最近では、部屋ごとに部署を区切るのでなく、パーティションなどを使って開放的なレイアウトにする会社を多く目にします。これには、従業員同士のコミュニケーションをスムーズに行うなどの目的があり、これまではその方が業務効率も向上すると言われてきました。しかし、実はこのパーティションを使ったレイアウトは、新たな不満を生むという指摘もあるのです。
会社の部屋が分けられていないということは、音はそのフロアの全てに漏れているといっても過言ではありません。換気扇や他社の会話、電話の音などは、集中力を妨げる原因になります。パーティションを駆使したレイアウトは、コミュニケーションを取りやすいといった利点もある一方、不必要なコミュニケーションも発生してしまうのです。特に、パソコンの前に向かって集中する技術職などでは、その影響は大きいといわれています。シドニー大学で行われた「環境心理ジャーナル」の中では、こうした騒音・雑音に対して半数以上の人が不満を持っているという調査結果が発表されています。
また、パーティションをレイアウトに用いると、騒音以外にも「視覚的に常に誰かに見られている」という状況が発生しやすくなります。パーティションの種類にもよりますが、特にローパーティションの場合はそういった状況になりやすいでしょう。先に紹介した調査結果によると、各職場において20〜40%の従業員が、そうした状況に不満を抱いているということです。パーティションを使わず、部屋ごとに区切ったところで、そういった問題は発生するでしょうが、見られている人数が多ければ多いほどそのストレスは大きくなっていくでしょう。ここにもパーティションの落とし穴があります。
レイアウトにパーティションを用いたオフィスをオープンオフィスと呼びます。こうしたレイアウトは、チームワークを向上させることに関しては、もちろん一定の効果があるでしょう。コミュニケーションコストも削減できるはずです。しかし、個人で作業をする際や、少人数で集中してミーティングをするには向いていないといわざるおえません。会社の中でも、場所によってパーティションの使い方を変えていくことが、生産性向上のカギといえます。
開放的な空間で、どこか垢抜けた雰囲気を演出できるパーティションを用いたレイアウト。これまでは、そのメリットばかりが繰り返し強調されてきましたが、こうしたデメリットの存在も事前に頭に入れて置くべきでしょう。