現代社会において「騒音」は重大な問題となっています。特に閑静な住宅街において個人が大音量で音楽を流すなどすれば、あっという間に近所で問題になり、迷惑行為と認識され裁判沙汰になることも珍しくありません。これは企業単位でも同様のことが言えます。仕事をする上で発生しうる「騒音」が近隣に迷惑をかけることもあれば、逆に他の企業による騒音で迷惑を被る場合もあるのです。今回はそんなオフィスにおける騒音と、その防音対策について考えていきます。
最初に、オフィス内において「音」が発生しうる環境を考えてみましょう。
まずは会議室です。仕事上における重要な打ち合わせや、全社員が集まって今後の方針を話し合うなどの場面で必要となる会議室ですが、大勢の人間が集まれば集まるほど、当然ながら話し声などが大きくなっていき、周辺に一般住宅が多い環境の場合、騒音問題につながります。
また、特に近年「テレビ会議(Web会議)」という形態が多くの企業で取り入れられるようになってきました。全国に支店を持つ企業の場合、各地に散らばっている従業員を本社一か所に集めるということは仕事のスケジュール上困難な場合が多いものです。そんな時にパソコンなどを利用した会議であれば、本社に出向くための時間やコストを削減できるメリットがあります。しかしながらこのテレビ会議は、全員に聞こえるように音量を調整すると大きな音になってしまう場合があり、「スピーカーの音がうるさい」などの騒音問題につながる可能性が高くなるのです。
また、こうした「音漏れ」は、違った観点から問題になる場合もあります。すなわち、会議の内容が外部に漏れてしまうという危険性です。「情報漏えいを防ぐ」という観点からも防音対策は必要になってくるでしょう。
オフィス内で発生する騒音は、会議室からだけではありません。普段仕事をする場面において、従業員にとって気になってしまう騒音というものが存在します。それを考えていきましょう。
まずはOA機器です。近年におけるオフィスのIT化によって、パソコンやプリンター、FAX機といったOA機器は必須のものとなっています。しかしながらこうした機器は構造が複雑で大型化すればするほど、漏れ出す機械音も大きくなってしまいます。社内のインターネット環境に欠かせないサーバーも大きな音が発生するため、こうしたOA機器はデスクからはなるべく距離の離れたところに設置しておきたいところです。
そして、OA機器以上に従業員にとって「騒音」となり得るもの。それは「話し声」です。
とある実験ではオフィスで仕事をする際、従業員にとって気が散ってしまう騒音はコピー機の音やサーバーの音以上に、人の話し声という結果が出ているのです。想像してみてください、例えば外部から電話を受け取った時、その会話中に周りから大きな話し声が聞こえたら、そちらが気になって肝心の電話の内容が聞きづらく迷惑と感じることは、誰しもあるのではないでしょうか。こうした事態は、仕切りを設けるのが難しいオープンオフィススタイルの企業には特に良くあることなのです。
それではオフィス内において、仕事に集中できるように騒音を防ぐためにはどのようにしたら良いのでしょうか。一番効果的な方法は、オフィス内に「パーテーション(仕切り板)」を設けることです。これは先ほど挙げたように、オープンなオフィスレイアウトを取っている企業ではなかなか難しい問題ですが、少なくとも従業員一人一人が作業するデスクのエリアだけに仕切りを設け、残りの大部分においてオープンなスペースを作り出すことができれば有効な防音対策になり得ます。
パーテーションと一言で言っても、現在は技術性に優れたものが数多く販売されています。遮音性を重視した吸音パーテーションは、残響時間を調整したり、反響による騒音を防止する機能があり、音楽を生業とする職業(レコーディングスタジオなど)の人たちが好んで購入、使用しています。こうしたものをオフィス内に導入すれば、効果的な防音対策につながることでしょう。また、単に防音効果だけでなく、デザイン性に優れたパーテーションを置くことも、オフィス内に彩を持たせる意味では最善の策と言えるでしょう。
オフィス内の芸術的なオブジェの一つとして、色合いの豊かなパーテーションを置くというのも従業員のやる気を生み出します。
人間の聴力には「マスキング効果」というものがあります。例えば居酒屋などで、周りの音がうるさくても友人の話し声だけは聞こえるという経験をしたことがないでしょうか。これは、たとえ周りがうるさくてもそれがある一定以下のものであれば、同時に聞こえている音の中から自分が聞きたい音だけを聞き取ることができる(他の音を無視できる)人間の性質のことを指します。
この特性を利用し、テレビ会議などにおいても必要以上の音量で騒音や音漏れを出すことのない「サウンドマスキング」というシステムが開発されました。空調音に似ていると言われ、人の耳にも不快に感じることの少ない音をオフィス内に均一に分散させると(天井など高い位置に専用のスピーカーを設置することで)、会話が外部に漏れたりすることなく、騒音が聞こえにくくなるという効果が表れるのです。
もちろん、デスクの下部分などにスピーカーを取り付けることで、会議室以外でも使用することができます。オフィス内の目立たない部分に設置できるので(オフィスの)美観やデザイン性を損なうことなく、取付工事も1、2日程度で済むため、今すぐにでも実践できる防音対策となります。
以上見てきたように、現代の風潮からオフィスの防音対策は喫緊の課題とも言えます。今回はパーテーションの設置、マスキングサウンドシステムの導入という対策を見てきましたが、今後の技術の進歩によって、さらなる防音対策も続々と生み出されることでしょう。各従業員が仕事に集中できるような、静かな環境を手に入れやすくなるのも時間の問題と言えます。