元いた会社の内装や設備などがそのまま残されている「居抜き物件」。以前入っていた会社が同じ業種や業態であれば、より一層移転にかかるコストを抑えることが出来るでしょう。しかし、メリットばかりではありません。見落としがちな居抜き物件の落とし穴を事前に知っておきましょう。
居抜きであるということは、前に入っていた会社がそのまま出ていったということです。通常であれば、移転の際は可能な限り備品や什器設備は持っていきます。そのため、それらが残っているということは、前の会社が倒産・撤退している可能性があるのです。
しかし、実は什器が残っているケースの多くは「オフィス移転を機に内装や什器を一新するためにそれまで使っていたものを置いていった」ということが大半で、ちゃんと使える物も数多くあります。売ったり捨てるのが面倒だということで置いていくという場合もありますので、そのあたりの事情も不動産会社に聞いてみてもいいかもしれません。
「もらえると思っていた設備が、契約した後にもらえないと分かった」。こういったケースは、よくありがちなトラブルです。物件を下見に行ったときに、完全に相手が引き払っていない場合もあります。トラブルを避けるためにも、下見をしながら「設備・備品リスト」のような物を必ずもらっておきましょう。また、設備の中にはリース契約をしているものがあるかもしれません。契約後にリース会社に設備を回収された、というような居抜き物件の落とし穴にはまってしまわないよう注意しましょう。
その他、什器などの設備は賃貸物件そのものの設備なのか、所有権自体を買取できるのかも確認しておく必要があります。所有権自体がビルオーナーや管理会社にある場合は、修理費などを払う必要はありません。しかし、契約時に什器の所有権を買取った場合は、前の入居者が残していった什器の修理費や撤去費はすべて実費となります。什器の譲渡には修理やリニューアルをしなくてはいけないリスクがあることは認識しておきましょう。
オフィス移転の際には、基本的に退去する側はオフィスを借りたときの状態に戻す「現状回復工事」を行う必要があります。退去の際にビルのオーナーや管理会社から「居抜き物件として退去して大丈夫」と了承を得なければ、居抜き物件のまま退去できないのです。前に入居していた会社が居抜き物件で退去できたからといって、自分たちが退去する場合もそれが当てはまるとは限りません。もしビルのオーナーや管理会社から了承が得られなければ、退去時に数百万単位の原状回復費用がかかることもあるので、その点は覚悟しておきましょう。
初期コストを抑えることができる、お得な居抜き物件。しかし、事前に居抜き物件の落とし穴を知らなければ、契約後のトラブルに発展しかねません。退去理由、内装費の事前見積もり、設備リストやリース物品に注意しながら物件を選んでみて下さい。