順調だった事業が、急に伸び悩むときがあります。このような場合は1度立ち止まって現状を振り返り、先を見据えた中期的な計画を立て直すことが重要です。今回は、成果につながる中期経営計画の作成方法や作成時の注意点、計画を軌道に乗せるためのポイントなどを解説します。
まずは、成果につながる中期経営計画の作成方法から解説します。基本のステップは下記の通りです。
1.自社の現状を分析する
2.経営理念を再確認する
3.中期ビジョンを設定する
4.経営戦略を設定する
5.数値目標・行動目標を設定する
各工程について詳しく解説します。
まずは自社の経営状況を分析し、課題を洗い出しましょう。経営状況を分析する際に役立つのが「SWOT分析」です。下記の4つの要素を整理し、自社の内部環境と外部環境の現状を把握します。
・Strength=強み
・Weakness=弱み
・Opportunity=機会
・Threat=脅威
上記のうち、内部環境を表すのが「強み・弱み」です。自社の製品・サービスや人材、資金力などを分析します。そして外部環境を表すのが「機会・脅威」です。社会環境の変化やトレンド、競合他社の動向などを分析します。
さらにPPM分析(※1)やCFT分析(※2)なども用いて自社の事業ポートフォリオを作成すると、より正確に現状を掴みやすくなります。
事業ポートフォリオの作成方法については下記の記事にて詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
「事業ポートフォリオとは?メリットや作成方法、最適化のポイントを紹介」
※1:市場成長率と市場占有率から、自社の事業や商品を4つのポジションに分類し、経営資源の投資配分を判断する分析手法
※2:顧客・機能・技術の3つの軸で自社の強みを分析する手法
自社の現状と課題が把握できたら、次に経営理念を再確認します。中期経営計画は3~5年後のありたい姿を実現するために作成するものです。その目標を策定するための指標が経営理念であり、経営理念が曖昧だと途中で方向がブレるおそれがあります。
企業によって異なりますが、経営理念には下記の3つの要素が含まれるのが一般的です。
・ミッション:企業が果たすべき使命・存在意義
・ビジョン:企業の目標・将来像
・バリュー:企業全体の価値観・信念・行動指針
上記をもとに、経営理念に即した3~5年後のありたい姿になっているかどうかをあらためて確認します。もし、経営理念が曖昧だと感じた場合は、改めて経営理念を見直すことから始めましょう。
経営理念の再確認が完了したら、その内容をもとに中期ビジョンを設定します。3年後、5年後に自社がどのようになっているのが理想なのか、将来像を明確にしましょう。
中期ビジョンを設定したら、そこで描いた将来像と現状を比較して差分を洗い出します。するとより自社の課題が明確になり、改善すべき部分や取り組むべき施策が見えてくるはずです。
続いて、設定した中期ビジョンや明確になった改善点、施策などをもとに経営戦略を策定しましょう。
自社が抱える課題を解決してありたい姿を実現するには何をすれば良いのか、どうすれば弱みを克服して強みを伸ばしていけるのか、具体的な方法を考えます。「事業戦略」と「機能戦略」をそれぞれ考えるのも有効です。
・事業戦略:自社が提供する製品・サービスについての戦略を考える
・機能戦略:生産、マーケティング、人事、財務などについての戦略を個別に考える
中期経営計画を実現するための戦略ですが、中期経営計画の先には長期経営計画があります。中期的な目標の達成だけに捉われすぎず、その先の目標につなげることを意識しながら考えてみましょう。
経営戦略を策定したら、その内容を踏まえて数値目標や行動目標を決めましょう。まずは最終的な数値目標を設定します。下記のような企業の利益に関わる数値について、具体的な目標を立てましょう。
・売上計画:限界利益・売上区分別・顧客別の売上高などに関する計画・目標
・経費計画:人件費・マーケティング・開発費など各種経費に関する計画・目標
・設備投資計画:システムや建物など、長期間使用する設備への投資・回収などに関する計画・目標
