ビルグレードアップ・ダウンサイジング移転
環境エンジニアリングI社 様
東京都中央区八重洲Dビルに本社を置く環境エンジニアリング会社のI社は、次回の賃貸借契約更新日の約18カ月前、Dビル管理会社から再契約後の賃料を値上げしたいという打診を受けた。長年お世話になったビルではあるが、「やすやすと二つ返事で受け入れられる内容ではない」という判断で我々に相談があり、WEO®マネジメントでコンサルティングを開始することになった。
- 事業内容
- 環境エンジニアリング
- 従業員数
- 125名
- 面積規模
- 430坪
- 契約形態
- 定期借家
課題抽出
- 現ビルオーナーから賃料値上げの打診があった
- フロア専有部分の形状が口の字でスペース効率が悪い
- 常時利用していない個室が多く、大きさと数を適正にしたい
- 日中の外出率が高い部門の固定席に無駄を感じる
- これからの増員計画に対応できるオフィスを確保したい
WEO®の解決策
- 交渉材料に移転シナリオを作成して対抗策を図る
- 営業部門の統合とフリーアドレス化
- 働き方を見直し、適正なオフィス面積を算出する
- ICTツールの導入による会社モバイルワーク化
- ペーパーレス運用により収納量36%削減
コスト削減メリット
- B工事区分の緩和とB工事期間の短縮によるコスト削減
- 移転候補先のビルオーナーから移転補償費の獲得
- 現ビルオーナーから賃料値下げの再提示を獲得
移転するにせよ、残留するにせよ、まずは働き方や働く環境の見直しが必要であるという判断から我々が最初に着目したのは、適正面積の検証である。現入居ビルは430坪で、125人の社員が働いている。今後の働き方という観点で我々が検証したのは、具体的に次のようなポイントである。【1人当たりのデスク幅やアイルスペース(ゆとり空間)は適正か】【各部門間の連携ができるレイアウトになっているか】【社内コミュニケーションの場所は充実しているか】【物理的に収納量の過不足はないか】【個室や会議室は効率よく運用できているか】【ICTは有効に活用しているか】【BCP対策の状況はどうか】
それらに関するヒアリングを繰り返すなかで、I社が機能的なオフィスを構築するために適正な面積は320坪であることがわかった。WEO®マネジメントでコンサルティングしていなければ、増員計画を考慮して、おそらく430~500坪の物件を選定していたはずである。しかし、適正面積が把握できたことで、320坪以上と選択肢が広がった。ただし、これはあくまで移転が決断された場合の選択肢が広がった、という意味で、そもそも移転が妥当かどうかの意思決定はされていない。
この場合、仮に現オフィスと同じ坪単価で320坪のオフィスが選定されれば、坪単価×110坪分のコストが削減できる。また、現オフィスより築年数が浅いビルに入居することになれば、坪単価は上がるものの、企業ブランディングやレイアウト効率の向上が期待できる。新しいビルのほうが柱の数が少なく、その占有面積も小さくなるので、有効面積が増えて、オフィスがより機能的に使えるのだ。しかも、省スペース化された最新のオフィス家具を導入すれば、機能性はいっそう増すことになるだろう。我々は、実際にそのようなビルでシミュレーションしてみた。東京都千代田区丸の内Kビル(320坪)である。比較的、新しいビルのため坪単価は上がるが、月額賃料の総コストは変わらない。そこでWEO®マネジメントサービスを適用し、貸主(ビルオー ナー)に対する契約条件の「確認・検証・交渉」に入ることにした。
ビルオーナー側から示された条件緩和の一つは、B工事費用に大きなウェイトを占める間仕切り工事をC工事にすることだった。さらに、B工事全体の減額交渉はもちろん、期間短縮(新装工事期間2カ月→1.5カ月)にも成功した。つまり、実質的には半月分の賃料が削減できたわけである。
我々は、そうした条件を獲得したうえで、Dビル側との交渉に臨んだ。次回の賃貸借契約で更新を見送る可能性を示唆し、Dビル側の姿勢を探ってみたのである。すると、当初、Dビル側から賃料の値上げが打診されたにもかかわらず、再提示された条件は「値下げ」であった。しかも、その額は年間1200万円にのぼった。
さらに、話はここで終わらない。我々は、この件をKビル側に伝えて、さらなる好条件の獲得に動いたのである。結果、Kビル側からは移転補償費として8300万円を負担する旨が再提示された。新装工事費や新規什器購入費、原状回復工事費など、移転に関する費用の全額を貸主が負担するというのである。この段階で、I社が意思決定をするために必要な材料はおおむねそろった。
最終的に、I社はDビルとの契約更新ではなく、Kビルへの「移転」を選択した。