企業が営利活動を行う時、その1つの手段として取り入れられるのが「オフィスの移転」です。移転することにより、従業員の新たなモチベーションアップにつながるほか、それまで営業の対象となっていなかったエリアを新たに開拓できる可能性もあります。今回は、都市部へのオフィス移転の際の注意点を、メリット、デメリットと言った角度から検証、さらに今流行りの新たなオフィス移転の形も紹介していきます。
最初に、主に大都市圏へオフィスを移転させることにはどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
1つ目のメリットは、業務を集約できるという点です。仮に、地方などに拠点がいくつかあった場合でも、その機能を大都市圏に一極集中させることで管理しやすくなり、コストダウンにつながります。さらに、これまで各拠点に散らばっていた従業員同士の仕事上におけるコミュニケーションもより円滑となり、生産性が上がります。
2つ目のメリットは、雇用確保の観点です。たくさん拠点がある場合、配属先が未定の時は自分がどこに配属されるのか、従業員や新入社員にとって大きな不安要素にもなり得ます。最悪の場合退社や入社辞退などというケースに発展する場合もありますが、大都市圏という地理的にも分かりやすいロケーションであればそのようなことも起こりにくくなり、求人も集まりやすくなります。
3つ目のメリットは、取引先に好印象を与える、ということです。都心の一等地にオフィスを移転しその住所を周知させると、自然とブランド力や社会的信用が高まります。これは、相手側にとって安心して取引がしやすくなる要素ともいえ、場合によっては好条件の契約を獲得できるかもしれません。
4つ目のメリットは、交通費の経費削減です。地方の場合、電車を軸にバスや地下鉄などを併用して、ようやくオフィスにたどり着けるといった事態もありえます。さらに場合によっては車を利用せねばならず、従業員にとっては不便な通勤となってしまい、企業側としても交通費(車のガソリン代など)といった部分で経費がかさんでしまいます。しかし都心部は交通網が発達しており、電車1本で通勤できるケースも多く、その結果企業が支払うべき交通費も削減できるのです。
5つ目のメリットは、自然災害への備えが万全になり得る、という点が挙げられます。2011年に発生した東日本大震災により、日本では地震など災害へのリスク管理が大幅に見直されてきました。特に首都圏においては直下型地震にも対応可能な、耐震性の高い建物が続々と建設されています。万が一の災害時にも被害を最小限に食い止めることは、それまで行ってきた業務が強制中断されることなくある程度の継続を可能とし、そして何といってもそこで働く従業員の安全を確保することにもつながります。
オフィスを都市部へ移転させる際には、メリットの他にデメリットも想定しなければなりません。以下で検証していきましょう。
まず、何と言っても都市部では人口密集地域が多く、物件を見つけにくいという事情があります。やっと見つけたとしても、都市部は平均的に地価が高いので、場合によっては経営を圧迫してしまうほどの費用が掛かってしまうこともあります。物件は慎重に検討するようにしましょう。
次に、オフィス内のレイアウトの問題があります。地方から都市部へオフィスを移転させようと考えた場合、それまでにいたオフィスは地方ゆえに比較的広い面積を有していて、余裕を持ってレイアウトを組めたかもしれません。しかし都市部は建物が多く、内部にもたくさんの企業が入居しているので、当然のことながら1企業当たりの部屋内の面積も限られてきます。地方にいた時と同じ感覚でレイアウトを組むと、思わぬ作業上の不都合が生じるということもあり得ます。従業員の数によっては1部屋で収まりきらない場合もあるので、移転前とほぼ変わりないレイアウトを組みたいと考えるならば、2部屋借りる、またはスペースをうまく作り出すなど何らかの工夫が必要となってきます。
都市部へのオフィス移転は一見メリットが多そうですが、以上のようなデメリットも考慮に入れなければなりません。「開発が始まったばかり！」とか「話題性バツグンの、都心部に完成したビル！」といった文言は魅力的ですが、そうした目先の物件に踊らされず、本当に企業の業績アップにつなげられる物件なのかを冷静かつ慎重に判断するようにしましょう。
オフィス移転を検討する際首都圏や関西圏のような、日本経済が集中しているような都市部に移転させるのが必ずしもベストな答えとは限りません。近年では、そうした都心部から少しだけ離れた場所、いわゆる「ちょいコア」なエリアへの移転も現在のトレンドとなっています。
「ちょいコアな都市」へのオフィス移転は、2つのメリットが考えられます。まず、大都市圏に近いので、仕事上それなりの集積があるという点が挙げられます。そして都市中心部とは違った快適なオフィス環境を望めるという点があります。
もう少し具体的に見ていきましょう。「ちょいコアな都市」の最大の利点は、従業員にとって朝の通勤ラッシュを避けやすい、ということがあります。さらに、土地を比較的広めに確保できるのでスペースを有効活用できるオフィスが作りやすいことも挙げられます。生まれたスペースによって、単純な仕事場だけでなく、休憩所やスポーツジム、カフェテリアなどもつくることができ、通勤時の負担軽減とも相まって従業員のストレス解消、生産性の向上にもつながるのです。
さらに「ちょいコアな都市」の利点は、郊外とはいえ比較的短時間で電車などの交通手段によって都市部に出られる範囲である、ということです。営業マンにとってやはり都市部は大きなビジネスチャンスとなります。すぐに向かえる距離であれば営業も効率的に行うことができます。
いかがでしたか。都市部へオフィスを移転させるということには様々なメリット、デメリット(注意点)があります。企業にとっては交通費を始めとした経費の部分や、自然災害に対するリスクの軽減という点。従業員にとっては通勤しやすいか、そして異動、転勤への不安といった観点から重要になってくる都市部へのオフィス移転という点。それらをよく検証したうえで、利益追求、生産性の向上という目的に合致するような移転を目指しましょう。
