オフィス内において意外と見逃されがちなのが、天井に設置されていることの多い照明です。普段のオフィス内を明るく照らす、と言う意味合いくらいにしか考えられないものですが、工夫次第で従業員のモチベーションをアップしたり、外部からのお客様に対し好印象をもたらす可能性もあるのです。今回はそんな照明が有するポテンシャルを活かす方法を、ゾーニング別に考察していきます。
ゾーニング計画の中でも企業のエントランス部分は従業員やお客様、その他大勢の人が出入りをする、いわば企業の顔となるエリアなので格好のアピールの場となります。したがって、他の場所に比べても工夫を凝らしたレイアウトとしなければなりません。企業のロゴを目立つように前面に掲げる、タッチパネルを導入して分かりやすい社内の案内を心掛ける、待ち合わせ用のロビーがあれば落ち着いた環境を作り出す、などが考えられるでしょう。
さて、照明と言う観点から考えるとどのような工夫が施せるでしょうか。先ほど挙げた企業のロゴをエントランスに掲げる場合、照明がロゴの効果を2倍にも3倍にもしてくれます。すなわち、スポット照明などを利用することによってロゴをより一層際立たせるようにし、入場した瞬間強く企業名を印象付けるといった方法が考えられます。また、ロビーなどのエリアはロゴをより際立たせるために照明の照度を低めに設定することも1つの方法でしょう。
企業のイメージカラーがあれば、エントランス部分にさりげなくそのカラーをアピールするような照明を効果的に配置するのも手です。企業に一歩入った瞬間そのイメージカラーに囲まれれば、お客様への強烈な印象付けになり、その後の取引にも好影響をもたらしてくれるかもしれません。
業務室は従業員の多くが働く場所となるので、ゾーニング計画の中でも一番気を遣わなければならない場所と言えるでしょう。それだけに、レイアウトも十分な時間をかけて制作しなければなりません。島型式レイアウトや対向式レイアウト、現代の企業ではフリーアドレス式レイアウトなど、デスクやオフィス什器の並べ方にも様々な種類があり、オフィス内にいる従業員の人数や保管書類の多さによって、そして従業員間のコミュニケーションの取りやすさによって採用するべきレイアウトも決まってきます。
照明に関してはどのようなものを業務室に取り入れれば良いのでしょうか。大抵の場合は、市販の蛍光灯を普通に天井に設置する、というケースが思い浮かぶ場合も多いことでしょう。基本的なコンセプトとして念頭に置いておきたいのは「業務がしやすいように、疲れにくく、快適に仕事をこなすことのできる明るさ」の照明を取り入れるということです。そのために、業務の場所によって照明にメリハリをつけるのも一つの手となります。業務を行う部分は明るく、それ以外の部分は暗くすることによって作業に集中できるというメリットも生まれます。また、近年では照明のLED化が進んでいます。これらの導入はコスト削減に効果があるので、積極的に取り入れていきましょう。
会議室は活発な意見を交わすことにより、企業の方向性を決定する場となります。当然のことながら、会議室の環境には気を遣わなければなりません。業務室と同様にデスクやイスなどを効果的に配置するのはもちろん、セキュリティ面から外部に声が漏れないよう各種音響設備の購入も検討するのが吉と言えます。全てはコミュニケーションを取りやすくするため、従業員一人一人が意見を出しやすくするための環境整備、と考えると分かりやすいのではないでしょうか。
そして照明の設置の仕方も、会議室での会議を充実したものにする一助となります。会議では、資料を手元に置いた状態での進行が通常となります。少なくとも、その資料の文字や図が判別しやすい状態の明るさの照明が必要となるでしょう。また、会議には通常会議の他に、特定の従業員が現状を報告したり、成果を発表するプレゼンテーション会議というものがあります。一人の従業員に大勢の従業員の目線が注がれる場となるので、スポットライトのように(発表をしている)従業員が照明に照らし出されるような仕組みを作れば、説得力も増すことでしょう。会議によって使用する照明を変更することができれば、従業員の刺激にもなり、活発な意見が交わされる可能性も高まります。
ゾーニング計画の中でも、休憩室は業務室と並んで気を遣わなければならないエリアとなります。仕事のリフレッシュにこういった場が無いと従業員の生産性が著しく低下してしまう恐れがあるからです。コーヒーや紅茶が飲める場の提供はもちろんですが、近年では遊び心をコンセプトに、遊技台や横になれる場所など「癒しの場」を用意している企業も増えつつあります。従業員がリフレッシュし、さらなる仕事へのモチベーションになる環境が整いつつあると言えるでしょう。
さて、こうした休憩室に対し、照明はどのような貢献を果たせるのでしょうか。仕事をしている時には昼白色や青白色の、明るめの照明を使うと脳が活性化され集中できます。しかし、休憩中に脳を休めたいと考えたらこうした照明は合いません。そこでオススメなのが、電球を使った照明です。電球は赤みがかっており、優しくフロア内を照らし出すのが特徴なので休憩室にも最適です。デザイン性に富んだ電球を導入すれば、休憩室がさらに良い環境となるでしょう。また、休憩室のフロア全体を暗めにするのも一つの手段です。暗いフロアは心理的にリラックスできる効果があり、次の仕事への活力ともなります。
以上みてきたように、オフィスの中においてゾーニング計画によって分けられた各フロアは、照明を効果的に使うことによって企業にプラスの効果が見込めると言えるでしょう。お客様へのアピールとなり、従業員の仕事へのやる気を引き出し、会議でも活発な意見が交わせるようになります。たかが照明と侮るなかれ、照明には、実は企業にとって数々のプラス効果をもたらすことのある、ポテンシャルの高いオフィス家具なのです。