民事訴訟や刑事訴訟など、民間人が突然の事件に巻き込まれたとき、弁護を通じてその大きなフォローをしてくれるのが弁護士という職業です。まさに「正義の味方」である彼らですが、より質の良い仕事をする上で、環境の良いオフィスが必要なのは言うまでもありません。今回は、弁護士のオフィスにはどういったものがあるのか、そのコンセプトとともに実例も紹介していきます。
近年、弁護士という仕事もサービス業の一環である、という考え方が徐々に浸透しつつありますが、一般人にとっては依然として敷居の高い場所と言えます。日常生活の中では、重大なトラブルが発生した時に初めて弁護士のお世話になる、といった事情も絡んでいるからです。したがってオフィスに赴くにしても、特に初めての場合は不安感や抵抗感が自然と大きくなります。弁護士サイドとしては、そんな不安を和らげるようなオフィスのレイアウトを作り出すことが使命とも言えるでしょう。
さて、それではどのようなレイアウトを目指せば良いのでしょうか。まず、肝となるのは何と言っても「エントランス」です。初めて訪れる弁護士のオフィス、エントランスを入った瞬間から安心感を与えるようなレイアウトであれば、依頼者も安心して中に入ることができるでしょう。具体的には、入口の扉や側壁などをガラス張りにしておけば中の様子が分かるようになり、それだけでも安心できる要素となります。内装に関しても、木目調の床や壁を使用したり、配色を豊かにすることによって緊張感もなくなり、「弁護士のオフィス=お固い、近寄りがたい雰囲気」というイメージを持った依頼者は、そのギャップに意外性を感じるとともに、「ここの弁護士さんなら気軽に相談しやすい」という気持ちを持つことができます。
さて、エントランス部分で依頼者に好印象を持ってもらったとしても、まだそれで十分とは言えません。弁護士が依頼を受ける相談内容というものは事件・事故に関わるものが多く、非常にセンシティブであり、できれば他の誰にも知られたくないという性質を有しています。したがって弁護士サイドとしては、依頼者のプライバシーに最大限配慮したオフィスレイアウトを作り出す必要があります。
具体的には、依頼者が最初の受付を終了した後に通されるであろう「待合室」がポイントです。オフィス内では、他の相談者とはもちろん、なるべくならスタッフとも顔を合わせたくないという依頼者の心理があります。プライバシーを守るために、待合室は四方にしっかりとした壁があるか(圧迫感を感じない程度に)、そして声が漏れたりしないか、を重視する必要があるでしょう。
そして実際に相談という段階に至った時は、弁護士と1対1で話し合うというシチュエーションが想定されます。この場合は、弁護士の安全性を確保した相談室のレイアウトが必要となってきます。なぜなら話し合いの最中、納得のいかないことが出てくると依頼者がヒートアップし、弁護士に対して危害を加える危険性がないとは言えないからです。そんな時に密室だと弁護士の身が危ないので、避難用のドアを多めに付けておく、スタッフが中の様子が分かりやすい様に、相談室の壁を一部ガラス製にする(弁護士の様子が少しわかる程度で、依頼者の姿は見えないようにする)などの配慮が必要となってくるのです。
次に、弁護士並びにそのスタッフが働きやすいオフィス、という観点からレイアウトを考えていきましょう。
オフィス内に所属している弁護士の数、取り扱う案件の性質、数々の依頼をこなした上で確立されてきた仕事の仕方など、様々な要素によってオフィス内レイアウトの形が決まってくるので、これが良い、という固定の形はありません。
例えば、弁護士それぞれが独立した部屋を持ち、仕事に集中できる環境(依頼者の相談もそこで行う)の考案。パーテーションなどで区切りをつけているものの(パーテーションの背が)低く、座った状態では仕事に集中できるが、諸連絡がある時は席を立って周囲のスタッフなどに伝えることのできる半個室スタイルの考案。そして、弁護士とそのスタッフが仕事上で連携を取りやすいように、仕切りをなくして1部屋のオープンスペースにするというスタイルの考案など、様々な形が考えられます。
また、セキュリティ面にも配慮したオフィス作りも目指したいところです。業務の性質上、依頼者の情報は常に極秘扱いなものです。外部の目にさらされている、という状態が一番よくない事態なので、スタッフが仕事で使っているパソコンの画面や、資料といったものを隠して見えにくくする工夫が求められます。
最後に、弁護士事務所における実際のオフィスレイアウトはどのような形となっているのか、紹介していきます。
とある弁護士の方は、開業時に自らを含め4人のスタッフを抱え、広さは30坪、7百万円の予算で賃貸ビルの中にオフィスを構えました。事務部とのコミュニケーションが取りやすく、書庫やコピー機がどの位置からでも利用しやすいレイアウトを採用しています。
そして、弁護士という職業の性質柄トラブルが多く(実際に弁護士事務所内での傷害事件も数多く報告されている)、しかも特に日中は女性スタッフしか事務所にいないことも多いということで、防犯面にも留意しました。具体的には、エントランス部分を無人にし、電話によってスタッフを呼び出す方式にしています。外部の人間が容易にオフィス内に入り込めない態勢を作ったのです。
依頼者と話し合う相談室に関しては、間仕切りにガラスのパーテーションを用意して、天井が低いものの圧迫感を感じさせない、開放感溢れる場所を作り出しました。照明にも工夫を凝らし、白昼色を採用することで明るい雰囲気となり、さらに省エネにも貢献しています。
以上のようなレイアウトを採用することで、事務所内はスタッフの人数に合ったこじんまりとした規模ですが、依頼者には相談することの安心感を、そしてここで働くスタッフに関しては働きやすさと防犯面の安全性を提供することに成功しました。
いかがでしたか。弁護士資格を得て、これから事務所を開業しようという人にとって、効果的なオフィスレイアウトの発案は事業を軌道に乗せるための一つのカギとも言えます。コンセプトをよく理解し、そして実例をもとに、依頼者やスタッフが「安心」できるようなレイアウトを作り出しましょう。
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