日本国内のオフィスと言うと、多くの方が「白を基本とした均質的な配色」「シンプルに並べられたデスク」「煌々と照らしている照明」といったイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、日本も含め世界各国のオフィス事情を見てみると、どうもこのイメージからは大きく異なる個性的なインテリアが多くなっているようなのです。そんな様々なオフィスの活用事例の中から、今回は「照明」に文字通りスポットライトを当てていきます。
今やスマホを使ったコミュニケーションアプリに欠かせない存在となった「LINE」。その運営会社であるLINE株式会社は2012年10月に、オフィスを渋谷ヒカリエへ移転させました。写真で紹介しているのはカフェエリアですが、他のスペースなども同様に、スポット照明などを多用していて蛍光灯のように煌々とした明るさを使用していないのが特徴的です。この「明るすぎない照明」というのには、大きく2つの効果があるとされています。
1つ目は「見た目の印象」です。カフェやディナーを楽しむレストランというのは、非常に落ち着いたイメージを感じますよね。その見た目のオシャレさとゆったりとした雰囲気のおかげで、こうした場所では想像以上にリラックスした時間を過ごすことができます。オフィスでもそうした空間があることで、疲れた時のリフレッシュや気分転換ができます。
2つ目は「仕事の効率化」です。PC作業や手元の資料を読む時には、なるべくオフィスの照明は明るい方がいいと思いがちです。しかし最近では、オフィスの照明の明るさを全体的に落とす方に考えが進んでいるらしいのです。その肝心な理由が、PC作業による目の疲れと言われています。また、日本では日常的な残業が多く、職場にいる時間が非常に長くなりがちです。そのため、長時間滞在する職場の快適性をアップさせる意味合いでも、暗めの照明が使用されるようになっています。
ちなみに、日本は海外と比較しても職場の照明が明るいとも言われています。近年起きたニーズの変化にマッチしたのが、LINE株式会社のような照明の使い方なのかもしれません。
紫、緑、青といった非常に多彩な色をしているのが印象に残るこの写真。この写真は、なんとイギリスの歴史ある公共放送局であるBBC(英国放送協会)のオフィスなのです。デザイン性にあふれる円形のソファや、デパートのように吹き抜けとなっているオフィスの構造に目がいきます。そして照明についてですが、冒頭にも書いたカラフルなオフィスの配色を際立たせるような白色光を使用しています。画像では見えにくくなっていますが、オフィスカラーと同じ配色の照明も一部で使用されています。
BBCと言えば、ニュース放送だけでなく数々の名ドラマを世に送り出していることでも有名です。歴史の深い伝統もある企業でありながら、常に新しいことにチャレンジしていく。そんな企業イメージを表現しているようなカラフルなオフィスを、シンプルな白色光の照明が後押ししています。また、インテリアに非常に派手な演出を施しているのに対して、フロア内の作業スペースはそれほど奇抜な印象がありません。企業のイメージを全面に押し出した内装の一方で、職場内の仕事のしやすさも損なわないようにするという2つの側面をクリアしているのが、この白色光なのかもしれません。
また、吹き抜けのようになっているオフィスの上層階からは、自然光をそのまま取り入れられるような作りになっています。普段ずっとオフィスの中に閉じこもって仕事をする人にとって、日の光というのはかなり貴重な存在です。ここまで大規模なものではなくても、職場にうまく光を取り込むような仕組みを作っておくのは重要なことでしょう。
写真で紹介しているのは、上海にある「Ribo Fashion Group」という企業のオフィスの1フロアです。写真を一目見てわかるように、白一色を強調したようなデスクやチェア、そして壁面が特徴的です。そして照明もそんな空間を煌々と照らすような明るい白色光を使用していて、非常に近未来的でクールな印象を醸し出しています。最初に紹介したカフェ風の落ち着いた印象のある照明の活用とは、まさに真逆とも言えるオフィス事例と言えます。そして、仕事で期待できる効果も同様に真逆です。
カフェ風の落ち着いたスポット照明を多用したオフィスは、落ち着いた仕事空間の演出や、ちょっとした息抜きでリラックスできる空間を作るのが主たる目的でした。それに対してこのオフィスはと言えば、一歩中に入った瞬間から空気がピリッとするような、緊張感のあるオフィスです。例えば重要な会議や打ち合わせをするといった時、あるいはこれから仕事が始まるぞと仕事モードに気持ちをスイッチさせるには、ピッタリな演出かもしれません。
オフィス全体をこうした近未来的空間にするのもアリですが、例えば会議室の1フロアをこのような白一色の空間にし、スポット照明を使用したエリアを同時に作ることも良いでしょう。そうすることで、同じ職場内でありながら、アイディアを煮詰めたい時、あるいは気持ちをリラックスさせたい時といった仕事のオンオフをうまく切り替えられる空間を作ることができます。
“具体的な3つの企業の事例を見ましたが、いかがでしょうか。働きやすいオフィス作りには、もちろんオフィスの配色や使用するインテリア、それらの配置といった要素が大きく関係します。しかしそれらの要素と同様に重要視すべきなのが、オフィスの照明なのです。同じ明るさ、色の照明を使ったとしても、オフィスインテリアとの組み合わせ次第ではまるで印象が変わります。仕事に集中できるようにしたい、あるいはリラックスして多彩なアイディアを引き出せるようにしたいなど、その要望次第で照明の使い方も変わってきます。
今回ご紹介した事例を参考に、ぜひ職場の雰囲気をより良くするための照明の活用法を模索してみてください。