2016年9月、日本中を震撼させるニュースが報じられました。日本人に40年もの間愛されてきた人気マンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」がついに週刊少年ジャンプでの連載を終了するというものです。40年もの間一度の休載もなく、その読者は小学生から今では50,60代にまで幅広いものとなっています。
そこでここでは多種多様なビジネスを展開してきた、両津勘吉に今の時代だからこそ必要であるビジネス論を学んでみたいと思います。
こち亀の代表的なレギュラーキャラといえば主人公の両さんこと両津勘吉、そして、後輩の中川や麗子、上司に当たる大原部長です。中川、麗子は共に世界的な規模を誇る財閥の生まれであり、庶民とはかけ離れた生活をしているはずのお金持ちキャラでもあります。そんな二人がなぜ派出所勤務をしているかはおいておくとして、そういったお金持ちとの人脈があることが、両さんにとっての非常に大きな強みとなっています。庶民では思いもつかないようなビジネスの発想は彼らの生活や言動から生まれてきたこともありますし、中川に至っては両さんがビジネスを展開する時に出資をしてくれることもよくあります。
こういったパトロンがいる強みを両さんは最大限に活かしているといえるでしょう。
その他にもこち亀の単行本に出てきたキャラクターを網羅すると、約800人にもなるといいます。皆両さんとのつながりを持っており、両さんの顔の広さ、交友関係の広さが如実に現れているといえます。ビジネスを興すのならば金持ちの発想や言動を見て学び、また、親しい関係を築いておく、さらに仕事をする際に頼ることができる人間関係を広げておく両さんからはそんな教訓が浮かび上がってきそうですね。
両さんというとあまりお行儀が良いキャラではなく、時には暴力に訴えたり、暴言を吐いたり、お偉いさんにも面と向かって反抗するといったシーンもあり、権力に対しては(警官という立場ですが)屈しない人間である、そんな印象を持つ人もいるのではないでしょうか。
しかし、そんな彼が唯一頭の上がらない人間が直属の上司である大原部長です。両さんも部長に対してはほぼ敬語で話しており、会話の中では一人称も丁寧に「私」という表現を使っています。それは、二人の信頼関係の表れであり、両さんも部長本人に面と向かって言うことはないですが、部長を尊敬しているという態度を見せることはよくあります。
ここから見てわかるのは、自分にとって常に目標となる尊敬できる人間を持つこと、そしてその人間から学ぶこと、いつでも礼儀を忘れないことです。部長も両さんに説教することは日常茶飯事でいつも「両津はどこだ!」「全くけしからんやつだ!」と怒っているように思えますが、彼が問題を起こした時に必ずかばってくれるのも部長です。また部長というストッパー役がいるからこそ、破天荒な両さんが警官を続けていられるともいえます。自分が道を誤りそうな時に、軌道修正をしてくれる人間はビジネスの上でとても大切です。
両さんといえばまずその行動力、思ったことをすぐ実行しビジネスや金儲けにしてしまう発想力がずば抜けていると感じる人も多いのではないでしょうか。毎週20ページで起承転結とオチをつけなければいけないので話の展開が早い、という都合はひとまずおいておくとして、お金の臭いを感じ取る嗅覚と、幅広い対象への関心、そして行動力。これはビジネスマンにとってもたいへん役立つ能力を言えるでしょう。
大抵の場合は商売が軌道に乗ったところで調子に乗って、そのせいで借金を抱える、また予想外の展開のせいで急にダメになるなど、基本的には一話完結のギャグ漫画なので、そのような展開になりますが、両さんの先見性はプロゲーマーの登場まで見抜いていたと話題になるほど、そのビジネス感覚は優れているのです。(実際には作者の秋本治先生の先見性ですね)
また、毎週のように莫大な借金を抱えていても、翌週には全くめげないで新しいビジネスを始めている強さ、まあ、中川からの借金を踏み倒しているだけかもしれませんが、この不屈さ、諦めの悪さもビジネスを成功させるには不可欠なものでしょう。とにかく貪欲で、興味を持ったら勉強熱心、そして諦めが悪い。最後に成功するのはこんな人なのかもしれませんね。
両さんの行動の特徴としてもう一つ挙げられるのは、その金遣いの荒さです。時々歳の割に貯金もろくにないことを部長に心配されて、貯金させられることもありますが、まずその状態は持ちません。宵越しの銭は持たないとばかりに仲間を呼んでどんちゃん騒ぎをしたり、趣味の物にお金を使ったり、ビジネスに投資をしてすっからかんになったりと金を貯めることに興味は有りません。先の項目でお金に対する嗅覚が敏感であり、非常に貪欲とも書きましたが、つまり、両さんはお金を儲けて使うことに興味や意欲が旺盛なのであり、決して貯金を増やして貯めこむことが趣味なのではないのです。漫画でも事業が成功すると過ぎに調子に乗って、他の人間にも利益をばらまくようなシーンも見られます。
この感覚はビジネスにおいても非常に重要であり、利益をそのまま貯めこむだけでは事業の拡大には繋がりません。上を目指していくのならば発生した利益を元に更に新しい事業に取り組まなくてはいけないでしょう。また、ビジネスを興すには周囲を巻き込む力も必要です。両さんは決してけちな人間ではなく、彼の周囲にいれば儲け話がどんどん発生してきます。他人のためにお金をつかうことを惜しまないからこそ人脈も築けるのであり、ビジネスを起こすことができるともいえます。
実際はあくまでも漫画の話であり、特にギャグ漫画ですからこのように行動すれば両さんのようになれる!というわけではありません。しかし、彼の生き方やあり方には憧れる人も多く、またその姿勢にはビジネスのヒントがたくさん詰まっているのも確かです。仕事で行き詰まった時にちょっと息抜きにこち亀を読んでみたら、意外と仕事のヒントが見つかるかもしれません。