9月26日、YahooJAPANが「数年以内に全社員を対象に週休3日制を導入する」という発表を行いました。日本では今多くの企業において週休2日制が導入されており、年間休日数では120日前後となっています。しかしもし週休3日制になると、年末年始や夏季休暇を含めないとしても約170日の休日数となり、1年の約半分が休暇になります。
ワークライフバランスという言葉が提唱されるようになって久しいですが、週休3日制は日本で今後拡大していくのでしょうか。その可能性を探ってみます。
Yahooが導入を検討していると発表した週休3日制は大きな衝撃を持って迎えられました。導入は数年以内、週休3日製の導入に伴う祝日や年末年始休暇、有休の扱いなど詳細は明らかにされていませんが、インターネット業界の大手がこのような制度を検討していることは、大きな衝撃を呼び、ニュースや新聞でも大きく扱われました。すぐに導入、というわけではないのでまだその導入方法について、Yahoo側も慎重に検討していることがわかりますが、10月1日からは出社しなくても、好きな場所で働ける「どこでもオフィス」制度を月2日から5日に、そして新幹線通勤用の補助金も月15万円に増額するなど、場所を選ばない働き方について、積極的な支援策を行っていることを明らかにしています。
この制度導入の裏側には社員に対する福利厚生を充実させることでの優秀な人材の囲い込み、もしくは採用、さらに家族の事情で会社を退職せざるを得ない人材を会社に引留るメリトがあるものと見られています。また同社が提供するインターネットサービスの発展により「場所を選ばずどこでも働ける様になる社会」が実現できることを、自社の取り組みを持って対外的にアピールするためとも言えるでしょう。ワークライフバランスを考え直す機会にもなりそうです。
Yahooの週休3日制以外にも、ユニクロを運営するファーストリテイリング社が2015年に一部社員を対象に週休3日制を導入し話題になりました。一部と言っても約1万人が対象であり、これはヤフーの社員数を上回る数字です。ユニクロの場合、週休3日制は転勤のない地方採用正社員を対象に、店舗勤務者が1日10時間の拘束時間になる代わりに休日数を増やすという施策になります。ただし土日は必ず出勤の義務があるなど、1部厳しくなった面もあるようです。
またユニクロ以前にスポーツショップのアルペンでも週休3日が制度化されて、長く運用されています。店舗勤務者の場合は週あたりの勤務時間数自体は変えてないので、実質的にはシフトの変更といったほうが良いでしょう。店舗勤務の場合は当然遠隔勤務などできませんから、店舗に必ず何人かの店員をおかなければいけません。その意味では遠隔地でも仕事ができるYahooと週休3日の意味合いは多少異なるといえます。
ただ週休3日制度自体は好評であり、離職率が比較的に高い業界であるアパレル業界ながら、ワークライフバランスを重視し、離職率の低下に一役買っているようです。百貨店、スーパーなどでもシフトの工夫次第で十分に週休3日制の導入はできるのではないでしょうか。
一方で、休暇面以外で一時期いろいろな企業で導入されていた働き方の一つに「フレックスタイム」があります。これは一定のコアタイムに出勤し、週あたりの勤務時間を満たしていれば何時に出勤しても、また退勤しても良いというものです。保育園に迎えに行くために早く帰る、通勤ラッシュを避けるために遅く出勤する、また深夜まで残業したので翌日は遅めに出勤するなど、フレキシブルな働き方ができる制度として広がりを見せていました。
しかし、伊藤忠など大手の企業ではフレックスタイムを廃止するという動きが広がっており、中小企業でも数%しか導入されていないという数字もあります。国家公務員対象に制度の導入が図られていますが、実質的にはなかなか運用できる状況ではないようです。理由としてはダラダラ遅く出勤する社員が出てきて、社内の雰囲気が緩む、突発的なトラブルの際に対応できないことがあった、会議や朝会を朝から開けなくなったので不便だからと言うものが挙がっています。
属人的な仕事が多い会社では運用しやすいようですが、チームで仕事に取り組む会社では不便さを感じることが多いようであり、フレックスを一般的な働き方にする多面、ワークライフバランスまでは考慮せず、仕事の配分や組織の体制づくりまで考える余裕のない企業が多かったと言えそうです。Yahoo!ではそのかわりに自由出勤の日を増やしています。
Yahooが提唱する、週休3日制は業種や職種により向き不向きがありそうです。しかし今後の日本はどんどん高齢化が進み、家族の介護をしながら働く会社員が増えることは確実でしょう。また介護のために会社を辞めざるを得なくなり、その後収入が低下する「介護離職貧困」も社会的な問題になっています。
そのような問題を解消するために、休日を多く取り、介護を集中できる日を設ける、また家にいながら働ける体制を作ることは、有用な人材を多く会社にとどめておくためには必須となることでしょう。また休日を増やすことで副業を行う、勉強を行い、知識を増やす休暇に充てる、アイデアを生み出すための余暇に積極的に参加するなど、ホワイトカラーの職場では社員の能力向上を促すという効果も見込めます。
家庭と両立でき働きやすい環境にすることで離職率を下げる、ITやメーカーは社員のスキルアップにつながるという効果が週休3日制では期待できそうですが、そのためには不在の社員の仕事を他の社員がカバーできる組織作り、会議や打ち合わせなど部署内の人間同士が顔を合わせる機会を定期的に設ける、勤務が長ければ社内での評価が高まるという風潮の廃止など、様々な課題が立ちふさがっているでしょう。
また週休3日になっても当然社員もパフォーマンスを落とすことはできないので、限られた時間で同じ結果を出すための仕事効率の向上など、求められるスキルも高いものになってきます。ワークライフバランスを考えるとともに、ビジネスマンそれぞれの仕事への取り組み方も変革が必要でしょう。
Yahooが発表した週休3日は日本の高齢化に伴う問題を解決するために、フレキシブルな勤務形態の導入と同じぐらい重要なことといえます。しかし実現のためには会社と労働者側両方の意識改革と体制づくりが必要と言えるでしょう。