企業がより効率的に利益を求めるために、今いるオフィスから別の場所に移転する、というのはよくある話です。しかし、周りの関係者に行き先も告げず移転してしまうことはマナー違反となります。これまでお世話になった隣室の別企業やテナントのオーナー、そして取引先にきちんと移転の挨拶をするのを忘れないようにしたいものです。最悪の場合「マナーがなってない」という評判が広がり、今後の活動にも影響を与える事でしょう。「立つ鳥跡を濁さず」という諺がありますが、移転の挨拶にはどのようなマナーがあるのか、見ていきましょう。
オフィスが事務所の移転を公表するのには様々な意味があります。対外的には「さらなる利益を目指すため」など、移転の理由を知ってもらい、企業の好感度を上げるアピールの機会となります。そして対内的(社内業務的)には、早めに移転先の住所や電話番号を知らせる事により、取引先の企業に自社の情報を新しく書き換えてもらえます。その結果移転後も発注書や請求書の発行など、スムーズな事務的業務の遂行が可能になる、という意味合いがあります。
事務所移転が決まった時には、お世話になっている仕事上の取引先にできるだけ早い段階でその旨を伝達するのが基本となります。移転の最中は引っ越し作業などで忙しく、疎かになってしまう可能性もあるので、その前に挨拶を済ませておくのが賢いやり方です。
そして移転元がオフィスビルだった場合、同じテナント内にいる企業に関しては、書類上で伝えるだけでなく、直接菓子折りなどを持って挨拶に出向くことで相手側にも好印象を持たれます。これは、移転元のビル内の企業だけでなく、移転先でも同様です。引っ越しの際のエレベーター使用、原状回復の工事の騒音などで他の従業員に迷惑をかけるかもしれないからです。
事務所を移転する際、特に取引先やお客様に対してお知らせを行う時は、案内状を送るのが基本です。以下、諸々の事項について確認していきましょう。
・移転の案内状を送る時期
遅くても、移転日の1か月以内に案内状を送るのがマナーとなります。ただし、移転先の電話番号や住所など、案内状に載せるべき情報の全てが確定していない場合もあります。その場合は移転日の2週間前、遅くとも1週間前までを目途に送るのがベターです。
・移転の案内状を送る対象と、その用意で注意すべきポイント
基本的にはお世話になっている取引先やお客様の全てに案内状を送る必要があります。そして対象となる所が多いと、送信先の宛名やメールアドレスといったリストもその分必要となってきます。特に営業を行っている従業員などはそれぞれにおいて取引先も違ってくるので、全員の協力が欠かせないものとなります。必ずしもリストがスムーズに集まるとは限らないので、あらかじめ期限をきっちり設けて全従業員の協力をあおぎましょう。そして集まった取引先やお客様の全リストは、一つ一つ確実にチェックする必要があります。送付漏れになる場合もあるので、十分注意しながらチェック作業をしていきましょう。
移転時の挨拶にはまだ数点のポイントがあります。以下に検証していきましょう。
・案内状に記載すべき事項
移転理由を始めとして、移転の日付、移転先の住所、電話番号やメールアドレスを記載するのが基本となります。移転に明確な戦略的目標がある場合は、そのメッセージも添える方がアピールになりますし好印象を持ってもらえます。その結果、今後の取引も順調に進む可能性が高くなります。
・案内状を送る形式
基本的には、ハガキなどの形で、郵送で送るのがベストと言えます。ただしそれだけで済ませるのではなく、取引先に後日、メールや電話にて移転のお知らせを改めて告知した方が丁寧であり、印象も良くなります。
・移転祝いの返礼の仕方
事務所の移転が終了した際、取引先やお客様から移転祝いが届くことがあります。その時は返礼の意志を伝えるのがマナーとなりますが、方法を見ていきましょう。
まず、移転祝いをもらってから1か月以内に返礼するようにしましょう。仮に遅れた場合でも、礼を失した旨を伝えれば問題ありません。返礼は、メールではなく書面で感謝の意志を伝え、移転祝いの半額から3分の1くらいの金額の記念品を添えるのがベストです。記念品に関しては、菓子折りやタオル、グラスといったものが定番ですが、商品を自由に選べるカタログギフトなども人気です。
移転を知らせる方法には、書面で伝える他にメールという手段もあります。特に添付ファイルとして新社屋の案内図を添えれば丁寧な印象を与える事でしょう。メールにはHTML方式とテキスト方式の2種類がありますが、HTMLだと文字化けする可能性もあるので、ビジネスシーンにおいてはテキスト方式で送信するのが主流です。
メールで移転のお知らせを作成する際には、ある程度決まった文面というものが存在します。取引先やお客様との良好な関係を維持するためには大切であり、ビジネスマナーの一環にもなるので、ある程度遵守しましょう。文面はインターネットなどに範例が記載されていることもあるので、それをそのままコピー、ペーストして使用するのもひとつの手です。
そしてメール送信時にも大事なポイントがあります。一斉送信によって移転の情報を知らせる場合には、どうしても数件送信ミスが起こる可能性が高いです。送信ミスが起こったメールアドレスをよくチェックし、場合によっては取引先やお客様に今一度メールアドレスを聞き直すといった事も必要になってきます。たとえ数件でも、移転のお知らせが行き届かないことはマナー違反となりますので、一斉送信後のチェックは欠かさずに行いましょう。
以上見てきたように、企業はその場所を移転する際、各方面にきちんと移転の挨拶をすることが大切です。取引先の関係者はもちろん、近隣の人達にもきちんと挨拶をすませることで、企業の評判を上げる事もできるでしょう。そして、移転のお知らせをする案内状、メールにも一定のルール、マナーがある事も心に留めておくことが大切です。