
自社の経営戦略をどのように立てていくか悩んではいませんか。自社の事業について正しく把握するために知っておきたいのが、ポートフォリオマネジメントです。今回は、ポートフォリオマネジメントの種類や手順、注意点について紹介します。
企業が利益を出していくためには、企業が有する製品やサービスについて、開発や投資のバランスを適切にとっていくことが重要です。企業が有する経営資源のバランスに関する戦略を、ポートフォリオマネジメントといいます。
なお、ポートフォリオマネジメントに含まれる「ポートフォリオ」は文脈によって意味が変化します。ポートフォリオ(Portfolio)は、イタリア語のPortafoglioから来ている言葉です。Portafoglioは財布や紙入れを意味します。
英語のPortfolioは、本来は複数の書類を持ち運べるかばんをイメージする言葉です。転じて、常に携帯しておくものや用意しているものという意味で使われるようになりました。
例えば、クリエイティブ業界や就職活動においては、自分を評価してもらうための作品集を表します。また、金融業界や証券業界では、ファンドや投資家が保有する金融資産やその組み合わせを意味します。
以上のように、ポートフォリオはあらゆる成果物を効率良く管理して、最適な結果を獲得するために活用するものと考えられます。
ここでは、経営戦略分野におけるポートフォリオマネジメントの種類として、プロダクト・ポートフォリオマネジメントとプロジェクト・ポートフォリオマネジメントを紹介します。
プロダクト・ポートフォリオマネジメント(PPM:Product Portfolio Management)は、企業のプロダクト、つまり商品やサービスに注目したフレームワークです。経営資源を適切に配分することで、利益の最大化を目指します。
企業の多くは、複数のプロダクトを提供しています。プロダクト・ポートフォリオマネジメントで考えるべきポイントのひとつは、プロダクトの需要です。どのプロダクトの需要が高く、あるいは低いのかを分析して、需要に応じた組み合わせを検討します。
特に中小企業は、大企業と比べて資金や人材、時間が潤沢ではありません。所有するプロダクトを効果的に管理して、企業全体で利益の最大化を図る活動がより重要なのです。
プロダクト・ポートフォリオマネジメントには複数の理論があります。ここでは、一例としてBCGマトリクスを紹介します。BCGマトリクスは、企業の多角化をサポートするために誕生したフレームワークです。自社プロダクトの市場シェアと市場成長率を分析して、下記の4つの項目に分類します。
それぞれの項目の特徴から、経営資源の最適な配分を図ります。
問題児 | 市場シェアが低い×市場成長率が高い今後伸びる可能性があるが、市場シェアの低さから多額の投資が必要。 |
花形 | 市場シェアが高い×市場成長率が高い積極的な投資をすることである程度の利益が期待できる。 |
金の生る木 | 市場シェアが高い×市場成長率が低い競争力が緩和しているため積極的な投資は必要なく利益も出しやすい。 |
負け犬 | 視聴シェアが低い×市場成長率が低い投資による成果が表れにくいため整理が必要。 |
プロジェクト・ポートフォリオマネジメントは、プロダクトではなく、プロジェクト単位で管理する方法です。
下記のような状況でプロジェクト・ポートフォリオマネジメントが役立ちます。
・プロジェクト同士の比較が難しい
・膨大な数のプロジェクトが進行している
・プロジェクトの予算やスケジュールにばらつきがある
単純にプロジェクトを個別に分けて管理することが難しい場合に、ポートフォリオ化することで管理しやすくします。
プロジェクト・ポートフォリオマネジメントで重要なのは情報です。プロジェクトに関する情報以外にも、開発現場や市場から得られる情報などをリアルタイムで集めて分析します。
各プロジェクトの価値を把握し、実収益と予想される収益、戦略的な重要性などを評価し、全プロジェクトの経営資源の配分を検討します。得られた情報や分析結果から、スピーディに判断を下していくことが重要です。
プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの実行により、成功率の低いプロジェクトやコスト超過のプロジェクトの見直し、収益性の低いプロジェクトの削減が実現できます。投資回収率の向上に資する取り組みです。
プロダクト・ポートフォリオマネジメント、プロジェクト・ポートフォリオマネジメント、それぞれのポイントを紹介します。
プロダクト・ポートフォリオマネジメントでは、市場シェアと市場成長率の分析が必要です。下記の手順でプロダクト・ポートフォリオマネジメント分析を進めます。
1.市場シェアを算出
2.市場成長率を計算
3.自社の事業を分類
4.自社の位置を確認
まず、市場シェアを算出します。市場シェアを計算するには、競合他社を含めた市場規模の把握が必要です。市場成長率は、公的機関のデータなどから得られる昨年度と今年度の市場規模を把握することで割り出します。
算出した市場シェアと市場成長率の数値から、自社の各事業を分類し、他社と比較したときの事業の立ち位置を確認します。
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プロジェクト・ポートフォリオマネジメントでは、下記のように確認すべき情報が複数存在します。
・財務の観点:正味現在価値、累積利益など
・戦略の観点:競争優位性、自社ブランドへの影響など
・リソースの観点:設備投資費、人件費など
しかし、情報をすべて盛り込むことで比較が難しくなるデメリットもあります。まずは重要な指標を定めてから、情報を取捨選択していきましょう。
なお、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントは、把握すべき情報が複雑になることから、管理ツールを利用するのが便利です。管理ツールを利用しない場合は、参考となる指標を漏れなく、かつ正確に収集するようにしましょう。
ポートフォリオマネジメントの注意点を3つ取り上げます。
ポートフォリオマネジメントは、すでにある事業やプロダクトをベースにした分析や評価の手法です。そのため、将来のリスクや可能性を測定するには不向きです。
また、ポートフォリオマネジメントは、過去の蓄積したデータをもとに、事業やプロダクトの収益性や成長性を判断し、経営資源を配分するものです。イノベーションに求められる技術や新しい考えが優先されないこともあるため、評価の際には注意が必要です。
ポートフォリオマネジメントは、それぞれの事業を独立した単位として分析する手法です。事業ごとに切り分けて分析することから、事業同士の結びつきが度外視されることがあります。
例えば、プロダクト・ポートフォリオマネジメントでは、負け犬と判断されたプロダクトが、他の収益性の高いプロダクトにプラスの影響を与えていることもあります。しかし、事業間の関係を十分に評価できないことから、相互の関係を無視して事業が切り捨てられるリスクがあることにも注意が必要です。
ポートフォリオマネジメントの成功のためには、強力なリーダーシップが欠かせません。組織のトップが意思決定を行うトップダウン型で進めていく必要があります。
そのため、各事業が独立した組織や利権が絡むような事業には不向きです。ポートフォリオマネジメントを取り入れても、事業間で対立が発生したり、想定よりも効果を得られなかったりする可能性もあります。
ポートフォリオマネジメントは、企業の経営資源のバランスを適切に配分する手法です。プロダクト・ポートフォリオマネジメントとプロジェクト・ポートフォリオマネジメントがあり、それぞれ経営戦略を立てる際に役立ちます。
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