
事業を継続・成長させていくには、損益分岐点を把握することが重要です。しかし、「固定費」と「変動費」の分類を誤っており、正確な損益分岐点が算出できていないケースがあります。固定費と変動費の違いを理解し適切に分類することが大切です。
そこで今回は、損益分岐点の算出に欠かせない固定費・変動費の分類方法について解説します。
損益分岐点とは、事業で得た売上と総費用(固定費+変動費)が同額となり利益がゼロになる売上高のことです。損益分岐点を超えてはじめて企業は利益を得られるため、最低ラインの売上目標といえます。
損益分岐点を算出するには、費用を固定費と変動費に分類する必要があります。損益分岐点を算出するには、下記の計算式を使うためです。
限界利益とは、製品やサービスの販売によって得た収入のことで、下記の計算式で算出します。
限界利益率は、売り上げのうち限界利益の割合を指します。
では、固定費と変動費がどのような性質のものなのかをみていきましょう。
固定費とは、営業・販売などの事業活動をしてもしなくても発生する費用のことです。例えば、下記のような費用が固定費に該当します。
・役員給料手当
・人件費
・地代家賃
・水道光熱費
・広告宣伝費
・租税公課
・減価償却費 など
固定費は企業の売上に関係なく、契約を終了するまで定期的に発生します。売上が少ないときの負担が大きい費用ではありますが、発生の頻度や金額が大きく変動しないため予算計画を立てやすいのが特徴です。
出典:中小企業庁「5.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順」
変動費とは、売上の増減に応じて金額が変わる費用のことです。例えば、下記のような費用が変動費に該当します。
・原材料費
・外注費
・運搬費 など
変動費は売上と連動する費用です。そのため、理論上は事業活動がなく売上が発生していなければ変動費も発生しません。
出典:中小企業庁「5.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順」
固定費と変動費を明確に分ける基準はありません。先ほど固定費と変動費の例を紹介しましたが、場合によっては水道光熱費など、通常固定費に分類される費用が変動費になるケースもあるためです。
また、人件費も所定の労働時間に対する給与は固定費に含まれますが、残業代は変動費として扱われます。
このように複雑な部分がある固定費と変動費ですが、一般的には「勘定科目法」または「回帰分析法」のいずれかで分類します。
勘定科目法とは、実務で用いられる分類方法です。水道光熱費や地代家賃は固定費、原材料費や運搬費は変動費のように、勘定科目の性質別に固定費と変動費に分けていきます。
勘定科目のなかには固定費と変動費の両方の性質をもつものもありますが、どちらの要素が多いかで定義します。
勘定科目法は、あらかじめ勘定科目を固定費と変動費に分けてルールに沿って振り分けるだけなので、手間がかからないのがメリットです。
その一方で、固定費と変動費の両方の性質がある費用もルールに沿って分類するため、精度がやや落ちるというデメリットがあります。
回帰分析法とは、売上高(x軸)と総費用(y軸)の散布図から近似直線(y=ax+b)を算出し、固定費と変動比率を導き出すことです。aが変動比率、bが固定費になります。
勘定科目法と比べると手間がかかる方法ですが、精度が高いのがメリットです。なお、散布図はExcelなどの表計算ソフトを使用すると簡単に作成できます。
損益分岐点の増減は、企業の経営に大きな影響を与えます。損益分岐点が高いということは、それだけ多くの費用がかかっているということです。
そのため、損益分岐点が上がれば利益が減ってしまいます。場合によっては赤字になることもあるでしょう。一方、損益分岐点が下がれば同じ売上高でもより多くの利益を得られるため、赤字を回避しやすくなります。
企業がより多くの利益を得るには、損益分岐点を下げる必要があります。損益分岐点の計算方法は、「固定費÷限界利益率」です。つまり、計算式の分子である固定費を下げる、あるいは分母である限界利益率を上げれば損益分岐点が下がります。
どうすれば固定費を下げたり限界利益率を上げたりできるのか、具体的な方法を紹介します。
固定費削減は着手しやすく、効果も出やすい方法です。下記のような項目の見直しを行い、無駄がないかをチェックしてみましょう。
・地代家賃
・水道光熱費
・広告宣伝費
・通信費
・消耗品費 など
例えば、オフィスを移転する、複数拠点を1つに集約するなどすれば、固定費のなかでも比較的割合が大きい地代家賃を削減できます。水道光熱費を節約したり、宣伝方法を見直したりするのも効果的です。
ただし、固定費を下げたいからといって人件費を大幅カットするのは避けたほうが良いでしょう。給料が減ったり、人員を削減しすぎて従業員1人あたりの負担が大きくなったりすれば、モチベーションの低下や離職のリスクが高まります。
固定費の削減について、さらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
「固定費を削減する方法とは|メリットや削減時の注意点を解説」
限界利益率を上げることも、損益分岐点の引き下げに役立ちます。限界利益率の計算式は「売上高-変動費」です。
つまり、限界利益率を上げるには、売上高を増やすか変動費を下げる必要があります。売上高を上げる、あるいは変動費を下げる基本的な方法は下記の通りです。
売上高を増やす方法は企業や業種などによって異なりますが、「商品・サービスの単価を上げる」または「販売量を増やす」などの方法があります。
取り組みやすいのは単価を上げる方法ですが、安易に単価を上げると顧客離れを招くかもしれません。単価を上げても販売数が減れば売上高は増えないため、商品の質を上げるなど顧客が納得できる価値を付加する必要があります。
販売量を増やす方法は、単価アップよりも顧客に受け入れられやすいでしょう。しかし、マーケティング戦略を見直したり、新たな商品を開発したりする必要があり手間がかかります。
また、購入頻度が低い商品や大量購入しない商品の販売量を増やすのは困難なため、自社の商品やサービスに合う方法を考えることが重要です。
変動費を下げることも限界利益率を上げるのに役立ちます。しかし、変動費は売上に比例して増減するものなので、売上高を維持しながら変動費を下げるのは大変です。とはいえ、打ち手がないわけではなく、いくつかの見直しポイントは存在します。
例えば、仕入れ先と価格交渉をしたり仕入れ先を変更したりすれば、原材料費を下げられるかもしれません。商品の梱包方法を変えてコストを下げることもできます。使い切っていない原材料の見直しなど、ロス率に目を向けるのも有効です。
損益分岐点は経営判断に欠かせない指標のひとつであり、正確な数値を把握する必要があります。固定費と変動費は扱いが複雑な場合もありますが、ルールを定めて分類を行い損益分岐点を算出しましょう。
また、企業が利益を上げるには、損益分岐点を下げることも重要です。損益分岐点を下げる方法はいろいろありますが、まずは固定費を下げることから始めてみてはいかがでしょうか。
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