従業員がオフィス内で働くとき、モチベーションをアップさせるには色々な方法が考えられます。レイアウトにおいて、業務イメージに合った配色をオフィス内に施したり(視覚)、オフィス什器を使いやすいものに変えるなど(触覚)、人間の五感に快適さを訴えかけるのはその直接的なものとなりますが、今回は人間の聴覚を快適にさせる、音響について考えていきます。
私たちは普段の生活において多くの音に接していますが、その大半は無意識的に聴いているものです。しかしながら、そうした音が人間に与える影響は決して無視できる存在ではありません。果たしてどういったものがあるのか、以下に見ていきましょう。
まずは、生理的な影響です。音は人に対して、ホルモンの分泌や心拍数、呼吸、さらには脳波にまで影響を与えている、と言われています。大きな目覚まし時計の音は朝眠い状態の身体に刺激を与えますし、穏やかな波の音は人をリラックスさせる効果があります。
次に、心理的な影響です。人は、音によって心の奥底から様々な感情を呼び起こされる場合があります。映画などを見ている時、その内容もさることながら、バックで流れている音楽がさらに大きな影響をもたらします。悲しい内容であればBGMがさらに悲しさを増幅させ思わず涙したり、アップテンポ調のBGMを聴けば知らず知らずのうちにテレビを見ながら気分が上がった記憶は誰しもある事ではないでしょうか。
3つ目は、認知に関する影響です。人は、多くの音を処理することができません。2人に同時に喋られた時、どれくらい理解できるかを想像すれば分かりやすいのではないでしょうか。いわゆる帯域幅というものが狭いので、オフィス内においても騒音があると、静かな部屋に比べて約3分の1生産性が落ちるといわれています。そういった場合は、静かな鳥のさえずりなど爽やかな音声をヘッドフォンで聞くなどの対処をすれば生産性も回復するでしょう。
最後に、行動に対する影響です。人間誰しも、不快な音は避けて快適な音に惹かれていく傾向にあります。オフィス内で常に不快な音が鳴っている環境下に置かれていてはストレスがたまり、健康を害してしまうことでしょう。生産性が下がり、利益も減少してしまいます。快適な音を流せるようなオフィス環境を目指していきましょう。
それでは実際に、オフィス内で音響設備を取り入れることのメリットを考えていきましょう。
まずは「音漏れ防止」です。会議は企業の重要事項が決定される重要な場です。活発な議論が繰り広げられる場合もあり、その声は外にまで漏れてしまうかもしれません。そんな時にもし会議中に外部から来訪者があり、会議室の前を通り過ぎる、もしくはその近くで(取引の商談のため)待機していたとしたらどうでしょうか。自然と会議の内容が耳に入ってしまい、いわゆる「情報漏洩」の危険性があります。音響設備の導入はこうした危険性を回避し、セキュリティ面における安全を保障してくれます。
次に「従業員の生産性アップに貢献する」ということです。まず、オフィス内外で発生する「音」にはどういったものがあるか、考えてみてください。パソコンのキーボードをたたく音や、複合機から発せられる機械音、書類をめくる音。そして人の話し声、さらにはオフィスの外から響き渡る工事の音や車の通る音などのいわゆる「騒音」に感じられるものなど、様々な種類が考えられます。これらの環境音は日常的に発生するものですが、それに加えて従業員の耳に入るような音を意図的に導入すれば、生産性のアップにつながる可能性もあります。すなわち、音楽などをオフィス内に流せば自然と従業員の心理に働きかけ、何らかのプラスの効果をもたらすかもしれないのです。
前段で挙げた、音響設備の導入によるメリットに関して、具体的にはどういったものがオフィスに導入されているのかを次に見ていきましょう。
まず、音漏れ防止に関してですが、こうした事態は単純にパーテーションで区切ったりするだけでは解決できない問題であり、他の音でごまかし、会議の会話音を聴こえなくするなどの手法が必要となってきます。その時に有用であり、現在導入が進んでいるのが「サウンドマスキングシステム」です。このシステムは天井に設置されたスピーカーから、オフィスの環境音に合わせた特殊な音(マスキング音)が室内に均等に降り注ぎ、外部への音漏れを防いでくれます。サウンドを流すコントローラーとスピーカーがあればいいだけなので導入しやすく、あくまでも自然な体感となっているので、室内の景観を損なうことがなく設置することができます。
従業員の生産性をアップさせるような音源の提供に関しては、それを専門に扱っている業者があるので、ぜひ相談していきたいところです。オフィスの事情に応じて最適と思われる音響設備を提供してくれ、より良く、快適な音源の元で仕事ができるでしょう。一つの例として、現在「環境音楽のインターネット配信」と言った事業を展開している企業があります。専用端末を購入すれば、ハードディスクに2万曲以上の音源が収録されておりボタン操作をせずとも自動的にオフィス内に音楽を流すことができるほか、静止画コンテンツやCMといった定時の放送が流れることもあります。インターネット経由なのでコストもさしてかかりません。
以上のような音響設備が現在積極的にオフィスに導入されています。一度検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
以上みてきたように、音が人に与える影響には様々なものがあります。オフィス内における音の重要性も決して無視できる存在ではないということがお分かりいただけたでしょうか。従業員だけでなく、企業にとっても様々なメリットが考えられる音響設備の導入は積極的に考えていきたいものとなるでしょう。