企業にとって、新天地へのオフィスの移転は一大イベントとなります。移転計画の立案から移転の実施、完了、そして各種手続きの履行など、そこには様々なステップがありますが、何一つミスなく全てをこなしていきたいところです。一つでも怠ると新天地でのスタートが遅れてしまう危険性(余計なコストがかかってしまう)があるからですが、今回はその注意点を移転の流れに沿って考察していきます。
オフィスの移転が決断された時、最初の段階にも大切な注意点があります。
すなわち、今いるオフィスに関してです。先を見るにはまず足元から。退去するオフィスに関しての解約条件やその方法を知っておかないと、スムーズに新オフィスへ移転することもかないません。これを怠ると「原状回復費が余計にかかってしまった」「解約の期間が長く、空家賃という余計なコストが発生してしまった」といったトラブルの元になるので、よく確認しましょう。
それでは具体的にどのような項目をチェックしておけば良いのでしょうか。まずは、今のオフィスに入居した時の賃貸契約書を改めて確認します。特に解約の項目において「解約期間」「敷金や委託金といったものの返却の時期」「原状回復の義務の範囲」などをチェックします。原状回復に関してはさらに踏み込んで、契約したオーナー側が指定した業者などはあるのか(なければ企業側で業者を指定し原状回復を依頼するのも可能になる)、費用の目安はどれくらいになるのか、などを一つ一つオーナー側と相談するなどして把握しておきましょう。
最初の段階でしっかりと「旅立ちの準備」を整えたあと、オフィスの本格的な移転準備にとりかかることとなります。
さて、実際に新オフィスに移転を決定した時、どの場所に移転するかが最初に考慮すべき事項となります。やはり何といっても、企業がより多くの利益を生み出しやすい場所、そして従業員が様々な観点から働きやすい場所を選ぶべきでしょう。
取引している多くの企業が拠点としている場所に移転すれば彼らからも喜ばれ、さらなる取引の活性化が望めるでしょう。一方、従業員にとっては通勤しやすい場所であることはもちろんですが、アフター5で居酒屋や買い物がしやすい施設などがたくさんある繁華街の近くに拠点を構えるのも1つの方法です。総務担当者にとっては、各種手続きをすることも多いので、官公庁が近くにあれば利便性も高まります。
そして実際に新オフィスに移転した時、新たに賃貸契約を結ぶことになりますが、ここでも注意が必要です。基本的に賃貸契約は複雑な場合が多いので、提示された契約に関する書類を隅から隅まで読みつくし、後でトラブルが起こっても冷静に対処できる準備を整えておきましょう。そして説明を受けてもすぐにサインをすることなく、疑問に思う点は積極的にオーナー側に質問をし、承服できない部分があったら話し合いを重ねることも必要です。
新オフィスの具体的な場所も決まり、実際に移転という段階になった時にはどういった注意点があるのでしょうか。
まず考えるべきは、オフィスのレイアウトをどのようにするか、ということでしょう。場合によっては新たにデスクやオフィス什器を購入する必要性が出てきたり、インターネットやビジネスフォンに必要な配線関係も決まってきます(決定することで、工事の見積もりも出しやすくなります)。そして引越しの際にも、大型の荷物をスムーズに所定の位置に配置できるのでムダな手間が省けるという意味合いもあり、こうした観点からレイアウトの立案は重要な作業になってきます。
レイアウトの立案の重要性にも少し触れましたが、移転に伴いそれをフォローしてくれる専門業者との契約も大きなポイントとなってきます。適切な物件を探してくれる不動産業者、荷物の持ち運びに欠かせない引越し業者、インターネットなどを整備してくれる配線業者などがその代表的な業者となります。現代において、そうした業者は千差万別であり、かかる費用も随分と違ってきます。付き合いの長い業者であれば「勉強」してくれる可能性もありますが、新たに探す場合はインターネットなどで複数の業者を比較し、少しでも低コスト(かつ必要十分なサービスを提供してくれる業者)を探すようにして、無駄なコストをかけないようにしましょう。
オフィス移転の実行には引越しが欠かせませんが、ここでも注意点があります。
移転マニュアルを改めて見直したうえで、スケジュールをしっかりと確認し、作業者の割り当てを確かめる。
移転先の荷物用エレベーターはどこにあるのか、積載可能容量などを調べる。
同じビルに入っているほかの企業の邪魔にならないか、作業が可能な時間帯を確かめる。
引越しにより発生した粗大ゴミをリストアップ、出し場所などを調べる。
これらをビルの管理者と相談するなどして滞りなく引越し作業を行うようにしましょう。
移転をしたから全て完了、というわけにはいきません。移転作業の最終段階として、各省庁へ移転に関する各種手続きを行うことも怠れません。場合によっては事業を再開できない可能性もあるので、最後までしっかりと作業を行いましょう。具体的には住所の移転手続き、税に関する手続き、オフィス内の安全に関する手続き、社員に関する社会保険の手続きといったものがあります。税務署や警察署、社会保険事務所などに赴いて書類を提出することにより手続きも完了します。期限が定められている場合もあるので、早めの行動がおすすめです。また、取引のある企業に「移転に関するお知らせ」をハガキなどでお知らせするのも怠らないようにしたいところです。信用問題に発展する場合もあるので、最後まで気を抜かずに各種手続きを行いましょう。
いかがでしたか。一言に「オフィスの移転」とはいっても、そこには一連の流れがあり、それぞれの段階において注意すべきポイントがたくさんあります。一つでも怠ると事業の順調な再開、というわけにはいかない恐れもあるので、チェックシートを用意するなどして一つ一つを確実にこなしていきましょう。