企業は、その規模が大きくなればなるほど、部署ごとに分かれて仕事をすることとなります。分業化することにより、基本的には1つの部署内で仕事をすることになりますが、行き詰った時には他部署の意見を聞く場面も出てきます。そんな時にフロア内で部署同士が離れていたら、コミュニケーションが取りづらくなり、仕事も停滞する可能性があります。そんな事態に陥らないためにも、今回はオフィスレイアウトの観点から他部署との連携を深める方法を探っていきます。
オフィス内で仕事を行うとき、円滑に進めるためには周囲の社員との連携が欠かせません。それは同じ部署内での連携の場合もあれば、他部署との連携の場合もあり、仕事の内容によっては全社的に連携を行うことでスムーズに進行する場合もあります。これは一言で言えば「タテ」と「ヨコ」のコミュニケーションとなります。
「ヨコ」のコミュニケーションは、いわば異なる部署間で連携をとるのが基本となります。一つの部署内で仕事が行き詰ってしまったり、新たな展開を考え出したいときに、他の部署からアイデアを出してもらうことで次のステージに進めるかもしれないのです。これを現実のものにするためには、オフィスのレイアウトという観点で言えば後に紹介する「フリーアドレス型レイアウト」や「ユニバーサル型レイアウト」の採用が現代において最も近道と考えられており、「ヨコ」の活発なコミュニケーションを可能にしてくれるのです。
一方「タテ」のコミュニケーションは、社員間にある役職と言う目に見えない壁を取り払い、活発な意見を交わしやすくする土壌を作り出すのが基本となります。部長職以上の役員が使用しているフロア(役員室など)に赴くとき、何となく緊張してしまい思っていたような意見が言えなかった経験は、企業で働いたことのある人なら誰しもあるのではないでしょうか。そうした、いわゆる「特別なエリア」をなくし、部長職以上の人でも例外なく(時には社長でも)、全社員を同じフロアで働かせることにより、誰とでもコミュニケーションを取りやすい状況を生み出すのです。
現代の企業シーンにおいて、「働き方改革」が声高に叫ばれるようになりました。これは、過酷な労働時間(残業による過労死の問題)やパワハラ、セクハラなど、企業を取り巻く諸問題に対し様々な改善の動きを政府が求めているものであり、いわば国単位で取り組むべきプロジェクトとなっていますが、その中には当然のことながら仕事の効率化、社員間のコミュニケーションの活性化も含まれています。
そして、そのカギの一つとなっているのが、オフィス内における「フリーアドレス型レイアウト」の採用です。この形のレイアウトは、実は既に1990年代後半から主にIT系企業や外資系の企業において取り入れられているものです。しかしながら、働き方改革が国内に浸透するにつれ、このレイアウトを採用する企業が徐々に増えてきており、コミュニケーションの活性化に一役買っています。
それではこの「フリーアドレス型レイアウト」というのはどういったものなのでしょうか。単純に言えば「自分専用のデスクがない」ということになります。通常のオフィスと同様、デスクとイス、そしてパソコンなどのアイテムは複数用意されているものの、社員は朝出勤したら基本的にはどこに座っても良い形をとっているのです。こうすることで、部署による違いなどは関係なく、現在進行しているプロジェクトに関係している社員同士が好きなタイミングで集まってコミュニケーションを積極的にとる体制ができあがります。普段話したことのない人同士で話し合い、思わぬアイデアが浮かぶこともあるでしょう。
しかし、このフリーアドレス制は、まだ慣れていない会社にとっては「自由な席」が大義名分であるものの、気が付いたらいつも同じ場所に座ってしまう社員が出て固定化してしまったり、逆に自分の座る席が見つからず疎外感を感じてしまう社員も現れたりします。その結果社員同士で連携を深めるという本来の目的から逸脱し、仕事も非効率になってしまうという本末転倒な現象が現れる可能性もあるので、フリーアドレス制は綿密なシミュレーションを重ねるなどしてから導入を決断するようにしましょう。
先ほど挙げた「タテ」のコミュニケーションの活性化を実現させる近道、それがユニバーサル型レイアウトです。この形は、いわば責任者の席を設けず、部署内の全社員横並びにデスクを配置することを指し、部署内のコミュニケーションが活性化されることとなります。そしてこれはフロア内の無駄なスペースを無くし、社員がフロア内を歩き回りやすくする、いわゆる「動線」の確保にもつながり、その結果他部署とのコミュニケーション、連携がとりやすくなるというメリットもあります。
その一方で、このユニバーサル型レイアウトは一定のデメリットも存在します。コミュニケーションが取りやすいがゆえにデスク同士にはっきりとした境目(パーテーションなどで区切られている形)がなくオープンなスペースとなるため、プライバシーの確保がしにくいというものです。また、他人の目線が気になる人にとっては、何となく落ち着いて仕事ができない、という不満も感じてしまうことでしょう。上司が目の前にいてプレッシャーを感じる、という人もいるかもしれません。どうしても気になる、という人の意見はきちんと吸い上げて、極端に見えなくならない程度の簡易パーテーションを側に設置するなどの対応を取れば、そうした問題もある程度は解消されるでしょう。
いかがでしたか。他部署と連携を深めることは仕事のさらなる効率化につながり、それが結果的に会社の利益アップにも貢献することとなります。フリーアドレス型やユニバーサル型など、利益アップを現実のものにするオフィスレイアウトを自分の会社にあてはめ、積極的に導入するようにしてみましょう。