現在、日本各地で見直されている「福利厚生」。様々な企業でバラエティ豊かな福利厚生を充実させる動きが見られています。この福利厚生で入社企業を選ぶ方も少なくないと言われる程、社員にとっても重要なものとなっています。今回は、その福利厚生が従業員満足度にどうつながり、それによってもたらされる社内効果をみていきたいと思います。
まず、福利厚生とは何かを見ていきます。
福利厚生には2種類あり、「法定福利」と呼ばれるものと「法定外福利」と呼ばれるものがあります。「法定福利」は国が法によって定める、実施が義務付けられた福利厚生を指します。ここには健康保険や雇用保険、厚生年金などが含まれます。一方、「法定外福利」に関しては、特に法で実施が義務付けられているわけではなく、使用者が任意で設定する福利厚生となります。例えば住宅手当や社員食堂、交通費の支給やレクリエーション施設の提供などがそれにあたります。この「法定外福利」に現在注目が集まっています。
では、何故福利厚生という制度が設けられているのでしょうか。
福利厚生とは、「全従業員を対象に支払われる非金銭報酬」とされています。つまり、給料や働いた分の賃金とは別に受けられる報酬ということです。これは従業員満足度や生産性を高め、業務が円滑に遂行できるような社内効果を期待して設けられます。そのため、ストレスを溜めないためのリフレッシュを目的としたレクリエーション施設や、休暇制度などが多く存在するわけです。その他にも、より生産性を高めるためのセミナーや資格取得制度なども、多くの企業で取り入れられています。
「福利厚生は従業員満足度や生産性を高め、業務が円滑に遂行できるような社内効果を期待して設けられている」とお話しました。では、何故社員満足度を上げる必要があるのでしょうか。
企業業績を左右する原因として、「ES(従業員満足度)」と「CS(顧客満足度)」があると言われています。「顧客満足度」は、言うまでもなく自社のサービスを使ってくれるお客さんの満足度なので、ここが悪くなることで自社の評判、業績が落ちるのは当然と言えるでしょう。では「従業員満足度」が下がると何が起きるのでしょうか。
まず、従業員満足度が低いことで起きる現象のひとつに「お客様へのサービスの質の低下」が挙げられます。これにより発生するデメリットとして、従業員が自社で働くことに疑問や不満を抱くことで、お客様への対応が悪くなってしまい、結果的に顧客満足度も下がるという不のサイクルに陥ることです。つまり、自社が好きではない人に、自社を好きになってもらえるようなサービスの提供はできないということです。
次に挙げられる現象に、「従業員の離職」があります。せっかく採用コストをかけて雇った人材も、満足度が下がることで別の会社に流れてしまうケースが見受けられます。これは、自社に魅力を感じていないことの露骨な表現と言えるでしょう。人が定着せず従業員が短期スパンで入れ替わることで、従業員のロイヤリティを高めることはできず、結果お客様からの信頼にも影響が出てしまう結果になります。採用難の時代ということもあり、企業としては決して見過ごせない損失となります。
では、こういった事態を避ける為に企業は何をするべきなのでしょうか。その方法のひとつに「福利厚生」があります。上記でご説明した「法定外福利」を設けることで、従業員は「より良い環境を提供してくれている」「会社は私たちのことをきちんと考えてくれている」という感情がわきます。この感情が最終的に企業へのロイヤリティへと繋がっていくのです。このロイヤリティが高い従業員こそ、会社の資産となります。
ロイヤリティが高い社員は、意欲的に業務に取り組むため、上記のようなサービスの質が低下したり離職に繋がるリスクは低くなります。さらに、自ら企業にとってプラスとなるアイディアや取り組みを進めてくれるため、企業としての生産性が非常にあがります。このようなロイヤリティの高い社員が多い企業ほど、企業としての基盤や推進力が強いため、圧倒的なパフォーマンスと高いクオリティを実現できるというわけです。つまり、福利厚生を整えることでロイヤリティの高い社員を生み出せる場を創出できるため、結果として企業にプラスになっていく、という側面があります。
また、従業員満足度を高めるためにもうひとつ必要な要素として、「働きやすさ」が挙げられるでしょう。この「働きやすさ」とは、従業員が業務にあたる際のやりやすさはもちろん、「長期的に働くことのできる環境かどうか」も大きく関わってきます。優秀な社員やロイヤリティが高い社員は自社にとってとても価値のある存在ですが、そういった社員が働きすぎで倒れてしまったり働くことができない状態に陥ることを想定し、未然にリスクヘッジしておく必要もあります。ストレス発散の場や、しっかり休養を取れるシステムが存在することで、心身を気遣いながらしっかりパフォーマンスを出せる状況を作りだすことも、福利厚生の大きな社内効果のひとつと言えます。
最後に、各企業で採用されているユニークな福利厚生をご紹介致します。
「ライズ休暇」
株式会社ギャプライズで生み出された、一風変わった休暇制度です。なんと、同僚や同じ社内の人間を「驚かせたい」と思ったときに、その準備期間として休暇を取れるというもの。同僚の昇進祝いをしたい、落ち込んでるから元気付けてあげたい、そんな相手を驚かせる為に休みを使う、そんな心温かな従業員が集まる同社はとても魅力的ですね。これにより、社内の結束力は一層高まるでしょう。
「LOVE休暇」
こちらは従業員満足度などを研究する株式会社ツナグ・ソリューションズが設けている、大切な人のお祝いをするための休暇制度です。支えてくれる奥さんやお子さん、恋人やご両親などの誕生日に休暇を取れ、更には会社からお祝い金まで出るという至れり尽くせりな同制度。普段は伝えられない感謝を伝える場を用意するという、「周りの人を喜ばせる」「周りに注意を向ける」「遊びを取り入れる」というワークスタイルを提唱する同社らしい制度ですね。
「ネイル手当て」
ユニークな福利厚生が並ぶ中でも、際立って珍しいのがこちらのフロンティア株式会社で採用されている「ネイル手当て」。なんと、会社で提携しているネイリストに無料でお手入れをしてもらえる、まさに女子大喜びの同制度。同制度が採用された背景には、社内の女性比率が50%以上という同社の特徴が色濃く反映されたものであるそう。現代の時代に即した制度でもありますね。
「鑑賞費補助制度」
こちらは映像制作を手がける株式会社オムニバスジャパンならではの制度で、映画や美術展などの鑑賞にかかる費用を補助してくれるというもの。クリエイターたるもの、様々なアートに触れる必要があるため、その費用を補助してくれるというのは嬉しいものですね。映画好きや美術館によく行く方は要チェック。
「福利厚生」は必ずしもなければならないものではありません。しかし、企業の発展や社員への還元、継続したパフォーマンスの発揮にはとても効果を発揮します。会社にとって負担となる部分も、「投資」と考えることで意味のあるものに変わるかもしれません。社員のモチベーションを変えたい、従業員満足度を高めたいなどを検討している企業は是非1度福利厚生を見直してみるといいかもしれません。