オフィスデザインや従業員が働く環境の見直しが推奨されている現在では、オフィスの移転やレイアウト変更を行なう企業も少なくありません。
オフィスの移転は、事業の拡大や縮小、従業員の増減などに合わせたオフィスへ引越すことです。一方、レイアウト変更は現状のオフィスの中の限られたスペースを使い、抱えている問題点や課題を改善していくことになります。
どちらもオフィスデザインや環境を良くするという点で同じですが、移転とレイアウト変更にはそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
オフィス移転は、企業が求める条件に合ったオフィスに引越しをすることです。そこから生まれるメリットは大きく分けて3つあると考えられます。
1.オフィスの環境改善による従業員のモチベーション向上
オフィス移転は、移転元のオフィスにおける問題点や課題に対しての改善が主な目的です。新しいオフィスで環境が向上することによって必然的に従業員のモチベーションも大きく向上することにつながります。事業の拡大による移転では移転元のオフィスよりも大きなオフィスになり、業務スペースの拡大やリフレッシュスペースの充実など今までになかったオフィス空間が増えることもあります。
2.分散したオフィスを集約してコスト削減
上記1.の例とは反対に、事業の縮小によるオフィス移転では、分散していたオフィス空間をひとつのフロアにまとめることでオフィスにかかるコストを削減することにつながります。仕切りなどで阻まれていた空間がひとつになることで従業員のコミュニケーションアップにもつながります。そして何より、コストの見直しができることは企業にとって大きなメリットになります。
3.対外的な印象をアップ
オフィスが新しくなり、モチベーションが上がるのは従業員だけではありません。他社やお客様のような第三者目線で見ても企業の印象を変えられます。より良いオフィスづくりは人を呼び寄せることにつながり、人材の採用や確保にとっても大きなメリットとなります。
オフィス移転を行なうということは、オフィスを丸ごと移動させるということです。その中にはメリットだけでなく、デメリットや注意点があります。ここでは大きく分けて2つの注意点を紹介します。
1.オフィス家具の搬入経路の確認
オフィスで使用されているオフィス家具の多くは大型家具です。そのため、移転する際に移転元のオフィスからオフィス家具を運びだし、移転先のオフィスにオフィス家具を搬入する必要があります。オフィスの多くがビルなどの高い建物の中にあるため、移転時期・時間とともに搬入経路をしっかり確認しなければなりません。オフィス家具の最大梱包サイズと搬入経路の幅を確認し、スムーズに搬入できるかを調べましょう。また、オフィスビル管理を行なう管理会社や近隣のオフィスにも騒がしくなることを挨拶するなど気遣いが必要です。
2.原状回復工事について
移転元のオフィスをレイアウト変更している場合、ビルによってはオフィスを借りたときの状態に戻さなければならないため、原状回復工事が必要となる場合があります。オフィスビルの管理を行なう管理会社としっかり連絡をとり、確認しましょう。
オフィス移転では、移転先にオフィス家具を運び、引越しを完了させるだけでなく、移転元のオフィスのケアも大切です。オフィス家具や引越し、原状回復工事などそれぞれの業者に任せてしまうと打ち合わせ時間やコストがかさみ、どこかでトラブルが起きてしまう可能性があります。そのため、オフィス移転ではすべての業務を一括で担ってくれるワンストップサービスを行なう業者に依頼することがおすすめです。
オフィスデザインを考え、空間のゾーニングを行ない、オフィスのレイアウト変更を行なう企業も多くあります。では、オフィスのレイアウトはなぜ行なわれるのでしょうか。メリットをみていきましょう。
1.簡単にオフィスの雰囲気や問題点を改善できる
オフィスのレイアウト変更は、オフィス移転と比べると手軽に行なえます。オフィスの問題点に合わせてオフィス家具の配置換えからパーテーションなどの仕切りを立てること、フリーアクセスフロアへの変更など小さなものから大きなものまでさまざまなレイアウト変更が可能です。従業員同士のコミュニケーションスペースや個人作業スペースの確保など、企業や業種によって求めるオフィスの形は異なります。そんな限られた空間の中でオフィスをより良くできるのがレイアウト変更です。
2.従業員の動線の見直し
オフィスでレイアウトの変更を行なううえで、もっとも重要なのが効率の良い動線をつくることです。オフィス内での業務の効率性を見直したときに必ず関わってくるのが従業員の動線です。レイアウトを考えることは、従業員の動線を見直すことにつながります。そのためレイアウト変更によって、従業員はストレスのないオフィスで仕事ができるのです。
移転と比べて手軽なレイアウト変更ですが、注意点があります。オフィスレイアウトを行なううえで気を付けたい点は2つです。
1.パーテーションの仕切り方
レイアウト変更に欠かせないアイテムのひとつであるパーテーションですが、使い方によっては手続きが増える場合があります。パーテーションは種類が豊富にあり、仕切りをつくりたいときなどに活躍しますが、床から天井までのパーテーションを使い空間を区切ると、法律的にその空間を部屋だと認識されてしまいます。その場合は、建築基準法や消防法に合わせ、部屋数の申請を行ない、スプリンクラーや火災感知器のような消防設備の増設が必要になる場合もあります。また火災時に排煙できるような構造でつくる必要も出てきます。そのため、大きなレイアウト変更を行なう場合はビルの規定に従って行ないましょう。
2.移転を考慮したレイアウト変更
賃貸オフィスの場合、さまざまな理由から将来移転する可能性があります。そのため、レイアウト変更を行なう場合は、移転時に原状回復工事が必要かを調べることが大切です。オフィスビルによって規定が異なるため、レイアウト変更前に確認しましょう。レイアウト変更のための内装工事よりも原状回復工事に莫大なコストがかかることも珍しくありません。レイアウトでコストをかけすぎないように注意しましょう。
オフィスの形やあり方は企業ごとに異なるため、理想のオフィスは企業によって大きく変わります。
移転が必要なオフィス、レイアウト変更をしたいオフィスなどそれぞれにメリット・デメリットが存在し、それぞれに注意点もあります。それぞれのメリット・デメリット、そして注意点を抑え、自社にとってなにが必要なのか、改めて考えることがオフィスデザインを始める大きな一歩になるでしょう。