企業がオフィスにおいて営利活動を行う際、必ず遵守しなければならないルール=法律というものが存在します。これを無視して活動をすると、場合によっては処罰の対象となり、社会的制裁を受けてしまうこともあるので注意が必要です。今回は、オフィスに関する様々な法律を改めて確認していくことで、まっとうな企業として社会の中で活動をする指針というものを考察していきます。
オフィス内で効率的に仕事を行うために、各企業はレイアウトを考え出すのに苦心することでしょう。しかしながら、ただ単にデスクやオフィス什器などを、デザイン性を重視して並べるだけで「完成」というわけにはいきません。「建築基準法」並びに「消防法」を意識したうえでレイアウトを構築しましょう。この法律を遵守しているかどうかは、2つのポイントに沿って確認できます。
・建物に関する基準
日本は地震の多い土地として知られています。万が一大きな地震が発生した時でも、崩壊することなく耐えられる構造となっているのか、いわゆる「耐震基準」に合致している建物かどうかを調べておきましょう。また、建物そのものが傾いていないかを調べることも重要です。これは具体的な法知識がなくとも確認することが可能であり、もし傾いているとオフィス什器を置いても、ちょっとした衝撃で簡単に動いてしまい、従業員がケガをする恐れがあります。目視で確認できる可能性も高いので、要チェックです。
・消防設備、避難経路の確保
地震の次に憂慮すべき災害が、火事です。火事が起こった時に、それを確認、鎮火できる消防設備(火災報知器、消火器など)が設置されているかは最重要のチェックポイントです。また、火事は激しい煙を伴うので、排煙設備がしっかりしているかも確認すべき事項です。そして、オフィス内で火事が起こったら当然外に避難しなければならないので、その経路が確保されているかも確認しましょう。書類が山積みにされていたり、オフィス什器やデスクがびっしりと並べられているせいで、避難経路が狭くなっている可能性もあるのです。
以上のような注意点を確認することは、法律を遵守することにつながります。
オフィス内において、従業員が健康を損なうことなく仕事を行うために「労働安全衛生法」という法律があります。労働安全と聞くと一見、危険物を取り扱っている企業が対象と思いがちですが、一般の企業のオフィスでも適用されます。それでは、遵守すべき具体的なポイントを見ていきましょう。
・オフィスの室温調整に関して
労働安全衛生法では「室温が10度以下の場合は、暖房などの適切な温度調整をしなければならない」とあります。実際、10度以下の環境だと人間は仕事や勉強の能率が悪くなると言われており、健康にも悪影響が出ます。エアコンやストーブなど、適切な機器を使って室温を上げるようにしましょう
・トイレに関して
実はオフィス内のトイレに関しても細かい取り決めがあり、清潔な環境の保持を目的としています。手洗い場を設置するのはもちろん、トイレの便器に関しても「女性用便所は20人以内ごとに1個以上、男性用便所は60人以内ごとに1個以上、小便所は30人以内ごとに1個以上」という決まりがあります。
・健康診断に関して
従業員の健康増進のために、企業は従業員に対し健康診断の実施義務を課しています。その結果に基づき、場合によっては従業員の就業場所変更、労働時間短縮、残業の減少などの措置を講じる必要も出てくるのです。
近年、残業などに伴う従業員の健康問題がクローズアップされています。労働安全衛生法はそういった意味でも、より意識して遵守すべき法律になりつつあります。
企業のIT化が進む現代、個人の住所や電話番号などは個人情報として、機密の保持が以前よりも一層求められるようになりました。それは2003年に成立した「個人情報保護法」として具体的な形となっています。これに違反した(情報を外部に漏らしてしまった)企業は、その規模にもよりますがテレビやインターネットなどで大々的なニュースとなり、社会的制裁を受け、深刻なダメージ(企業イメージのダウン)を受ける可能性も高まりました。個人情報に関する法知識の学習は、今や企業の必須事項と言えます。
それでは、情報漏えいを防ぐためにはどのようなことを普段から心がければよいのでしょうか。
まずは、デスクで使うパソコンの取り扱いです。常時インターネット環境につながっているパソコンは、ウイルスファイル付きのメールを受信し、そのファイルを開けたことをきっかけに、外部に(パソコンに保存してある)機密情報を漏らしてしまう可能性があります。差出人不明のメールはむやみに開封せず、システム担当などに取り扱いの指示を受けるようにしましょう。
使用期限の過ぎた機密書類の扱いにも注意が必要です。大事な情報の書かれた書類はそのまま捨てずに、シュレッダーにかけるなどして全く中身が分からない状態にしたうえで、専門業者に廃棄をお願いするようにしましょう。
その他にも情報漏えいを防ぐ手段は、普段のオフィス業務において様々なものがあります。一挙手一投足に注意して「個人情報保護法」を日頃から意識しておきましょう。
企業では連日、数え切れないほどの「ゴミ」が発生しますが、処理にも気を配らなければなりません。実際「営利活動で発生した廃棄物は、事業者が自らの責任において適切に処理すべき」という法律も存在するのです。それでは、オフィス内では具体的にどのように廃棄物の処理をすれば良いのか、考えていきましょう。
まず、故障などで使用できなくなったパソコンに関してです。パソコン本体やモニター、周辺機器など、ひとまとめにすると中々企業独自では処理しにくいものですが、専門業者に委託するほか、パソコンメーカーにも処理を依頼できます。法律の一種である「資源有効利用促進法」では、メーカーは不要となったパソコンを回収し、資源に戻すという一連の義務を負っているので、委託が可能です。積極的に利用しましょう。
次に、一般家庭でも発生するようなプラスチック製品、ビニール類、アルミホイルといった金属類等のゴミに関してです。これらは、一般家庭の場合は自治体が処理してくれますが、企業では基本的に自己処理しなければなりません。しかし、全てをリサイクルするのは不可能なので、法律では産業廃棄物の専門業者への委託が可能です。
ゴミの処理は、一般家庭で行うものとは少し違った感覚で行わなければなりません。法知識を頭の片隅に入れて置き、適切な行動をとるようにしましょう。
以上見てきたように、オフィスで仕事を行う際には様々な法律を遵守する必要があります。そうすることで企業は社会的責任を果たしていることになり、営利活動を続けられる条件ともなるのです。全てを丸暗記する必要はありませんが、最低限の法知識は頭に入れておき、企業の評判を落とさないような行動が従業員にも求められているのです。