退職金制度を見直す企業が増えています。その背景には、勤続年数の長さや学歴などの退職金支払額の多さにあるでしょう。年功序列で退職金が支払われる制度を見直し、ポイント制度による退職金支払いに変える企業も増えているようです。そこで退職金に関するあれこれや見直しポイントについてまとめてみました。毎年退職金制度に頭を抱えている総務部の皆さま、ぜひご参考になさってください。
退職金の主な役割は老後の保証。日本は家族を支えるシステムとして退職金制度を設けるというのが一般的な考えでした。企業年金と一括支払いの退職金があるのは老後の蓄えを残すという意味合いでもあります。退職金制度があることにより、安定した企業というイメージや離職率が防げるというメリットもあります。「長い間ご苦労さま」という企業側の心遣い。これは古き良き日本の文化でもありますが、勤続年数に応じて退職金を支払うことは企業にとって大きな損失でもあります。団塊世代が増え、退職者を多数抱えて倒産したという企業も少なくありません。これは退職金倒産と呼ばれている極めて深刻な事態です。このような背景から、中小企業のみならず大企業でも退職金制度が見直されています。中途退職する社員の退職金も勤続年数により支払われています。これは企業側にとって大きな痛手でしょう。この退職金制度に頭を抱えている企業は少なくありません。退職金制度は企業の良いイメージにも繋がりますが、企業としてはデメリットのほうが勝っており、企業の意識は「日本の文化を重んじるべき」という考えから「老後の資金は社員それぞれが運営しよう」という考えに変わってきているようです。定年が65歳まで引き上げれている今の日本では退職金制度はミスマッチだともいえます。
アメリカでは「確定拠出年金制度」と呼ばれる退職金システムが導入されています。確定拠出年金制度を簡単に説明しますと、「年金の掛金を自己で増やすことによって将来の年金額を積立てできる」という制度です。これは2001年に日本でも導入されているシステムですが、当時の定着率は良くありませんでした。企業側が雇われる側に対して積み立てる制度に、そもそもメリットを感じなかったのでしょう。事務作業の負担や、掛金の拠出がややこしいと感じる企業が多かったのも定着しなかった理由です。それから15年、2016年に政府から確定拠出年金改正案が閣議決定されました。これにより今までは加入できなかった公務員や主婦も加入できるようになります。この改正案が実際に導入されるのは1月からです。事務作業の負担や掛金の拠出についても、企業側で行わず金融機関に委託できるような案の導入が検討されています。今後この制度が定着すれば企業は、「企業から老後保障を受け取る」という形から「老後の積立ては自分で行う」というシステムに変わるでしょう。制度の定着率に期待しましょう。積立て型の「確定拠出年金制度」は「企業年金」とは違います。企業年金は、退職金が月々の年金として支払われるシステム。一方「確定拠出年金制度」は自ら積み立てることによって将来的に年金の支給額が増えるシステムです。このシステムの利点は、退職後に転職したとしても積立てられた年金額が減らないところにあります。例え会社が倒産したとしても、積み立てた年金が老後保証されています。「確定拠出年金制度」を導入している企業は、「前払いで払う退職金」というような位置づけをしているところが多いようです。これは「積、確定拠出年金として積み立てるのか?」「退職金の代わりとして、前払いで積み立て額を受け取るのか?」については、社員それぞれが決められるシステムです。一括で支払われる退職金よりもリスクが少なく、これをメリットとして、退職金制度から確定拠出年金制度の切り替える企業も増えています。「確定拠出年金」に加入すると、積立てて運用で得た利益は非課税となります。退職金に対して不安を抱えている社員や企業にもメリットの多い退職金システムなので、、「確定拠出年金制度」の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
その他の退職金制度に変わるシステムとして、「ポイント制退職制度」というものがあります。これは、成果をポイントとし、そのポイントによって退職金が支払われるシステムです。退職金制度との大きな違いは、基本給プラス勤務年数ではないということです。成果によって退職金が支払われるポイント制度を導入する企業が増えています。これは1998年から注目されてきた制度です。この制度なら、退職する社員と企業側がお互い納得できそうですね。勤務年数や役職の有無などもポイントに取り入れている企業もあります。成果だけをポイント制退職金にすると、不公平さが際立ってしまうというのがその理由でしょう。近年、多く普及されているポイント制退職制度は「職能資格等級型」で、勤務年数や等級などによってポイントが付与され、退職金が決まります。これにより、成果型で生じる格差がなくなります。その他にもポイント制退職の格差が少なく感じられるようなポイント制度が各社それぞれのスタイルで考案されています。このように企業のカラーによって退職金の支払いを変えるのもまた、時代の流れだと言えますね。そもそも退職金自体がないという企業も増えてきました。退職金について街頭インタビューを行ったところ「退職金があるのか知らない」と答える社員もいたそうです。入社時はもちろん雇用期間中に「退職金は貰えますか?」なんて、聞けませんよね。
退職金制度を見直すには相当な時間と労力がかかります。企業のシステムをガラリと変えるは簡単なことではありません。そこでまず考えるべきは早期退職者を減らす取り組みです。まず第一に人の問題。入社して研修費用に数百万円だとしましょう、何か問題が起こる度に「人問題」に対応していては、企業負担が増えるばかりです。「給料を上げる」など、新システムを増やすというよりは「大切にされている」と社員に実感してもらう取り組みを行った企業があります。この企業では社員一人一人の「誕生日会」を開いたそうです。「まさかそんなことで離職率が減るの?」とお思いでしょうが、社内で「大切にされていること」や「必要とされていること」は早期離職率を下げる最もな近道なのかもしれません。次に大切なのが「オフィス環境」です。社内の風通しは良いでしょうか?ギスギスとさせるような空間になっていませんか?これを解決するには「壁」を作らないことが効果的。物にあふれているなど、社員同士が仕事しずらい環境になっていないか見直してみましょう。休憩室やミーティングルームにリラックス効果の高いものを置くなども効果的だそうです。このように、コストをなるべくかけないで離職率を減らそうと努力している企業もあるので、ぜひご参考までに。
いかがですか?早期退職者が増えることを防ぐのはもちろん、退職金制度の見直しなどは多くの企業の課題です。社員と企業が気持ちよく働ける環境づくりには、とても時間と労力、そして費用がかかるでしょう。今回ご紹介させていただいた、退職金の取り組みはあくまでも参考にしていただくものです。企業それぞれにカラーがあるように、退職金のカラーも存在します。退職金の制度を見直すには、まず社員を納得させることも忘れないでください。退職金へのアフターフォローを行うのも総務の仕事です。退職金には今様々な制度が導入され、選択幅が増えています。ぜひこの機会に退職金制度を見直してみてください。