企業が抱える問題はさまざまです。しかし、どの企業も共通で抱える問題が離職率と社内問題です。多くのメディアで取り上げられる「ブラック企業」、「パワーハラスメント」など企業にとってマイナスなイメージを抱く言葉のほとんどが、従業員のモチベーションに関わっていると考えられます。また、就活生がそのまま企業のイメージを持ってしまうことも事実であり、結果として優秀な人材を逃してしまっているかもしれません。では、モチベーションを維持、向上していくためには、企業はどのような取り組みを行えばいいのでしょうか。
モチベーションは人それぞれ維持、向上の仕方が異なります。そのため、漠然と従業員のモチベーションを上げることは難しい問題です。
厚生労働省が行った『平成27年雇用動向調査結果の概況』によれば、平成27年の1年間で転職した人の前職を退職した理由は、出向や定年などの理由を除くと、男性の場合は給料などの収入面、女性の場合は労働時間や休日などの労働条件の面が高い割合を占めていました。このような代表的な離職理由を考えると「労働条件」、「人間関係」、「収入」など、従業員の理想と社内環境の不一致が大きな理由となります。つまり、従業員のモチベーションの維持、向上は社内環境と大きく関わっていることがわかります。
社内環境と一言で言っても、業種や職種などによって、従業員が求める企業像は異なります。就活を行っているときは、働く自分を想像しながら「仕事にやりがいを抱きたい」、「労働条件を重視したい」、「給料が高い」など重視する項目もさまざまです。
私は就職活動中、「人と関わる仕事」という漠然としたイメージで企業面接を行っていました。その中で出会ったのが営業職でした。顧客営業ではなく、自ら率先して新規開拓していくタイプの営業職は、「人と関わる仕事」以上に数字とノルマとの戦いが大きく、人と関わる時間よりもPCと向き合い数字を伸ばすことを考えるために時間を費やしていました。私は、そこで自分の理想と企業の現実とでギャップを抱いてしまったのです。結果として、私は寿退社という形で企業を辞めましたが、勤めている間は何度か「仕事を辞めたい」と考えることがありました。今考えると自分のモチベーションが下がったときに考えていたと思います。
「石の上にも3年」という言葉があるように3年間辛抱することで報われるときがくるなどの由来から、「3年は勤めてみないとわからない」、「3年は続けなさい」という言葉を社会ではよく耳にします。確かに長く続けることで成果があらわれることや自信に変わることもあると思います。マイナビフレッシャーズが平成26年に社会人500人を対象にインターネット上で行ったアンケートでは、「入社3年は辞めないで続けろ」という意見に40.5%が「その通りだと思う」と答えています。では、ひとつの企業に長く務めるためのモチベーションとはなんでしょうか。
モチベーションとは、簡単に言えば「やる気」です。企業の中で仕事に対するやる気を維持できる要素が必要です。基本的なやる気は、「働く義務」、「お金」、「出世欲」、「従順さ」などから生まれていると考えられます。例えば、企業の中でマイナス要素を見つけても、これらがあることでモチベーションを維持することができるかもしれません。
私自身が営業として働いていたときは、営業職に対するイメージと現実のギャップをマイナス要素と考えていました。それ以外の、労働条件などに対する不満が強くなかったため、このマイナス要素だけがネックでした。そんな私の仕事に対するモチベーションは、人間関係でした。ノルマや数字を追うことへの負担は常にありましたが、逆に結果を出すことで認められ、評価されることにモチベーションを持つことができたのです。就活時は、「人と関わる営業」が理想でしたが、企業で務めているうちに「自分への評価」、「必要とされること」に重きを置けるようになりました。仕事に対するモチベーションが下がり、モチベーションを上げることができなくても、仕事を続けるだけのプラス要素を見つけることができたら離職にはつながらないと思います。
従業員のモチベーションを維持、向上させるために企業にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。
「社内環境の見直し」と一言で片づけても、給料を急激にあげることやひとりひとりの従業員のモチベーションを管理することは難しい問題です。
あるマネジメント記事では、従業員のモチベーションを上げるためには、『「他者からのフィードバック」、「目標設定」、「報酬」という3つの主な手段がある。』としています。
「他者からのフィードバック」では、ポジティブなものは従業員の意欲を高め、ネガティブなものでは明確な指摘によって従業員を感化させることにつながると考えられます。しかし、個人の性格や受け止め方に差が生じることも多く、逆効果になる場合もあります。
次の「目標設定」では、仕事にやりがいを持てない場合などに身近な目標を設定することで、前進や達成を実感させることにつながります。毎日繰り返し仕事をしている中で、身近な目標や小さなゴールを決めることは充実感や達成感を生み出すことになります。企業側からそのような提案を受けることができたら、従業員もモチベーションを持ちやすい環境に変わると考えます。
モチベーションの低下は、他でもない自分自身がもっとも感じるものです。そのためモチベーションの低下に危機感を持つのも自分自身です。では、従業員側はどのようにモチベーションを上げていけばいいのでしょうか。
まずは、気持ちを楽に持つ必要があります。「仕事がつらい」と感じることで焦る気持ちが増し、悪循環に陥ることがあります。そのため、自分自身のオン・オフの切り替え方、ストレスやガスの抜き方をしっかり自覚することが大切です。その上で「働く意味」を改めて考えることができます。誰かのために仕事をすること、自信を持ちなおすこと、やりがいを見つけ直すことなど改めて「働く意味」を探します。
「働く意味」がわからなくなったら、思い切って仕事を休むことも一つの選択肢です。そして、「働く意味」がなくなったら辞めどきと開き直り、気持ちを軽くすることもひとつの手段です。モチベーションを維持し続けることも大事ですが、自分自身が納得できる仕事を行えることが一番のモチベーションではないでしょうか。
仕事のモチベーションを維持、向上させることは簡単なことではありません。企業が従業員ひとりひとりのモチベーションを管理することも難しいものです。しかし、企業も人とのつながりや関係で成り立っています。企業側から従業員に明確な目標やゴールを与える環境を提供することが大切です。また、人間関係を客観的に見直す機会を設けることで、社内環境の改善にもつながっていきます。
そして、従業員自身が受け身になるのではなく、企業の中での自分の立ち位置や必要性など「働く意味」を考えることで、納得できる仕事を頑張りすぎずに楽しむことができればモチベーションは維持、向上していくでしょう。