オフィスレイアウトにはいくつかの基本的な形がありますが、オフィス全体を間仕切りのないオープンスペースに作っていくという方法もあります。そこで業務を行う場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?ここではオフィスレイアウトの中でもオープンレイアウトに焦点を当てて、詳しくその実態について考えていきます。
オープンオフィスの最大のメリットはコスト削減ができる、という点です。なぜコスト削減ができるのかというと、小スペース、またはワンフロアにたくさんの従業員が働ける環境を作ることができ、家賃を抑えられるからです。
また、オープンオフィスには壁がないためパーテーションやキャビネットなどを利用して区切りを作ることになります。それによって開放感のあるオフィスができあがります。
数年前から外資系やIT企業などがフリーアドレス制を導入しはじめたことにより日本でもこれを導入する会社が増えてきました。従来の社員ひとりひとりに固定席を設けるのとは違い、日中席を外している営業職などが多いオフィスにおいて、スペースの無駄も解消しコストも削減できるというわけです。フリーアドレスをはじめとし、間仕切りのないオープンなスペースで仕事をすることにより、社員同士のコミュニケーションが活性化し新たな価値や創造性が生まれるという点でも、オープンオフィスは新しい可能性を秘めているとして注目され続けています。
オープンオフィスは会社的にはコスト削減が実現できますが、そこで働く人々にとってはどういう意味を持つかを考える必要があります。もちろんオープンオフィスでもレイアウトやデザインが素晴らしいものであれば社員のモチベーションもアップします。社員にとって働きやすい環境は結果的に生産性の向上にもつながります。また、オフィスデザインが最先端の優れたものであることは、新たに優秀な人材確保につながります。
一方で間仕切りのない空間で仕事をする、ということの一番の問題点はプライバシーの確保がしづらいということです。
実際、数年前にオーストラリアの研究チームが医学誌で発表した内容によると、オープンスペースで働く従業員はストレスにさらされやすく、体に不調をきたしやすかったり、生産性も低くなりがちという結果を打ち出して話題を呼びました。しかしこれは15年以上前の話で、そこからどんどんオフィスレイアウトは発展しています。それでも現在もオープンオフィスの弊害は囁かれ続けているのです。
新たに導入する企業もある中で、なぜこれほどにオープンオフィスは批判されているのでしょうか?それは先述したように、プライバシーの確保がうまくできていないために生じる従業員のストレスや不安感が仕事への集中力を低下させることに加え、間仕切りがないためにインフルエンザなどの病原菌も蔓延しやすくなってしまったということが大きな要因といえます。
他にも室内温度に対する不満や騒音などが気になってしまうことも考えられます。人の会話が自然に耳に入ってしまうオープンスペースでは集中力が保てないというデメリットも生じます。
また、フリーアドレス制は実際に導入してみても上手に使われないと意味がありません。フリーと言いながら実際は固定席のようになっていたり、毎日席を変わることに精神的な負担を感じてしまう人もいるかもしれません。
オフィスを新たにオープンスペースで構える場合、注意すべきいくつかのポイントがあります。
たとえ区切りのない開放感のあるオフィスだといっても個々の視覚的なプライバシーの確保や、集中して仕事に取り組むことができるブースを作る必要があります。コミュニケーションが向上し、チームワークがより強くなるというメリットを最大限に生かしつつ、生産性の高い仕事ができるようなしくみを作り出すことが肝心なのです。
フリーアドレスを新規に導入することを検討しているのであれば、まずはそれが自社の業務スタイルに合っているかをきちんと見定めましょう。在籍率が高い事務職にフリーアドレスは当然向きませんが、1日を通して在籍率が40%以下というのならば導入を検討してみましょう。実際にフリーアドレスを導入することが決まったら社員に意識変革を行う必要があるため、導入に向けてきちんとした説明会やシミュレーションを行いましょう。
また、オープンオフィスを使用するなら、レイアウトと同時にインフラの整備も重要になってきます。
そして、オフィスで働く人々の快適さを追求していくことでオープンオフィスが抱える問題点が解決します。例えば自分1人だけになれる時間を持てるような個室空間を作ることは仕事の上でも休息をとる意味でも必要です。このようにオープンオフィスであってもコミュニケーションと集中の両方が実現できるオフィス空間を作る必要があるということを忘れてはいけません。
こちらの写真のオフィスでは、ワークスペースにフリーアドレスを導入しています。ワンフロアにミーティング用のエリアや集中ブース、カフェエリアや読書ラウンジなど様々な機能をバランスよく配置しています。執務エリアは椅子で色分けをしたり机の形も正方形や円形、対面型の長方形など様々なタイプがあり、業務内容に合った机を選ぶことができます。また、お客様対応やサポート業務はまとめてエリアを設け、業務に集中できるようにしてあります。読書ラウンジにはインテリアに木目調の自然なものを使い、カーペットの色にも変化をもたせるなどして視覚的にも雰囲気を変えて気分転換ができるようなゾーニングがされています。
会議室などをローパーテーションで作る場合も半透明な素材で可視化するなどの工夫ができます。このように間仕切りのないオープンスペースであったとしてもメリハリのある空間作りをすることでストレスを感じさせない工夫はできるものです。
またオープンオフィスのデメリットとしてよく言われる騒音や雑音が気になって仕事に集中できないという問題には、少量のボリュームのBGMが効果的ともいわれています。この場合、音楽は歌詞のあるものではなく自然音などがおすすめです。
オープンオフィスは必ずしもいいことばかりではありません。それによって生じうる悪影響などもきちんと知った上でワークスペースの設計に取り組みましょう。「会社の目標や理念を達成するために最善の仕事場を提供する」ということを念頭において、自社の業務にとって何が最適かを見極めることが大切です。