最終的な数値目標が決まったら、途中でブレることなく着実に進むために、短期的な数値目標も設定します。最終目標から逆算し、いつまでにどれくらいの数値を達成すべきなのかを洗い出しましょう。
最後に短期目標・最終目標の達成に必要な行動は何かを考え、行動目標として可視化します。
中期経営計画を作成するにあたり、いくつか注意したいことがあります。より良い計画を立てるためにも、作業に取りかかる前にチェックしておきましょう。
中期経営計画を作成する際には、効果を定量的に測定できる目標を設定しましょう。中期経営計画は現状と将来像の差分を把握し、改善点や取るべき施策を検討・実行するために作成するものです。
具体的な数値目標がないと将来像との差分が測れず、施策の進捗や効果も把握できません。そのため、売上高や営業利益率など、具体的な数値を設定することが重要です。
中期経営計画が動き始めたら、定期的にモニタリングを行い進捗確認や効果測定をする必要があります。いつどのタイミングでモニタリングを実施するのか、あらかじめスケジュールを決めておきましょう。
部署や部門によって得られるデータの内容や時期が異なるため、事前にスケジュールを立てておかないと必要な情報が集まらない可能性があります。
また、モニタリングのためのミーティングを実施する場合は、ミーティングのスケジュールも確保しておきましょう。
どれだけ綿密な中期経営計画を立てても、想定通りに進まないことは多々あるものです。そのまま放置すると目標達成がどんどん遠のいていくので、計画の内容と実績や進捗にズレが生じた場合の挽回策も考えておきましょう。
どうしても軌道修正できない場合は、そもそも計画自体に無理があった可能性も考えられるため、再度中期経営計画を作成し直す必要があります。
ここでは、中期経営計画の形骸化を防止しつつ軌道に乗せるために、策定後に意識したいポイントを3つ紹介します。
中期経営計画を作成しても、従業員への周知が不足していたりどう行動したら良いのかが不明瞭だったりすると、計画が形骸化してしまいます。
まずは中期経営計画について従業員に周知しましょう。全従業員に周知するのが望ましいですが、一斉に周知するのが難しい場合は部署・部門単位、あるいは管理職に伝えて各従業員に周知してもらいます。
その後、計画を細分化して従業員のタスクに落とし込み、具体的な行動に移れるようにしましょう。
例えば「3年後に年商〇〇億円を達成します」と伝えても、従業員はどう動いたら良いのかわかりません。年間の目標、月間の目標と細かく具体化し、各目標達成のために日々何をすべきかを伝えることが大切です。
1度目標を立てたらそこで終わるのではなく、PDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)サイクルを回し、必要に応じて見直すことも重要です。
目標を立てた時点では最適な内容であっても、企業を取り巻く環境が変化し、目標と現状が合わなくなる場合があるためです。また、目標が高すぎるなどの理由で、思うような成果が得られないケースもあります。
各部署・部門の管理者に定期的に目標達成率を測定するよう促し、目標を評価・改善するための仕組みづくりを推進しましょう。
予材管理を実践することも、中期経営計画を軌道に乗せるために欠かせないポイントです。
予材管理とは、通常の2倍ほど予定材料を用意しておき、目標達成の確率を上げる管理手法です。そして中期経営計画における予定材料とは、スケジュールや人員などの経営資源を指します。
予定材料がギリギリだと、何か問題が起きた場合の軌道修正が困難になり目標が達成できなくなるおそれがあります。
通常よりも長めにスケジュールを立てたり、担当者の人数を増やしたりして余裕をもたせることで、従業員がタスクをこなしやすくなるので目標達成の確率が高まるのです。
関連記事:「固定費を削減する方法とは|メリットや削減時の注意点を解説」
経営が伸び悩んでいる時期には一度立ち止まり、中期経営計画を立て直すことが重要です。今回紹介した内容を参考に、経営を軌道に乗せるための中期経営計画を作成しましょう。