働き方が多様化する中で、それまで多くの会社で禁止されてきた「副業」を公認している会社も徐々に増えてきました。会社が副業を公認することのメリット、そしてデメリットは一体どのような部分にあるのでしょうか。
①「優秀な人材の流出を防ぐ」
…社員として副業をすると収入が増えるというメリットがありますが、会社側にも「人材の流出を防ぐ」というメリットがあります。優秀な人材は自身の活躍できる場を常に求めているため、企業から定められた業務に自分が縛られるのを避ける傾向にあるのです。そのため、求人などでも「副業OK」と記載することで、「自分に合った働き方ができる会社」ということをアピールすることができます。
②「多様性の向上」
…企業において多様性は重要な要素です。「フルコミットで働きたい」人もいれば、「午前と午後で別の仕事をしたい」と思っている人もいます。そのため、企業の多様性を保つためにも「副業公認」は効果的といえるでしょう。
③「生産性の向上」
…副業が公認されるということは、本業をおろそかにしてもよいということではありません。ただ、どうしても本業にかけられる時間は減少するため、「時間」ではなく「成果」で評価をする必要があるのです。そのため、一人一人が働き方を工夫するため、生産性が上がる傾向にあります。
④主体性を引き出す
…独立する社員の多いリクルートでは、副業を公認することによって社員の主体性やモチベーションを引き出すことに成功しています。「一生会社員のまま」という人と「独立して自分の会社を立ち上げる」という人では、仕事に取り組む姿勢に差が出てくるのは当然の流れです。一見、優秀な人材が独立によって流出するかのような印象を受けますが、独立後も「元リクルート社員」のネットワークが存在しており、会社のブランドイメージ向上や新たな仕事を生み出すメリットにつながっています。
⑤幅広い視野が培われる
…副業によって他業界や企業のやり方に触れることで、幅広い視野が培われます。その結果、自身が働いている業界や企業の非効率さに気づいたり、逆に強みに気づいたりすることによって、本業にも良い影響をもたらすことがあるでしょう。
⑥社員一人一人に「余裕」が出る
…副業である程度稼ぐことができれば、万が一勤め先が倒産しても最低限の生活費はまかなうことができます。そうした状況は、たとえ倒産しなくても、社員に「万が一のことがあっても食べていける」という余裕と安心感をもたらしてくれます。もちろんお金は大事ですが、「お金のためだけに」となってしまうと視野は狭くなりがちです。そんなとき、こうした余裕が新たな発想やイノベーションのきっかけとなるのです。
①本業への支障
…副業公認はメリットばかりではありません。会社側として一番懸念すべき問題は、副業によって本業に支障が出ることです。仕事時間や熱量などのかけ方は、本業と副業の内容がかけ離れていればいるほど差が大きくなるでしょう。また、副業によって負荷が大きくなり、体調を崩す社員が出てくる可能性もあります。
②情報漏洩のリスク
…本業と副業で同じPCやクラウドサービスを使っている場合は、副業をしているときに本業の情報が漏洩してしまうリスクがあります。
③評価の複雑化
…純粋な勤務時間ではなく成果での判断が重視されるため、「どの程度の成果を挙げれば十分といえるのか」を明確にする必要があります。そのため副業をしていない社員との評価基準の調節など、評価が複雑化してしまいがちです。
④企業イメージへの影響
…副業で社員が何かトラブルを起こした場合、その社員が本業の社名を出していれば、企業イメージのダウンにつながりかねません。
副業を会社公認にすることには、人材の流出を防いだり主体性を引き出したりというメリットもありますが、本業がおろそかになってしまう可能性もあります。「独立前提」なのか、もしくは「退職まで務めあげてほしい」のか、自社のスタンスを明確にし、公認するかどうかを判断していきましょう。