オフィスで働く人々にとっては、そこが快適であることが生産性のうえでも一番重要なポイントであることは明白です。現代のオフィスのテーマでもある「働きやすさ」に立ち返って働く環境を考えなおすとき、そこで働く人がどうすれば快適に過ごせるかを考えてみましょう。職場の快適性を追求するには様々な側面からのアプローチが必要なのです。
オフィスの移転やレイアウト変更をするとき、まずは目的を明確にすることから始めます。会社の経営理念や社風をきちんと実現できる空間としてのオフィスという側面も大切ですが、それがどんな目的であっても新たなオフィスは作業効率の良さも兼ね備えていなければいけません。
作業効率をよくするためには動線を考え、什器などの配置を工夫したレイアウトが必要です。それにはデスクやOA機器の配置の仕方はもちろん、各部署間の並び方などは業務内容やつながりを考え、スムーズな流れが生まれるようなゾーニングが必要です。
また、狭い空間に人やデスクがひしめき合うのは働く人にとって快適とはいえません。社員1人あたりの業務スペースを計算し、通路も人がすれちがえる程度に確保しましょう。
オフィスレイアウトに限らず、コミュニケーションをよりスムーズにとりやすくするようなシステムを導入することで作業効率がぐっと良くなります。社内SNSを整備したり、自席に座ってヘッドセットを装着するだけで遠隔地とのミーティングが可能になれば、いちいちミーティングする場所に赴かなくてもスピーディーなコミュニケーションが取れるのです。このように無駄のない、作業をしやすい環境が提供されれば社員は会社で快適に仕事に集中することができます。
働く環境が機能的かつ魅力的なことが従業員のモチベーションアップになり、企業を成長させる大きな要素となるのです。
最近流行のオープンオフィスレイアウトやフリーアドレスは、企業側にとってはコスト削減、社員側にとってはコミュニケーションの活性化を目指しているものです。ところが実際に体験してみるとプライベートが確保されづらかったり、自分には関係のない隣席の会話や耳に入ってくる様々な騒音でストレスが生じてしまうなど、必ずしも快適とはいえないようです。また、フリーアドレスで個人の居場所がなくなったことで会社への帰属意識が減ってしまったとも言われています。コミュニケーションが社員同士の一体感を増幅させたり、新たなイノベーションが生まれるようにするにはかなりの下準備と綿密な計画が必要なのです。
では本当に居ごこちの良いオフィスのレイアウトとはどういうものなのでしょうか?社員の満足度が高いオフィスの事例を見てみましょう。
社員がコミュニケーションを取りやすい環境は悪くはありませんが、必ずパーソナルスペースを作ることが大切です。また、リフレッシュコーナーやカフェスペースなどリラックスできる空間も重要で、中にはフィットネスやマッサージ、シャワールームまである企業も存在します。大企業の行っているそれらの設備までは手が届かなくとも、程よく社員がコミュニケーションをとりながらも集中して仕事に取り組める、そして休息の場があることが理想的なオフィスと言えます。
また、居ごこちの良さはオフィスのハード面だけでなく精神的なものにも大きく関わってきます。例えば残業が当たり前のような風潮でなかなか帰ることができなかったり、上司のパワハラがあったりすればどんなにオフィスが使いやすくても社員の居ごこちはよくなりません。社員のメンタルヘルスに対してもきちんと着目し、徹底した教育とフォローが行われることが大切です。快適なオフィス環境は働き方の改善という点でも作られるということです。
ワーカーにとっては自宅よりもずっと長い時間過ごすことになるのがオフィスです。より快適に使いやすい環境になれば満足度は上がり、仕事への取り組み方も変わってきます。お金をかけて流行りのオフィスデザインを取り入れておしゃれな空間を提供したとしても、それが社員にとって使いやすいものでなければ意味がありません。そうならないためには、会社の業態や仕事内容に合った快適性を追求する必要があります。人気の企業を真似してフリーアドレスを導入しても、社員のすべてがコミュニケーション大好き!という会社もそうないでしょう。働く人の中には人と接するのが苦手な人もいますし、コミュニケーションをとるのではなくじっくりと集中しなければならない仕事もあるからです。
オフィスを快適にするには、レイアウトやデザインの変更だけでは足りないこともあるでしょう。社員の満足度を向上させ、より生産性の高いオフィスにしたいのであれば、会社自体の様々なシステムを見直す時期に入っているのです。
例えば毎朝社内メールで確認、周知していた大量の情報を、社内SNSや情報共有の効率化で速やかに行えるようにするなど、変えていけるところはたくさんあるのです。また、毎日行われる生産性のない会議を問題だと思っている社員がいるのであれば、会議のしかた、あり方について会社全体で見直すことも必要です。人事制度なども含め改善すべき点はどこにあるのか、社内全体で考えなければ本当の快適さは手に入りません。
以上のように、オフィスの快適性は作業効率が良いオフィスレイアウトや快適さに着目したデザイン、社員同士のコミュニケーションの良さから生まれる一体感など、いろいろな面に現れるのです。
オフィスをより快適なものにできれば、社員はもっと仕事が楽しくなり、集中して取り組むことができます。オフィスが快適で社員の満足度も高いと優れた人材の確保にもつながります。作業効率が悪かったり、居ごこちの悪いオフィスは快適とは言えません。生産性をもっとあげたいのであれば快適に仕事をできる環境についてしっかりと考え直してみましょう。