企業がさまざまな事情によってオフィス移転を決めるとき、できるだけ速やかに行わないと業務再開が遅くなってしまう、というリスクがあります。ビジネスチャンスを逃さないためにも早め早めに移転を完了させたいところですが、あせって行おうとすると逆効果になってしまう場合があります。今回は移転によって噴出する問題点を検証し、その解決法を探ることで、移転を結果的に成功に導くための方策を考えていきます。
オフィス移転は、従業員のモチベーションアップ、その結果としての生産性向上というプラスの効果が期待できます。しかしながら、人間は「新しい環境」への順応性が高い、というわけでは必ずしもないのです。中には新しい環境への変化になじめず、ストレスを溜めこんでしまう人もいます。その結果生産性を低下させたり、退職=貴重な戦力を失ってしまうことにもつながりかねません。そんな時に重要となってくるのが、企業側が積極的に行うべき、従業員へのメンタルヘルスケアです。
メンタルヘルスケアとは、働く人全てが毎日を健康的に過ごし、そして積極的に仕事を行うための体制を作り上げること。そして、実際にその体制が円滑に実行されるような仕組みを作り上げるということです。近年、企業での働き方改革が声高に叫ばれるようになりました。労働環境の劣悪化が従業員の自殺にまでつながるという悲惨な報告も数多くなされています。「移転をしただけで成功!」とは思わず、新しい環境に一人でも多くの従業員がなじめるように企業側としても工夫することは喫緊の課題です。オフィス内のレイアウトにおいてリラックスできるスペースを作りだしたり、仕事のしやすい開放感溢れるデスクやオフィス什器の配置をすることで、効果的なメンタルヘルスケアを行うようにしましょう。
オフィス移転によって発生する最も重要な問題の一つに、費用=コストがあります。あまり意識せずに移転をしてしまうと、気が付いたら会社にとってコストがかなりの負担になっている可能性もあるので、計画段階でカットをすることができないか、慎重に検討しましょう。
規模や立地によっても変わってくるこのコストにはどういった種類があるのか、次に挙げていきます。まずは、引越し費用です。これには、依頼するであろう引越し業者の作業員の人件費や車代、梱包されている資材などが該当し、社員1人当たり2、3万円くらいが相場と見積もっておけば良いでしょう。
次に、内装やレイアウトに際する仕切りの工事費です。オフィス内が広く、考え込まれたレイアウトであればあるほど自ずとコストもかかります。こちらは、1坪あたり10万円から40万円と考えておけば間違いがありません。
その他にも、賃料や預託金といったものがありますが、忘れてはならないのが「原状回復費用」。オフィス移転の際はこの部分のコストがもっとも多くかかるようになっているので、後々請求されて驚かないようにしましょう。原状回復費用とは、それまでいたオフィスを次の借り主のために限りなく自分達が借りる直前の状態に「回復」しておくための工事費などを指します。これはオフィス物件の貸し主に対する義務でもあるので、あらかじめ費用を計上しておくようにしましょう。
現代において企業が営利活動をする際、IT機器の存在は非常に貴重なものとなっており、これらなくしては思ったような仕事もできないでしょう。さらに言えば、実に多種多様の機器が活躍しており、複雑化しているので、オフィス移転の際はこれらすべてをスムーズにつなげ、すぐにでも稼働できるようにしなければなりません。それでは、どんな機器があるのかを見ていきましょう。
・IP系ネットワーク(インターネットの回線、社内におけるVPN=仮想プライベートネットワーク)
・レガシー系ネットワーク(電話やISDN)
・その他IT機器(ビジネスホン、TV会議のシステム、監視カメラ、パソコン、サーバー等)
以上のように、電話関係やパソコン、セキュリティ面で使用されるものまで、IT機器と一口にいってもその種類は多岐にわたります。特に通信関係のIT機器に関しては専門のノウハウが必要であり、業者に速やかな対応をしてもらわなければなりません。例えば移転直後に電話が丸一日使えないような事態に陥ると、仕事上大きなロスにつながる可能性もあります。さらに言えば、電話とパソコンでは違う業者に依頼しているというケースも多いので、業者によって工事日程を調整するといった気遣いも必要となってくるでしょう。
オフィス移転に際して、引越し業者やIT機器関係の業者などの手を借りるケースは非常に多くなりますが、どの業者を選ぶかというのも大事なポイントです。値段が安いからといってすぐに飛びつくのは厳禁で、いわゆる「安かろう悪かろう」の可能性があるのです。契約した後では後戻りもできないので、契約前の段階で該当業者の「質」を見極めるようにしましょう。
見極めのポイントとしてはまず「サービスの内容を知る」ということです。例えば引越し業者であれば、一般家庭よりも持ち出す家具の多い企業のオフィス引っ越しに関し、どういった搬出、搬入の計画、いわゆる「運送計画」を立てているかを調べる必要があります。それが仮にマニュアル化されていれば、過去の経験からいかにスムーズに引越し(オフィス移転)を行うかを熟知した優良な業者と言えるでしょう。
内装に携わる業者に関しては、オフィス内のレイアウトに関して経験値を持っているところに依頼するのがいいでしょう。従業員の規模によって最適なレイアウトを組んでくれ、さらにインテリアなども効果的に配置してくれるでしょう。
通信関係を再構築する業者に関しても、そのノウハウを持っているところであればしっかりと準備をしてくれますし、移転後すぐに電話やパソコンでインターネットを使用することができるでしょう。
いかがでしたか。オフィス移転に際してはさまざまな問題が発生しますが、それを速やかにクリアするには、計画の段階でその問題への対応策をあらかじめ立てておくのがベストの方法と言えます。それが、移転後すぐに利益追求活動を再開させるカギともなっています。