何年も掃除していない古いエアコンは要注意です。起動時の排気で室内に花粉がばらまかれている状態ですから、すぐに徹底した掃除を行いましょう。
4:静電気対策にも注意
花粉は静電気を帯びたものに付着しやすい性質があります。また、花粉はほこりの塊にもくっつきやすいもの。ほこりそのものも静電気によって少しずつたまっていくので、オフィス内の静電気を除去することで、ほこりと花粉がたまるのを防げます。
また床にカーペットやじゅうたんを敷いている場合、人がその上を歩くたびに静電気が発生しています。専門業者に依頼すれば静電気の帯電を防ぐ処理をしてくれるので利用するとよいでしょう。
5:窓の開け閉めにも一工夫を
高層ビル内のオフィスでは難しいと思いますが、低層ビル内のオフィスであれば定期的な換気をおすすめします。室内空間の花粉は時間の経過とともに濃度を増していきます。定期的に窓を開放し、外気を取り込むことで室内の花粉の濃度を下げることができます。ただし、外気温があがる時間帯(11時~14時)は花粉が飛散しやすいので避けてください。
6:加湿器や空気清浄機の使用
オフィスがそれほど広くないのであれば空気清浄機は効果的な花粉対策となります。「エアコンの対角線上に設置する」のがポイントです。室内の空気が対流し、空気清浄機とエアコンのダブルのフィルターで花粉を効率的に集塵できます。
「日本人の3人に1人は花粉症である」という統計があります。東京都にいたっては48%とほぼ半数の人が花粉症であるという調査もあるほどです。
ただ、花粉症と一口にいっても、ほとんど自覚症状のない場合もあります。軽度の花粉症は風邪の症状とよく似ているため、気休めに風邪薬を飲んで済ませてしまい、きちんと花粉症の治療をしないまま悪化させてしまう人も多いといわれています。そのため、実際に花粉症の症状に苦しんでいる人が3人に1人もいるかといえば、そこまで蔓延している実感は少ないかもしれません。
花粉症かどうかは簡単な検査でわかるので、もし職場で花粉症のような症状を訴えた社員がいたら、産業医の診察を受けるように上司が声をかけてあげるとよいでしょう。
なお、冬場のように室温と外気温の差が大きいと「寒暖差アレルギー」を発症する場合があります。「アレルギー」と名がついていますが、正確には自律神経の乱れによる病気であり、アレルギー疾患ではありません。花粉症と症状がよく似ていますが、治療法はまったく異なるので混同しないよう注意してください。
ここまで説明したようなオフィスの花粉対策は、花粉の季節が到来する前にあらかじめマニュアル化し、社員に配布しておくのもおすすめです。花粉症による不快な症状は、仕事の能率を極端に悪くし、職場の士気を低下させる原因にもなります。花粉対策マニュアルを配布し、社員全員で「花粉症は怖い!」という問題意識を共有しておけば、オフィスの花粉対策の実効性を高めることができます。
オフィスの花粉症対策は(エアカーテンなどを除き)コストも低く、実践も容易な方法ばかり。しかし、社員の間で花粉症に対する危機感が共有できていないと、「花粉症じゃない人もいるのだから、各自が対策をとればいいんじゃない?」といった空気が広がり、対策の実践は難しくなります。
花粉症は単なるアレルギー疾患にとどまらず、仕事の能率を奪う「敵」です。徹底的に戦う覚悟をもって、職場全体で対策をとることが肝心です。