働く人間の環境というものは、いつの時代も話題になるものです。安倍内閣でも「働き方改革」を一つのテーマとしてあげているように、最近でもブラック企業問題、過労死問題などが社会問題となっています。労働環境の改善テーマとして「オフィス環境の改善」もよく問題になります。では労働者が快適に働きづらく、不満が出やすいオフィス環境の問題点とは、一体どんなものがあるでしょうか?
総合人材サービスのマンパワーグループが行った「オフィス環境(仕事道具や備品)における満足度の調査によれば、最も会社員がオフィス環境において不満を感じる割合が高かったものとして、冷蔵庫やウォーターサーバーなどの「休憩用の備品」が挙がっていました。ちょっとした息抜きとリラックスをしたい時に、手軽に無料でコーヒーやお茶が飲める環境は、多くの人が重視しているようです。
またお弁当を温める電子レンジがある、逆に朝買ってきた飲み物を冷やしておける冷蔵庫があれば、ランチタイムに温かい、もしくは冷たいものを自由に取ることができます。午後の仕事に備えて昼にしっかりとエネルギーを補充したい、という要望などにも応えられるでしょう。もし冷蔵庫や給湯器がないオフィスの場合は、飲み物が欲しい場合に自動販売機などでコーヒーやお茶を買ってこなければいけないので、ドリンク代が掛かることになります。さらに外に買いにいける時間が限られていれば、欲しいときにすぐドリンクが飲めないという不満も溜まりやすくなるのかもしれません。
また、休憩室や休憩スペース自体がなければ休憩時に社員同士で会話をする場所もないので、ちょっとした社員同士のコミュニケーションも育まれなくなるでしょう。その結果、社内の他部署同士の交流が生まれない、社員が仲が悪くなるといった問題も発生する事も考えられます。社員が気軽に使える休憩室および、その他の設備を充実させることは、経費以上の結果を生み、仕事に対するモチベーションを大きく高める効果があるかもしれませんね。設備を置く費用を多少削減したからと行って、それ以上に売上が落ちてしまってはまるで意味がありません。費用対効果を考えても休憩用の備品は充実させたほうが良さそうです。
USENが行った「オフィス環境に関する意識調査」によれば、会社員が不満を持ちやすいオフィス環境の問題として、こちらでも1位は休憩室関連のものになっていました。職場への改善要望の次点として上がったものが、USENならではの回答とも言えるかも知れませんが「音楽を流す」というものでした。約4分の1の人がこの回答を行っており、シーンとしたオフィスを好む人だけでなく、職場には何かしらのBGMが欲しいという人が意外と多いことが浮かび上がってきます。仕事に集中するためのヒーリング効果を持ったBGM、落ち着きを感じさせてくれる環境音楽などは聞くものの精神状態をリラックスさせてくれて、ストレスを軽減してくれる効果もあるかもしれません。
また有線放送などを流しておけば、今はやっている曲や懐メロなどが流れて、聞いている人に対し気分転換をもたらす効果も見込めそうです。ただ音楽の好みは千差万別なので、人によっては嫌いな歌手の曲は耳障りに感じるかもしれません。また、音量にも配慮しないとうるさく感じられて、かえって集中力を妨げる結果にもなるでしょう。
その意味で考えると、職場に音楽を流すときには音量は小さめに、誰が聞いても好みが分かれにくい曲を選曲する必要がありそうです。もちろん職場の種類、例えば飲食店や音楽販売店では店にあったBGMはお客の購入意欲をかき立てる効果も見込めるので、より効果と考えられます。職場に応じて上手く流す音楽を変えていけば、ストレス無く働ける環境を作れそうですね。
レンタルオフィスを展開するSYNTHがビジネスウーマンを対象に行ったアンケート「オフィス環境に関する意識調査」の結果では、最も不満やストレスを感じる問題としてあげられたのは、化粧室が狭い、汚いといった環境の悪さでした。
化粧室は男性では用を足す程度の意味合いかもしれませんが、女性にとっては化粧を直す場所という意味合いも持ちます。また元々どうしても汚れが起きやすい場所だけに、できるだけ綺麗にしておいてほしいという願いもあるのでしょう。男性は小用ということもありますが、女性はもれなく個室を使うので、そこでちょっとした休憩を取る人もいるようです。仕事中のちょっとした息抜きを行うためのスペースとして、化粧室の環境を重視する層も増えているのではないでしょうか。
特に近年百貨店や女性向けの商業施設では、化粧室の環境改善に取り組んで、女性客の集客に役立てたという例もあります。これまで男性の観客が多かったプロ野球でも、横浜スタジアムやマツダスタジアムではまず女性客を呼び込むために、女性向けのトイレをキレイにして数を増やしました。その結果、横浜DeNAベイスターズや広島東洋カープは集客数の大幅アップに成功したというデータもあります。化粧室、トイレ環境の改善は女子社員を定着させ、彼女たちの力を引き出すためには最早必須といえるのかもしれません。あまりにも環境が良すぎて、ずっと化粧室にこもられても困ってしまいますが、もちろん男性だって化粧室が綺麗なことは大歓迎でしょう。従業員の満足度を高めるために化粧室の環境を見直してみることも、有効なようです。
様々な企業がこのようなアンケートを行っており、「休憩室」「化粧室」といった働く人々がちょっと休息を取るためのスペースや設備が確保されているかどうかで、大きく満足度が変わることがわかってきました。雇用側は仕事の必須品や備品などに良いものを支給するだけではなく、直接仕事にかかわらない部分にもきちんと気を配らなくてはいけないと言えるでしょう。そのような間接的な仕事環境の改善が、結果的には従業員それぞれのパフォーマンスを向上させてくれるのではないでしょうか。