人間が快適に生活していく中で、「湿度」というものは目には見えませんが非常に重要な要素となります。湿度が高すぎると汗をかきやすくなって、さらに洗濯物がなかなか乾かないという事態になるのです。逆に湿度が低すぎると乾燥し、肌に悪影響を及ぼしたり部屋内のウイルスが活発化し万病のもととなります。会社で働く人にとっては、一日の中で最も時間を過ごすオフィス内の湿度対策は重要な課題の一つとなるでしょう。今回は湿度に関して適正数値を保つことの意味を考えていきます。
そもそもオフィス内という環境は、一般住宅に比べてはるかに乾燥しやすい可能性があります。どうしてなのか、考察していきましょう。
オフィスは隣立するビル群の中にある場合が多く、基本的に密閉性が高い場所となっています。外から光や風を取り込みにくく、そのままの状態では空気が悪くなっていくばかりです。そこで登場するのが空調設備というわけですが、逆に言えば密閉性が高いからこそ空調設備が効率良くオフィス内の空気をきれいにしてくれます。
ところがこの空調設備(主にエアコン)は空気を暖めるタイプのものが多く、ファンヒーターなどと違い水蒸気が発生しません。その結果空調設備を長く使えば使うほど、オフィス内の空気はどんどん水分が奪われ、湿度が異常に低くなり乾燥してしまうのです。「乾燥肌は女性の大敵」と言いますが、とあるアンケートで「どんな時に乾燥を感じますか」という問いに対し「洗顔後」や「夜に帰宅した直後」などといった回答を抑え、半数以上のOLが「オフィス内にいる時」と答えているのです。
「湿度が低すぎる=乾燥する」ということは、人間に様々な悪影響をもたらし、結果的に仕事の生産性も上がらない可能性が出てきます。一体どうすれば良いのか、対策を考えていきましょう。
湿度が低くなることによってオフィス内の乾燥状態に困らされることのないよう、気軽にできる加湿対策を見ていきましょう。
まずは、デスク周りに様々な「乾燥対策グッズ」を置くことを検討してみましょう。思いつきやすいものと言えば「加湿器」ではないでしょうか。デスクの上に置ける様な小型の加湿器でも十分効果は見込めますが、オフィス内全体を乾燥から防ぐためには、やはり大型の加湿器の出番となります。壁掛けタイプや、換気装置つきのタイプなど様々なものがあるので、オフィスのレイアウトに合わせて選ぶと良いでしょう。
次に、観葉植物を置くのも有効です。植物は土から水分を吸い上げ、それを葉の部分から蒸発させて「湿気」を発生させます。オフィス内の「癒し」の存在ともなり一石二鳥なので、乾燥対策としてはぜひ取り入れたいものの1つと言えます。
最後に、お湯を沸かすという行為も乾燥対策になり得ます。企業の中には、給湯室(キッチン)をオフィスの中に取り入れているところもあるでしょう。休憩中にお茶やコーヒーを飲むためお湯を沸かす人も多くいますが、実はそれがストレートに乾燥対策になるのです。もし給湯室がなかったとしても、電気ストーブの上に、水を入れたやかんを乗せるだけでもオフィス内は潤います。
オフィス内では、季節に関係なく快適に仕事を行える温度、湿度というものが存在します。実はそれを可視化したものが「事務所衛生基準規則」に記されています。事務所衛生基準規則は昭和47年に発行されたもので、労働安全衛生法に基づき事務所内の様々な衛生基準が定められています。
この規則は万が一のトラブル(従業員のケガ)に対応するための救急に関する規則、従業員が休憩を取る為の休憩室の設置に関する規則、トイレなどの衛生状況に関する規則などが盛り込まれており、オフィス内の環境に関する規則もその1つとなっています。規則の中では「室温が17度から28度の間、そして湿度は40パーセント以上70パーセント以下」にするように定められていますが、これはあくまで努力義務となっています。
さて、この規則に対する実情はどうなっているのでしょうか。室温に関しては2011年の東日本大震災以降、日本国民に節電の意識が高まってきた影響により周知され、達成している企業も多くなっていますが、その一方で湿度に関しては認知度が低く、特に冬場における湿度40パーセント以上という努力目標が達成されていない企業が多くなっています。
従業員の健康問題にもつながりうる「乾燥」の問題は、まだ個人の努力で解決しなければいけない段階なのです。
オフィス内の湿度を適正に保つことは、特に冬の季節において重要なことです。先ほど挙げた対策があまりなされていないと人体にどういった影響が起こるのかを考えていきましょう。
まず、乾燥肌になってしまうということが挙げられます。乾燥は人間の肌に悪影響をもたらします。肌の水分がどんどん奪われていき(肌の)バリア機能を低下させ、シワやシミといったものの原因(=肌を老化させる原因)を作ってしまっているのです。女性にとっては化粧のノリが悪くなり、何度も化粧室に駆け込むことになって、仕事が手につかない可能性も考えられるのです。
その他に、オフィス内で乾燥状態が続くと、空気中に存在するウイルスが活発化するという恐れがあります。湿度の低い冬の時期はインフルエンザウイルスが蔓延し、風邪をひく人が多くなるという話を誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。そういった事態が乾燥したオフィス内で起こりやすくなるのです。インフルエンザウイルスは伝染性が高いので、あっという間に風邪が社内で大流行し、結果的に業務に支障が出る恐れがあります。湿度対策をすることは従業員の健康を守り、より円滑な業務を遂行することにつながるのです。
いかがでしたか。オフィス内の温度、湿度を一定に保つことは、実は規則によって努力義務とされているのです。しかし、特に湿度においてそれを達成している企業はまだまだ少ない現状があります。自らの健康を守るためにも、より快適な湿度で仕事をできるように周りに呼びかけたり、自分で工夫するなどして湿度問題を乗り切りましょう。