部署内での簡単な連絡事項の伝達から、経営方針を決める全社規模の大型な会議まで、企業におけるミーティングルームの存在は非常に重要なものと言えます。会議をしやすいようにデザインにも様々なものが考えられ、工夫がなされますが、それぞれにおいて特性にはどういったものが考えられるのか、検証していきたいと思います。
ミーティングルームと言えば、広い部屋の中にたくさんのテーブルとイスを並べるというイメージがありますが、ただ乱雑に並べただけでは意見が通りにくくなるなどの不都合も生じます。会議の形態に応じてその形を柔軟に変える必要性が出てきますが、今回はその点を検証していきます。
最初に挙げるのは「スクール形式」です。文字通り、学校の教室をイメージすれば分かりやすいかもしれません。前方に一つのテーブルを置き、それと向かい合わせになるように複数のテーブルとイスを設置し、いわば「教壇」となる部分に司会者や講師、役職が上位の人が座り、「生徒机」となる部分にその他従業員が座ります。この形式は勉強会やセミナーに向いている形と言えます。
次に紹介するのは「シアター形式」です。スクール形式と同様に、ある一方向に向かってイスを並べる形となりますが、スクール形式と違うのはそこに複数台のテーブルを置かない、ということです。極力テーブルの数を減らすことによってスペースが生まれ、より多くの従業員が会議に参加することができます。
3つ目は「ロの字型、コの字型形式」です。テーブルをロの字型、コの字型に並べてイスを適宜おいていく形であり、いずれも部署単位など比較的少人数でミーティングを行うのに適した形式です。距離感が近いので適度な意見交換をしやすくなります。
最後に紹介するのは「正餐形式」です。中華料理店などでよく採用されている円卓形式を思い浮かべればイメージしやすいのではないでしょうか。円卓を用意し、その周りにイスを配置した形を複数設置する形式となっています。先ほど紹介した「ロの字型、コの字型形式」よりもさらに距離感が近いものなので、忌憚のない意見を活発に交わせるというメリットがあります。
今回は、代表的なテーブル、イスの並べ方を紹介してきましたが、会議の形式に応じてこれらの形式を柔軟に採用していきましょう。
ミーティングルームにおけるテーブルやイスの並べ方の重要性を前段で検証してきましたが、フロア自体のデザインにもこだわれば、さらに良質な会議を展開することができます。
まず、照明から見ていきましょう。暗い場所を明るくする、ということだけが照明の役割ではありません。種類によっては、会議に臨む従業員の心理状態にも見えない形で影響を及ぼすことがあります。自然光に近い「昼白色」の照明はかなり明るく、雰囲気を盛り上げ活発化させる効果があるので、多くの意見が必要となる重要な会議に適しています。オレンジがかった白い照明である「電球色」は、人をリラックスさせる効果があると言われており、講演会や勉強会など、落ち着いた雰囲気で話を聞いたり、発言をする場合に適しています。
照明と同様に、ミーティングルームの「配色」もこだわっていきたい部分です。赤やオレンジ色などは人の脳を活発にさせる効果があると言われているので、積極的な意見交換をするのに向いている色と言えます。逆に青や灰色などは落ち着いてリラックスさせる効果があるので、課題の検討やプレゼンテーションなど、じっくりとミーティングを行いたいときに取り入れたい配色です。
以上のように、会議の種類に合わせてミーティングルーム内の照明と配色をうまく組み合わせる(調整する)ことは、良質な意見を発信、取りまとめるのに有効と言えます。
スペースの広い部屋において、デスクやイスを効果的に並べておくのだけがミーティングルームの形ではありません。現在採用されつつあり、今後普及が進むと思われる新しい形のミーティングルームと、その特性を次に紹介していきます。
まずは、「スタンディング式」のミーティングルームです。文字通りミーティングを立って行う形式であり、カウンター式のテーブルを置いているだけなので、かなり広いスペースを取ることができます。居酒屋などでも流行りつつあるこのスタンディング式は、簡単なミーティングを行う時に重宝します。都度イスやテーブルを用意する必要がなくすぐにミーティングを始められ、参加者同士の距離感も近くなるので、自然と活発に意見を交換し合えるようになるというメリットがあります。長時間に渡る打ち合わせが必要な時など、立った状態が長くなる場合に疲労によって意見を出しにくくなるという部分もあるので、スタンディング式はあくまで短時間で済むようなミーティングに適していると言えます。
次に挙げられるのが「全面ガラス張りのミーティングルーム」です。会議室で会議といえば、かつては密室でごく少人数の人間により重要事項が決定される、というイメージが根強くありました。経営の不透明感にもつながり、従業員にとっては働くうえでの一つの不安要素でもあったのですが、近年ではIT業界など先進的な企業を中心に、ミーティングルームを全面ガラス張りにし、文字通りオフィスの透明感を図るというチャレンジがなされています。もちろん実務的なメリットもあり、全体がよく見渡せるという意味で開放感が感じられ、その結果オープンな雰囲気の中で自由に意見を言い合えるという心理的作用ができあがっているのです。
以上、代表的な「未来志向のミーティングルーム」を紹介してきましたが、そのいずれもオープンな雰囲気の中でクリエイティブな意見を発信するのに役立っているのです。
いかがでしたか。多くの従業員が集まることの多いミーティングルームは、意見交換の場としてそのデザインにも工夫を凝らしたい場所となっています。それが結果的に良質な会議を行うことにもつながりうるので、今回紹介してきたような事例を参考に、スペースを有効活用してみましょう。