賃貸オフィスを契約するときにかかるコストとして不動産会社の仲介手数料があります。仲介手数料は、賃貸借契約が成立して初めて発生するものです。その仲介手数料を巡って、不動産会社と企業との間でトラブルが発生してしまう事例があります。
仲介手数料を正しく理解し、不動産の基礎知識を持つことで不必要なトラブルを回避しましょう。
不動産会社の仲介手数料とは、不動産の売買や賃貸の契約において、不動産会社が「買主を見つけた」、また「希望の賃貸物件を探した」ときなどに、不動産会社に支払う成功報酬のことを指します。つまり、成功報酬となる仲介手数料は、売買や賃貸の取引が成立しなければ請求されることはありません。仲介手数料については、宅地建物取引業法によって規定されているもので、不動産会社は規定額以内の仲介手数料のみ請求することができ、宅地建物取引業の免許を持っていない会社が仲介手数料を請求することは違法行為に値します。
一般的な賃貸借の仲介取引額としては、貸主と借主が賃料1ヵ月分相当額を折半し、それに消費税をプラスした金額と考えられています。しかし実際には、借主が仲介手数料を全額支払う場合がほとんどです。不動産会社が受け取れる金額は、賃料の1ヵ月分に対して1.08倍の金額以内と定められています。つまり、ちょうど「1ヵ月の賃料プラス消費税」となります。
上記のように、仲介手数料は本来、貸主と借主で折半するため、貸主・借主の一方から受け取れる報酬額は1ヵ月分の家賃の0.54倍以内と定められています。ただし、貸主・借主の承諾を得ている場合には、上記の金額以上に受け取ることができます。この場合は、賃貸契約時に不動産会社から出される契約書類の中に、『契約成立時に、仲介手数料(媒介報酬額)〇〇円(消費税込)を支払うことを承諾しました。』と文が添えられます。これが、実際に多く支払う仲介手数料の実態になります。
不動産会社にとって、貸主と借主の仲介を正規の値段で行なうだけでは不動産会社のもうけがなくなります。そのため、仲介手数料がないと不動産会社の生計が立ちません。不動産会社によっては、仲介手数料なし・〇割引などの宣伝をしている場合がありますが、全くお金がかからないということはほとんどありません。仲介手数料以外に料金が発生したり、トラブル発生時のフォローがないなど、なにかしらのデメリットが存在する場合があります。
賃貸オフィス物件を取り扱う不動産会社の業務は大きく分けて2つあります。一つは、賃貸仲介業務です。入居希望者の希望に沿った物件を探し、現地案内から契約までの交渉を行ないます。二つめは、賃貸管理業務です。ビルのオーナーから賃貸オフィスの管理を頼まれて、そのオーナーに代わってオフィス建物を維持するための管理・借主からの賃料の集金を行います。どちらの業務も合わせて賃貸仲介業務を直接行なう不動産会社も存在します。どちらの不動産会社も賃貸広告は出していますが、幅広いエリアで希望のオフィス物件を探すことができる不動産会社、ビル内を熟知して管理している不動産会社などそれぞれ特徴はあります。いずれにしても信頼のおける不動産会社であれば、条件の合ったオフィス物件を見つけることができるでしょう。
不動産会社にも規模の大きさの違いがあります。まず、大きな不動産会社では、支店同士の情報交換が可能で、幅広い対応を可能にします。また、会社名やその知名度から安心感を持って依頼することができる点がメリットです。しかし、その分マニュアルや方針がしっかりしていて、融通が利かない場合が多く、営業トークもしっかりしているため、契約への時間が短く作業的になっている場合があります。
一方の小さい不動産会社では、地域密着型の場合が多く、地元のビル情報や地域情報に特化していることが多いです。掘り出し物件などを見つけやすく、独断での経営の場合には、融通の利く柔軟な対応をしてくれることがあります。しかし、エリアが狭く、広範囲でのオフィス物件探しには不向きの場合があります。オフィスの立地条件がしっかりしている場合にはおすすめですが、オフィスの場所が絞れていない場合には難しい点があるかもしれません。
仲介手数料を巡るトラブルは、いくつも事例があります。
まず、「仲介手数料は法律で定められている」と言われ、上限額まで支払った事例です。仲介手数料が法的に規定しているのは、仲介手数料の上限金額のみです。その範囲内で、不動産会社と貸主・借主の間で納得した金額を決めることになります。
また、仲介手数料以外にも異なる名目で手数料を請求された事例があります。基本的に依頼した覚えのないものに関する手数料は支払う必要はないので、しっかりと断ることが必要ですが、難しい場合には、不動産会社を管轄する自治体の担当に相談することをおすすめします。
こうした仲介手数料トラブルを避けるためには、仲介手数料をしっかり理解することが大切です。宅地建物取引業法に基づいた仲介手数料を把握したうえで不動産会社の説明を受け、契約時の書類を確認しましょう。仮に納得したうえで、多く仲介手数料を払う場合にも金額はよく確認することをおすすめします。
また、仲介手数料以外の費用についてしっかり知識をつけましょう。通常の仲介業務で不動産会社に発生する費用は、請求されることはありません。例外として、不動産会社に特別な依頼で発生した通常の販売活動などで行なわない広告宣伝費用、遠隔地の入居希望者との交渉、出張費用などについては仲介手数料とは別に請求されることがあります。あくまで、依頼に基づいたものであること、通常の仲介業務外で発生する費用、実費であることを満たしている場合に例外的に請求されるものになります。内訳のない仲介手数料以外の費用は、しっかり内訳を聞き、内容と金額を確認してから支払うようにしましょう。
オフィス物件を探し、契約をするための仲介役をしてくれる不動産会社ですが、不動産に関する基礎知識が企業側にない場合には大きな損をしているかもしれません。特に仲介手数料などの金銭に関するトラブルは解決が難しい場合が多いため、極力トラブルに巻き込まれないように注意が必要です。
不動産会社が行なえる業務の範囲を知り、仲介手数料、またその他の費用に関しても理解を広げましょう。不審に思った場合には、不動産会社を管轄する自治体や担当に相談することがおすすめです。