企業が新たな利益追求の展開をするときに、オフィスを移転させることも重要な一要素となります。しかしながら、単純に物件の内容が業務に都合が良いからと言って即座に移転を決めたとしても、後々それが不利益となる可能性があります。オフィス周辺の環境も考慮に入れなければならないからですが、今回はその理由について様々な角度から検証していきます。
企業がオフィスを移転させるのは、単に利益追求だけを目的としているわけではありません。そこには様々な要因が絡んできます。都心であれば、その住所だけでも大きなブランド力があります。ビジネス街の中心地という周辺環境の印象を取引先企業に与え、交渉も様々な面で有利になると言えるでしょう。そして郊外であっても、業種内容(自然環境に従事した事業など)によってはプラスの評価になる場合もあります。自然環境に恵まれた、開放感のあるオフィスという印象を持たれるかもしれません。
従業員にとっても、オフィスの周辺環境は仕事の上でプラスにもマイナスにも大きな影響をもたらす可能性があります。
「環境心理学」という学問をご存じでしょうか。環境の変化が人間に与える影響を様々な視点から研究する、心理学の一分野となっています。こうして学問として確立しているように、環境は人間にとって大切なものなのです。「毎日の満員電車での通勤が辛い」「空気が汚く感じる」周辺環境と「自然にあふれて伸び伸びとしている」「開放感あるオフィスである」周辺環境とでは、仕事へのモチベーションという点において断然違ってきます。
以上のように、オフィスの物件選びに周辺環境は大きな影響をもたらします。企業、そして従業員という観点からどのような要因が必要なのか、さらに深く検証していきましょう。
企業の観点から、オフィス移転における周辺環境の良さはどのような影響をもたらすのか、もう少し具体的に見ていきましょう。
まず、金融機関(特にメインの取引銀行)や郵便局、役所が近くにあると便利という事情があります。これは特に総務部門にとって重要な事項であり、各種手続きにおいて書類を提出しなければならない時、そして経理関係でお金を扱わなければならないケースの時に、こうした施設が近くにあればスムーズに仕事を遂行することができます。
次に、取引先の企業が多くある周辺環境も利便性が高いと言えるでしょう。当然ながら、営業マンなどが頻繁に通うことが可能となり、取引も順調に進む可能性があるからです。
少し違った視点では、近くに大学や専門学校が多くある環境も企業にとって有利と言えます。アルバイトを採用する時に人材を確保しやすかったり、就職活動の時期において、そういった学校が近くにあればより多くの学生を取り込め、優秀な人材を獲得できる可能性が高まるのです。
他にも、特定の業種において周辺環境が重要な場合もあります。IT関連の企業であれば、近くに家電量販店があれば仕事のしやすい最新型のパソコンが購入しやすくなりますし、音楽を取り扱う業界であれば、近くにレコード店やレンタルビデオ店があると仕事上の参考にしやすくなります。
オフィス移転における周辺環境の重要性は、従業員にとって快適な毎日を送れるかどうかの分かれ目となります。具体的にどういった要素があるのか見ていきましょう。
まずは交通網が発達しているかどうかです。バスや電車を何度も乗り継がなければならない環境では、朝のラッシュなども重なってオフィスに到達する前に疲れてしまいますし、企業側から言えば支払うべき交通費の負担も大きくなってしまいます。どの場所からでも、比較的数少ない乗り換えで来ることができるような(そして朝のラッシュを避けられるような)、交通網の発達した周辺環境を確保したいところです。
次に、従業員にとって重要な要素として考えられるのが、いわゆる「アフターファイブ」を充実したものにできるかという点です。会社帰りに買い物をしたり、同僚とお酒を飲みに行ったりすることは、ストレス解消の一環ともなります。そんな時に、近くにデパートや居酒屋が無かったとしたらどうでしょう。毎日が家と職場の往復となり、ストレスもたまっていく一方になってしまいます。その結果生産性の低下にもつながりかねないので、オフィスの周辺に繁華街など賑やかなエリアがあるかどうかはあらかじめチェックしておくようにしましょう。
先ほど挙げた要因にも関係してきますが、近くにコンビニやファミレスがあるかも重要なポイントとなります。諸事情で自炊できない人にとっては、ランチタイムは死活問題にもなり得ます。気軽に外へ食べに行けるような周辺環境があればベストと言えるでしょう。
また、特に営業マンにとって重要な要素となるのが、周辺の交通事情です。会社を出てすぐの通り等において交通量が多いと渋滞が発生する可能性も高く、車で営業に行く営業マンにとっては取引先への到着が遅れてしまうかもしれません。そうした思わぬ障害を避けるためにも、なるべく混雑の起こりにくい通りの近くの物件を選ぶなど、道路事情は考慮に入れておきましょう。
最後に、オフィス周辺の街の雰囲気も重要となってきます。繁華街の近くのロケーションを選ぶことは従業員がアフターファイブの充実を図りやすくなりますが、同時に「治安」の問題も存在します。繁華街は多くの人が集まるので、特に夜になると犯罪の発生する確率も高まります。夜遅くまで残業し、その後お酒でも飲もうと繁華街に繰り出したは良いものの、事件に巻き込まれてしまった……。そんな取り返しのつかない事態に陥るリスクもあるので、繁華街からは近からず遠からずの場所にオフィスを構えるのが良いでしょう。
以上見てきたように、周辺環境を精査することは、企業にとって仕事面で数々のアドバンテージを獲得できるほか、従業員にも利便性といった面で大きな利益をもたらすことにつながります。必ずしもいいことづくめ、とは限りませんが、業務内容の都合とも合わせ、最適と思える物件を探すようにしましょう。